第55話『火の国』
お待たせしました。
第55話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2022/08/20改稿しました。ストーリー・キャラ設定等は変えてません。
『お兄ちゃん起きて!』
ブロンズちゃんの声で俺は目が覚めた。確か寝る前はキャンプしていたはずだが……いつの間に、ク・ルーマの中で寝ていたのか。あと何故か全ての窓にカーテンが掛かってる。
『……おはよう』
『おはようじゃないわよ……今、カーテン掛かってるし、時間感覚狂ってるから、混乱するかもしれないけど、もう昼よ』
『あ、そうなんだ……』
寝ぼけて頭が動かない……。えーと……確か……あ、そうだ。
『実は、夢の中で火の女神様と会ったんだ』
『火の女神様?』
俺はさっきまで見ていた夢の出来事を包み隠さず話した。
『なるほどね……夢の中で、火の女神様に会ったと……お兄ちゃん、変な夢見すぎじゃない?』
『ホントだよ……おかげで毎日毎日眠っても、身体が休めてる気がしないよ……』
その代わり夢を見る度に、新しい魔法を習得してる気もしなくはない。だからデメリットばかりではないが。
『お兄ちゃん1度医者に見てもらった方がいいんじゃない?』
『そうだねぇ……』
『変な夢を見る病気かもしれないし……あと、私達で変な妄想するのも病気かもしれないし……』
『あとのやつは病気じゃないよ!』
ブロンズちゃんは、こんな風に俺を弄りながら、うるうるした目でこちらを見ている……全く……。
『あれ? そういえば、アミさんもみどりちゃんも、バレスさんもいない……というか車……ク・ルーマ動いてない?』
俺がそう言うと、ブロンズちゃんはやれやれと呆れ顔でこちらを見てきた。
『今頃気づいたの? 鈍感で変態で間抜けなお兄ちゃん』
『……言いすぎじゃない? そろそろ泣くよ?』
『もっと泣かせましょうか?』
そう言うとブロンズちゃんは嬉しそうに、鞄から鞭を取り出してきた。なぜそんなものを持ってきてるの?
『いや、そういう趣味無いんで』
『ホントに~?』
ブロンズちゃんは、ニヤニヤしながら顔を近づけてきた。
『ホントだよ?』
『ふ~ん、まあいいわ……本当に嫌がってたとしても後で調教してあ・げ・る』
ブロンズちゃんは、耳元でそんなことを言った。怖い。
『やめてください』
『い・や・よ、うふふふふ、あはははは』
ブロンズちゃんは、無邪気(嘘)で輝かしい笑顔でそう言った。可愛いけど怖い。いやもう邪気だらけだよ。
『それは一旦置いといて、何でアミさん達がいないの?』
『それはね……窓の外を見てみて』
『窓の外?』
俺はカーテンを少し開けて、外の光景を見た。
『え? ここって……?』
『そうよ。もう火の国に着いたのよ』
火の国……ここに来るまでは、どんな所か全く想像もしてなかったが、これはあまりにも予想外すぎた。だってここは異世界のはずだ、なのに……。
『何で、コンビニやビルが、所々に建ってるんだ?』
ここ火の国の景色は、まるで日本の都会のようだ。いや最早、そのものではないか? そう思ってしまうくらい、俺にはあまりにも見慣れ過ぎた光景だった。一瞬マジで元の世界に帰ってきたのかと思った。
『え? ここってお兄ちゃんにとっては、見慣れた光景なの?』
『ああ……俺が元居た世界に瓜二つでね……』
『ふーん』
このあと俺とブロンズちゃんが軽く雑談していると、ドアが開いた音がした。
『ただいま、お、ダスト君! 目が覚めたようだね』
アミさんとバレスさんが見慣れすぎた大量のレジ袋を持って帰ってきた。そのレジ袋のロゴも日本のスーパーとかコンビニでありそうなものだった。まさか異世界でこんな光景を見るとは思わなかった。まあ、俺の記憶上では、ここが元の世界で、むしろ日本が異世界なんだけどな。
『火の国にしかないもの、いっぱい買ってきたよ』
アミさんとバレスさんが、レジ袋から色々取り出したものは、皆もよく食べてるであろうインスタントラーメンや、缶詰め、ペットボトル等……全部、見たことあるやつばかりだ。
『これ、全部食べたことあるやつだ……』
『え? そうなのかい?』
すると、ブロンズちゃんが慌てた表情でこう言った。
『お、お兄ちゃんの故郷にも、こういうのがあるのよね?』
『そうだけど、元の世……』
『故郷よね?』
『だから、元の……』
『故郷よね!』
『……はい』
ブロンズちゃんの圧に圧されてそう言わされた……。そうか、アミさんとバレスさんは俺が日本から来たって知らないのか。知られると色々面倒みたいだし、故郷って事にしよう。
『よ、よく分からないけど、ダスト君の故郷って色々あるんだね』
『は、はい……そうなんですよ~』
俺は苦笑いをしながら、そう答えた。
『ふぇぇ……あのぉ……私、もう出てもいいですかぁ?』
アミさんの胸の谷間から、より小さくなった猪の姿のみどりちゃんがひょこっと顔を出してきた。
やべえ、みどりちゃんの存在完全に忘れてた。
『お兄ちゃん、どこ見てるの……この変態!』
視線が完全にアミさんの2つの大きなお山に向けていた俺に、ブロンズちゃんは睨みつけながら罵倒してきた。
いや、仕方なくない? だってよりによって胸の谷間から、みどりちゃんが顔出してきたんだから、当然そこに目線が集まるよね?
『そうじゃなくても、やっぱ大きい胸に視線送るでしょ? この変態!』
『そ、そんな……』
まあそうだけど。
『じ、実は、私も結構巨乳なんですよぉ、美少女で巨乳なんですよぉ』
みどりちゃんは空気を読まずに頬を染めながら、もじもじとそんな事を口走った。勘弁してよ……。
『みどりちゃん……よりによって、今このタイミングで、その情報言うの?』
今度はみどりちゃんへの怒りで、どんどん鋭い睨みになっていく……。
心なしか背景にゴゴゴゴゴという文字が見える気がする。どうやらブロンズちゃんに胸の話は思ったよりも地雷のようだ。
『あはは……とりあえず話したい事があるから、一旦カーテン閉めてくれる?』
『あ、はい』
俺が窓のカーテンを閉めようとすると、ブロンズちゃんが割り込んで来て、先にカーテンを閉められた。その際にブロンズちゃんの小さい胸が俺の胸に当たった。いや当てさせたな?
『わ、わざとじゃないもん』
ブロンズちゃんがそう言うと、ますます不機嫌になり、そっぽ向いてしまった……。そんな変な空気の中でも、アミさんはこう話を切り出した。
『さて痴話喧嘩してるところ、すまないね』
『痴話喧嘩じゃないです。ほら、ブロンズちゃんの後ろの黒いオーラが禍々しく出てますよ……』
『うん、実はね、さっき買い物に行ってる時に、街の人が妙な事を言ってたんだ』
こちらの話は無視ですか……。
『妙な事?』
『最近盗賊団が、正体不明の少女に乗っ取られてるって』
『正体不明の少女……?』
『その少女は、現在指名手配されてて、その顔を見てみたら……ね』
アミさんは、何かを言いかけたが、うつむいてしまった。
『その顔を見たら、どうしたんです?』
その会話をブロンズちゃんが割り込み、こう言った。
『お兄ちゃん、私も買い物行きたくなってきちゃったから、ちょっと付き合ってよ』
『え? あ、あぁ、あとで行こうね』
すると、ブロンズちゃんがしかめっ面で、俺の腕を引っ張り、無理矢理外に連れ出そうとしていた。
『ちょっと、どうしたの、ブロンズちゃん?』
『いいから、今すぐ行きたいの!』
ブロンズちゃん……? ――ああそういうことか。
『えぇ……はぁ……分かったよ、すいません、後で話の続きさせてもらってもいいですか?』
『ああ、構わないよ』
俺は軽くお辞儀をして、ブロンズちゃんと一緒に外に出た。
『ブロンズちゃん、どこ行くの?』
俺とブロンズちゃんは、バレスさん達の目が入らないビルとビルの間に入った。
『ブロンズちゃん……アミさんの心を読んだんだね』
『ええ……さっきアミお姉ちゃんが言ってた、指名手配の少女……あれ……まーちゃんよ』
『ま、魔王だと!?』
第55話を読んで下さり、ありがとうございます。
次回は、早くて26日、遅くて28日に投稿予定です。
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