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壊れた歯車は異世界に行っても壊れたままだった  作者: カオス
5.5章〜未来への架け橋〜
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EPISODE3『精霊と妖精㉙』

お待たせしました。

執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


 ――時はモーガン達がオベイロンの国に到着する三十分ほど前に遡る。


 オベイロンが放った“風の精霊のメッセージ”が文字通りの風の噂のように幹部達の元へ届いた。


 “強敵の襲撃の可能性あり。囚人部隊を含めて、全戦力を投入せよ。オベイロンより”


『――え、王!?』


 たまたま集まっていた幹部達は顔を合わせた。何より一番驚愕したのはメッセージの内容ではなく、声の主である本人がここにいないのに、確かに王の声が聞こえたということだ。


 オベイロンがこのような芸当を覚えた事を知る者はいない。


『これは信じるべきか?』


『うーん、分からない』


『幻聴って可能性は?』


『ここにいる全員が聞こえたんだぞ。幻聴で片付けるには無理がある』


『やはりルカ殿をさらった連中が、王を騙ってメッセージを送ってきた可能性もある』


 案の定、すぐに信じる者はいなかった。このメッセージがオベイロンからではなく、敵軍の罠である可能性も捨て切れないからだ。


 しかし、メッセージが本当だった場合、こうして真偽を求めている間に敵軍に攻められ、国は壊滅の危機を迎えてしまう。


『支度だけもしたらいいんじゃない? 万が一嘘だったらすぐに撤収すればいいんだし』


『その嘘が問題なんだ。何でわざわざ我々に嘘のメッセージを送るのか。部隊を編成させる意味は?』


『そんなの知らないわよ。どの道敵がいるのは確定なんだから、その為の準備くらいはしてもいいんじゃないの?』


 メッセージが本当にオベイロンからにせよ、違うにせよ、敵がいなければそもそもメッセージ自体来ないものだ。


『確かにそうだな。こんなメッセージが来た時点で敵が迫ってるのは確定だしな。ライアン、お前はどう思う?』


『……俺も同意見だ』


『相変わらず口数の少ねえ奴だが、時間がない今はその方が助かるわ』


『――話は纏まったようだな。至急進軍の準備を進めよ! 先鋒は楠木ライアン及びイカロス率いる囚人第一部隊だ!』


 こうして、半信半疑の彼らは作戦通りに事を進めるのだった。




 ――かつてこの星を襲撃してきた宇宙人達は、ダスト達の手によって阻止された。今は捕虜として収監しているが、ボスであるブリュンヒルデ・ワルキューレ曰く『敗者は大人しく勝者に従う』というポリシーがあるようで、精霊軍に下ると希望した。だが、言葉だけで信頼してくれるほど、精霊軍は甘くない。一度国を襲撃した以上、一生恨まれるのは当然であり、いくら贖罪に全力を尽くそうとも、親密な関係を築くことは極めて困難だろう。


 それでも宇宙軍の戦力は絶大だ。利用しない手はない。精霊国では死刑制度はあるものの、よほどの重罪人でもない限り、ほとんど執行していないのもあり、彼らを正式に囚人部隊として軍に置くこととなった。


 納得していない者もいたが、『責任は全て私が負う』という王の言葉を最後に反論が飛び交うことはなかった。



 ――――――――――



 そして現在、オベイロンのメッセージ通り、襲撃者が現れた。一人は少年であるノーム。一人は美女であるモーガン。まずノームが大量の分身を率いて国に足を踏み入れた。


 本体であろう先頭のノームは、今イカロスが戦っている。


『我はこいつに集中する! 分身の方は頼むぞ!』


 イカロスは戦いながら、後ろの味方に向けてう言った。


『了解です艦長!』


『サキエル! 我はもう艦長じゃねえぞ!』


『失礼しました! 囚人第一部隊隊長!』


『なんだそれは! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()!』


『なってんだよ! 記憶力ゴミすぎんだろ!』


『うるせえ! サキエル!』


『うるせえじゃないですよ!』


『じゃあ、黙れ!』


『言い方変えればいいってもんじゃ――って、このやり取り前もやりませんでした?』


『私語は慎め! 戦闘に集中しろ!』


 一番私語を慎まない奴が説教した。そして、油断してノームに腹を蹴られた。


『アンタが一番集中できてねえじゃねえか!』


『……わざと蹴られただけだし』


『嘘つけ!』


 イカロスの元部下であるサキエルは漫才の片棒を担ぎながらも、楠木ライアン及び他の部下達と共にノームの分身体をなぎ倒していった。


『ねえ、鳥のおじさん。俺の邪魔しないでほしいんだけどー』


 ノームはふてくされるようにそう言った。


『邪魔があってこその人生だろ? 壁がない人生なんざ生ぬりぃぞ』


『……壁なんてない方がいいよ』


 少年は何を思い出したのか、悲しそうに強く拳を握った。


『……そうか、貴様も色々あったんだな。変な事言ってすまなかった。もう言わねえ。だが、それとこれとは別だ。我は貴様を力づくで止めるぞ』


 真剣に謝罪したイカロスは改めて剣先をノームに向ける。


『止められるものなら止めてみな。鳥のおじさん!』


 ノームが突進する。踏み込んだ足跡から、またしても分身が生えてくる。


『またか!』


 イカロスは自慢の翼で空を飛んでから、ノームの分身の軍勢に向けて、斬撃を飛ばす。


『喰らえ喰らえ喰らえぇぇぇ!』


 次々と分身は消えていくが、ノームが足跡をつける度に分身が増えていく。


『いくら攻撃しても無駄だよ。僕が歩く度に分身が増えるんだから!』


『だが、空を飛んでりゃ、貴様も我に攻撃できな――』


 岩の破片がイカロスの頬をかすめた。ノームが投擲したようだ。


『空中にいるから攻撃できないと思ったー?』


 どうやらノームは破片さえあれば、遠距離だろうが空中だろうが、攻撃できるようだ。


『残念だったな! ベロベロバー!』


 ノームは舌を出して古典的な煽りを披露する。


『はぁ、しょうがねえガキだな……』


 イカロスは、相手の精神年齢の低さにやれやれと肩を竦めた。


(でもどうする? 空中にいても攻撃されるし、地上で戦っても数の暴力で負ける。これ我だけじゃ勝ち目ないんじゃないか?)


 弱気になるイカロスだが、逃げるという選択肢はなかった。なぜなら――


『もう負けを認めなよ。鳥のおじさんじゃ僕に勝てないよ?』


『ハハハハハ! 我は戦士だ! たとえ勝ち目のない戦いだろうと、前進するのみだあああああああああああああああ!!!!!!』


 豪快に笑うイカロスは宙から目にも止まらぬ速さで、ノームに体当たりをしかけた。


『ぐっ……!』


 しかも運よく本体に当たった。感触でそうだと分かったイカロスはニヤリと笑い、ノームの両腕を掴み、そのまま宙へ飛んだ。


『ねえ鳥のおじさん、俺高所恐怖症だから降ろしてくれない?』


 本当にそうなのか、ノームは血の気が引くような表情をしている。


『嫌だと言ったら?』


『ふざけんな! 離せよ!』


 ノームは憤りを露わにすると、急に地面に引っ張られるように重力が働き、徐々に地へと下がっていく。


『お、おおおおおお……なんだ……これは……!』


『重力の妖精の力で鳥のおじさんの重力を重くしたんだ』


『重力だと、そんなんアリかよ!』


 下を見ると、ノームの分身の軍勢が、まるで餌が降りてくるのを待っているように、待機している。その分身の中にはその辺の石ころを拾って、投擲する準備もしている。


(やべぇ、我死ぬぞこれ。どうしよ)

ここまで見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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