EPISODE3『精霊と妖精㉒』
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ウンディーネとサラマンダーの戦いは――
『はぁ……はぁ……くそっ!』
膝をついて、地に拳を当ててボロボロの自身を支えるサラマンダー。
一方でウンディーネは少し痣ができた程度で、休まず戦えるくらいの体力は余裕で残っている。
『ずいぶんしぶといね。力の差があるにしては』
『うるせえ……ま、まだ終わらねえ……オレはこんなところで終わらねえ……』
サラマンダーは震えながらも立ち上がり、戦闘の意思を見せる。だが、ほとんど虫の息だ。特に切り札があるわけでもなく、彼女の中に唯一つあるのは決して折れることのない根性。そもそも諦めるという選択肢が存在しない。
『かかって……こいよ……ウンディーネ……』
『サラマンダー……あなたは、もう……』
『うるせえ………………オレはまだ……』
しかし既に意識朦朧。もはや立つことすら不安定。
ウンディーネはため息をつきながら、サラマンダーの元へ歩み寄る。
サラマンダーは笑いながら、ウンディーネに拳を突きつけるが、安定しなさすぎる照準のせいで、ウンディーネがわざわざ自ら回避をするまでもなく、攻撃は当たらない。
ウンディーネは、そんなサラマンダーを哀れな目で見る。さっさと終わらせようと、とどめとして彼女の首元に手刀を入れ込む。
サラマンダーは意識を失い、地に伏せた。再び起き上がる気配はない。
この勝負はウンディーネの圧勝で終わった。
『ふぅ、ちょっと時間かかっちゃったわね。他の皆は無事かしら?』
勝者は一息ついたあと、仲間達の元へ足を運ぼうとしたその時だった。
『――そうだね、なるべく無事にしてあげるよ』
『え!?』
後ろから突然声が聞こえたので、振り返るとそこには白衣にメガネを装着した女が立っていた。
『あなたは――魔女モーガン! どうして……? 生きていたの?』
『そう呼ばれるのは千年振りくらいだね。そうだよ、この日の為にずっと延命してきたんだよ。それよりもウンディーネ。私の呼びかけにも応じずに、どこ行ってたの?』
『呼びかけ――そっか、サラマンダーとシルフを召喚して操ったのはあなたね?』
『操ったなんて人聞きが悪い、私はただ倒すべき怪物とその方法を教えただけだよ』
モーガンは拳を握る。本人に悪意はなく、至って真剣な表情をしている。
『もう時間がない。ねえウンディーネ、事情は話すから、今回ばかりは私の邪魔をしないでほしい』
『今から何をする気なの?』
『国を襲って、私達妖精の恐ろしさを認知してもらう』
『そんなの許すと思ってるの?』
『思ってないよ。でもこの世界を救うにはそれしかないんだ。私だって人を殺したいわけじゃない』
『どんな理由があっても、人殺しを容認するわけにはいかないわ』
ウンディーネから凄まじい殺気が放たれる。
モーガンは苦い顔をしながら、まだ説得を試みる。
『シルフとサラマンダーとノームは賛同してくれた!』
『そう、ノームまでいるのね。でも彼らが賛同してくれたから何? それで私が納得するとでも?』
『頼むから言うこと聞いてよ……君が、君も協力してくれないとあの怪物は倒せないんだ!』
涙ながらに訴えるモーガン。それでもウンディーネの心は変わらない。
『……あの怪物が何なのかは分からないけど、私やオベイロン、そしてルカちゃん達で対処するわ。あなたの協力は必要ない』
『それじゃダメなんだ! ウンディーネはあの怪物を知らないからそんなことが言えるんだ!』
『あなたこそ、私達の戦力を知らないじゃない。特にあなた達がさらったルカちゃんと、今他で戦ってるカヴァちゃんはあなたの想像を超えた強さを持ってるわ』
『そんなこととっくに知ってるよ、だってルカちゃんの事はよく調べたし。異世界行ってきたんだよね?』
『知ってたのね。でもそれだけ?』
『確かに異世界で何をしてきたのかまでは分からない。でもルカちゃんは私には勝てなかった』
『どういうこと?』
『ルカちゃんを私のアジトに連れてきた時、私とちょっとだけ一戦交えたんだ。ルカちゃんは強かったけど、私に傷一つ付けることもできなかったよ』
『どうせ洗脳でもしてルカちゃんを弱らせたんでしょ? そういう卑怯な手を使うのは得意だものね、あなた』
『それでも勝ちは勝ちだ。戦いは力だけが全てじゃない』
『……ルカちゃんはどこ?』
『ルカちゃんなら私達妖精軍に降ったよ』
『そんなことは聞いてないわ。ルカちゃんはどこだって言ってるのよ』
ウンディーネはモーガンに強烈な圧を与える。
モーガンはそんなウンディーネの圧に一切屈する様子もなく話を続ける。
『ルカちゃんなら今頃誰かと戦ってるんじゃないかな。君たちのお仲間の誰かとね』
ウンディーネはとうとう内に溜まっていた怒りを爆発させ、モーガンに殴りかかる。
『このおおおおおおおおおお!!!!!!』
振りかぶった拳がモーガンに――当たらなかった。
『そんな……なんで……?』
拳はモーガンの眼前まで迫り、それ以上先に進むことはない。そうなった理由はモーガンが防御したからではなく、“彼女”がウンディーネに不意打ちしたからだ。
『ルカ……ちゃん……?』
後ろから刺してきた犯人は橋本ルカだった。氷の精霊の力で強化した剣を使って、ウンディーネの胸を貫通させた。
刺した箇所から氷は広がり、ウンディーネはどんどん自由を奪われていく。
『なん……で――――――』
そして、ウンディーネは氷の銅像と化した。
『ごめんね、ウンディーネさん』
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