第56話『魔王消失の真相』
お待たせしました。
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第56話の執筆が完了しました。
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――つい昨日の事だった。
火の国にある少女が現れた。
その少女は自らをスーパーウルトラアルティメット美少女魔王と名乗った。
近くに居た住民達は当然困惑した。頭のおかしいやべえ奴が現れたと誰もが思った。
そしてその少女は、住民達にある事を聞いた。
『あの、ここらへんに盗賊団らしき奴か、この写真の女の子を見ませんでしたか?』
『い、いや、見てないが?』
『そう……ありがとうございました』
その少女は丁寧にお辞儀をし、その場を去っていった。それを見ていた住民達は、全員寸分違わずこう思った。
(意外と礼儀正しいんだな……頭おかしいけど……)
その場を去った少女はというと、なかなか探し人が見つからずストレスが溜まっていた。
『くそっ! 火の女神め……面倒な事、押し付けやがって……』
――――
時は魔王消失事件前まで遡る。
魔王は消失寸前まで魔王城の自分の部屋のベッドの上で休んでいた。そんな時、突然火の女神が魔王の目の前に現れた。
『うわあっ!』
驚いた魔王はベッドから転げ落ちて頭を打った。
『いてて……』
魔王は涙目になり、頭を打った所を押さえながら、火の女神を睨み付けた。
『何でお前がここに居るんだ!』
魔王が怒鳴ると、火の女神もなぜか怒号を飛ばし返した。
『うるせえ! てめえに、ペナルティを与えてやる!』
『はあ? ペナルティ?』
『ああ! てめえの部下がアースに手をかけたからな!』
『え……?』
魔王は困惑した。一体誰がやったのかもそうだが、魔王はアースが魔王城に居ることは、他のみんなには言ってない。そのはずだったが、現にアースが襲撃されている。
自分の大切な家族がそんなことをするなんて思えないが、炎の女神が嘘をついているようには見えない。彼女の性格を知る魔王だからそう思うのだろう。
偶然誰かがアースを見つけて、不法侵入者だと勘違いして攻撃してしまった可能性もあるが、アースは女神だ。幹部最強の赤髪ちゃんですら、簡単に倒せるような相手ではない。
『本当に、あの娘達の誰かがやったのか?』
『ああ、ちゃんと犯人の姿を見たからな……アースをやったのは、ヒョロそうな男だったらしいぜ!』
『ダスト君……!?』
魔王城にいる男というとダストしかいない。確かに女神にはない特別な力を持つダストなら可能性はあるが、とはいえ身体能力はほぼ皆無、戦闘経験も初心者冒険者にすら届かない。そんなダストが人間よりも上位存在である女神に勝てるとは到底思えなかった。
『ほう、ダストって言うのか……よし、今すぐぶっ殺すわ』
火の女神がダストを殺しに行こうとすると、魔王がそれを止めた。
『ちょっと待って!』
『うるせえ! 今すぐ、あのガキを殺す!』
魔王は火の女神を止めるため、前に立ち塞がった。そしてこう言い放った。
『ダスト君は……魔王城の中で1番弱いんだよ!』
『なんだと……?』
魔王のその発言に、火の女神は途端にダストへの殺意が消えた。
『ああ、ダスト君は引くほどステータスも低いんだ! ほら見て!』
魔王は引き出しから、ダストの1番古い方のステータスが記された紙を、火の女神に渡した。
『……弱っ!』
『でしょ?』
『マジかよ、こいつ……どんなに弱くても、オールレベル1は無いだろ……いや、確かに珍しい魔法持ってるみたいだが、明らかに攻撃するタイプじゃねえしな……これだけで、アースに手をかけられるとは思えねえ……それどころか、雑魚モンスターすら倒せねえぞ……?』
『でしょでしょ?』
『何でこんなやつ、魔王城に入れたんだ?』
ごもっともな質問を投げられ、たじろぐ魔王。そんな様子を見たら、魔王が何か企んでいる事は自明の理である。
『まあいい、それよりも結局アースに手をかけたこいつは、誰なんだ? ステータスを見る限り、このダストって奴じゃないんだろ? だったら幻覚魔法か、姿を変える魔法を使う奴が犯人だ、心当たりあるか?』
『うん……多分、あの娘だ』
『ほう、誰だか分かってんだな? 誰だ?』
『それは言えない』
『ああ?』
その名前を言ってしまえば、火の女神はあの娘を殺してしまう。確かにあの娘には、悪いものが住んでいる。それでも、魔王はあの娘も家族だと思っている。たとえ自分が危険な目に遭おうとも、拷問されようと家族を守り続けるだろう。
『絶対に言わない』
力強い眼だった。何としても、あの娘を守り通す。魔王からそんな信念を火の女神は感じ取った。
『……分かった。今回は見逃してやるよ。幸いアースもまだ死んでねえみたいだしな』
『ふぅ……』
安心したのも束の間、火の女神が厳しい目で魔王を見てこう言った。
『ただし! 条件が2つある!』
『条件……?』
『ああ、まず1つ目は俺が今、住んでいる国……火の国のお掃除だ』
『お掃除……?』
『最近、火の国に盗賊団とかいうカス共がやってきてな……そいつらを容赦なく滅ぼしてほしいってわけだ……いや、まずは乗っ取る方がいいか、そいつらに色々聞きたいこともあるしな』
火の女神の考えはこうだ。“盗賊団を乗っ取った後に盗賊1人1人に情報を聞き出し、その後用済みになった盗賊団をまとめて葬る“という、残忍且つ非道な行いを魔王にさせようとしている。
『ていうか、それ自分でやれば良くない?』
『それが出来れば、もうやってる……でも、俺が公に出るのは、後々面倒でな……分かるだろう? お前はともかく普通の人間共に、女神の存在が知られる危険性が』
火の女神の言う通り、女神の存在を人間に知られるのは危険だ。なぜなら、女神の力は強大だからだ。悪い人間がその女神の力を欲して、一同に集結してしまう。そうなれば、戦争は免れない。だから、常に身を潜めて生きなければいけない。
『確かにそうだ、愚問だった。もう1つの条件は?』
『もう1つは……』
もう1つの条件は、火の女神らしくもない、意外な内容だった。
『へぇ、意外……』
魔王はその意外な条件に思わずニヤニヤした。
『うるせえ! さっさと行け!』
火の女神は頬を染めがら、魔法陣を床下に出現させた。
『あ、ちょっと待って、皆に一言……』
火の女神の魔法陣によって、魔王は皆に何も言えずに、火の国へ飛ばされてしまった。火の女神もすぐにある場所へ向かった。
――そして、時はダスト達がちょうど火の国へ着いた頃……魔王は住民達が噂してる通り、火の国の地下水にある、盗賊団のアジトを制圧し完全に乗っ取った。盗賊団のアジトを割り出すのに、ありとあらゆる手段と体力を使い、国中を駆けずり回ったらしい。
『マジ、しんどい……誰か褒めて……よく頑張ったねって言って、誰か、ねぇ本当にキツイよ……』
この独り言は火の女神が来るまで、ずっと呟いていたという。
しばらくして火の女神も素性を知られないようにローブを被ってから、盗賊団のアジトにやってきた。盗賊1人1人に、なぜ、火の国へやってきたのか……と質問したが、何も答えてくれなかった。なぜなら――。
『ていうか、こいつら全員したっぱじゃねえか! 幹部とかボスとか居ねえのかよ!』
『私が幹部です』
ちょうど帰ってきたのか、幹部の女が現れた。
『お、てめえ幹部か! 聞きてえ事があんだ』
『久しぶりだね……』
『ああ? 俺はてめえなんか知らねえぞ』
すると、幹部の女は顔を横に振り、こう言った。
『いいえ、あなたじゃないわ……』
幹部の女は、魔王の前に立ち笑顔で魔王に抱きついた。
『あ、あなたは……スカーレット……さん?』
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次回は、29日~31日に投稿予定です。
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