EPISODE3『精霊と妖精⑳』
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試練開始。
挑戦者氏名:オベイロン。
年齢:23歳7ヶ月。
性別:男性。
武器:剣。
水の試練・・・クリア。
挑戦時間5年8ヶ月2日23時間56分23秒。
炎の試練・・・クリア。
挑戦時間7年6ヶ月30日3分02秒。
風の試練・・・クリア。
挑戦時間2ヶ月0ヶ月8日52分43秒。
雷の試練・・・クリア。
挑戦時間19年12ヶ月30日41分40秒。
氷の試練・・・クリア。
挑戦時間9年6ヶ月21日30分02秒。
光の試練・・・クリア。
挑戦時間22年8ヶ月19日37分22秒。
闇の試練・・・リタイア。
挑戦時間100年0ヶ月0日0分00秒。
闇の試練 (リベンジ)・・・クリア。
挑戦時間99年12ヶ月31日59秒。
試練終了。
これにより挑戦者オベイロンは同属性の力を無制限に使えるものとする。
尚、特例としてその他の属性の試練は免除するものとする。
――――――――――
ここは許された者にしか入ることができない神の領域。まるで絵画の中の世界のような草原の上に客人をもてなす為の机とイスが並べられている。これは試練をクリアした者への賞賛を表したものだ。
『おめでとうオベイロン』
七柱の神がオベイロンに拍手を送る。
『ありがとうございます』
約250年の時を経て、試練は終了した。これでようやくこの世界の時は進み、オベイロンは以前よりも大幅に強化された状態でドラゴンとの再戦に臨むことができる。
今は七柱の神と最後の挨拶を行っている最中だ。
『それにしても、本当に歳取ってないな、空腹にもならないし』
オベイロンは元々手持ちにあった鏡に映る自分を不思議そうに見た。
『私達は神だからね。あっちの世界にもいるでしょ。それと同じような存在だよ』
『私を崇めよー』と言って、胸を張る水の精霊の祖先。試練をクリアしてから姿を現すようになったが、幼い声のイメージ通り、まだ年端のいかない少女のようだった。橋本ルカよりも年齢は若くみえる。
『長い間、本当にありがとうございました』
『そんな全然全然!』
他の神達も笑い出した。すると、筋肉質の初老のような容姿である炎の精霊の祖先が口を開いた。
『儂らにとって250年なんてあっという間じゃ!』
次に高校生くらいの女性である光の精霊の祖先が会話に加わった。
『ふふふ、私達にとって250年は、人間でいう1か月くらいよ』
次に大学生くらいのいけ好かないイケメンのような姿である雷の精霊の祖先が、
『とはいえ僕達もいい退屈しのぎにはなったかな。ありがとうねオベイロン君』
それぞれの神とこれまでの思い出を語らう。
長いようで短い――いや、めちゃくちゃ長い時を神の領域で過ごした。
時間感覚の次元が違う神達も、挑戦者であるオベイロンには語り合う思い出があるようだ。
少年の姿をした風の精霊の祖先は、
『ったく、ホント世話のやける奴だったよ。だが今のお前は少しはマシになったんじゃねえか?』
少年でありながら、成熟した男のような話し方をする。しかし、よく考えたら彼も神だ。年齢という概念がない以上、容姿は肉体のオマケに過ぎないのだ。
『これも貴方様のご指導のおかげでございます。本当にお世話になりました』
『礼は目的を達成してからにしな。仲間と親友を助けるんだろ?』
『はい!』
さらに氷の精霊の祖先もオベイロンの元へやってきた。彼女はオベイロンと変わらぬ年齢の女性の姿をしている。
『あの……その…………』
声をかけたきり沈黙してしまった。
彼女は美女の部類ではあるが、どうも自分に自信がない上に、コミュ症をこじらせて、いつもこのように会話が成立しないことが多い。
それは試練の最中もそうだった。試練の説明の時に声が小さかったり、質問に答えられなかったりと、わりと困っていたようだ。
しかし、オベイロンも国王であり、コミュニケーションはお手の物。彼女を理解し、どうすれば会話ができるのか、試練に挑みながら考えていた。
『ゆっくりでいいですよ』
オベイロンが優しくそう言うと、氷の精霊の祖先は頬を赤く染めてから改めて、
『……………………………………………………お疲れ様でした』
『はい、ありがとうございます』
氷の精霊の祖先は少し口角を上げて、恥ずかしそうにその場を去っていった。
『全く、彼女は相変わらずシャイだね〜。でもそういうところも可愛いよね』
イケメンの雷の精霊の祖先は揶揄うようにそう言った。
すると光の精霊の祖先は、
『もう〜そういうのやめなよ〜、あの娘も頑張ってるんだから〜』
と、フォローした。
『ごめんごめん、ただ可愛いなって思っただけ』
雷の精霊の祖先は片目ウインクをしてカッコつけた。
呆れたように風の精霊の祖先がツッコんだ。
『お前なぁ、イケメンだからって何でも許されると思うなよ。アンタの悪い癖だ』
『えー』
『えー、じゃねえよ!』
二柱のそんなやり取りを愉快そうに笑う神達。肝心の氷の精霊の祖先はもうこの場にはいないが、きっといつまでもオベイロンの事を見守っていることだろう。
『あの、闇の試練を仕切って下さったあの方はどこにいらっしゃいますか? 最後に挨拶したいのですが……』
最初から送別会に闇の精霊の祖先はいない。これから姿を現す気配すらない。
『ああ、ヤミにゃんなら何かやることがあるから出れないって言ってたよー』
『もう、あの娘ったら……』
『そうですか。では僭越ながら、お世話になりましたと伝言を頼んでもいいですか?』
『もっちろん!』
水の精霊の祖先は笑顔で胸を叩いた。
『ありがとうございます!』
神達が用意した巨大な扉が生えてくるように現れた。その中に入れば、時が止まる直前の状態に戻れる。
『皆様! 本当にありがとうございました! またどこかでお会いしましょう!』
オベイロンは最後にそう言い残し、神の領域から旅立っていった。
ここにいる神達は最後まで手を振っていた。その中で水の精霊の祖先は涙ぐんでいた。実はどこかで遠くから見ていた氷の精霊の祖先も少しだけ涙を流していたりして。
『寂しくなるわね』
『ハハハ! なあに、いずれまた会えるさ!』
『そうだね、その時はオベイロン君の友達にも挨拶していきたいね』
『女の子いたら絶対ナンパするでしょ!』
『ははは』
『こら、笑って誤魔化さないの!』
こうして神達はそれぞれの場所へ戻っていった。新たな挑戦者を待ち迎えて――
『――へぇ、次の挑戦者は君か。待っていたよ』
ここまで見て下さり、ありがとうございます。
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次回も宜しくお願い致します。




