EPISODE3『精霊と妖精⑰』
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《オベイロン視点》
私は今、赤いドラゴンと対峙している。その大きな翼を羽撃かせ、私を上空に誘った。まるで私と一騎打ちを望んでいるようだった。
『ウンディーネ様……クラウディア……リックス、バルカン、アレーシア、カヴァ……あとは頼んだ』
他の敵の対処を仲間に任せて、王は上空へと飛び立った。
そして、ドラゴンと同じ高さまで飛んだところで、剣を抜く前に会話を持ちかける。
『貴様、なぜ常に私を見る?』
このドラゴン、現れた時からずっと私を見つめている。理由は分からないが、私に何か思うところがあるのだろう。
『……』
しかし、ドラゴンは会話する気もないのか、口を閉ざしたままだ。
『会話が通じないのか?』
我々の言語を理解していないのかもしれない。それなら仕方がない。なればやることは一つ。
私は剣を抜いた。それでも尚、ドラゴンは表情一つ変えないし、それどころか警戒すらしていない。
よほど自分の実力に自信があると見える。さすが最強の種族と言えよう。これは私も覚悟して臨まなければ。
『ならば、剣で対話するのみ!』
私は羽をフルスロットで使い、ドラゴンの背後に回り込んだ。
卑怯な手だと思われるかもしれないが、ドラゴンは私が剣を抜いても、特に防御姿勢を取ろうともしなかった。ということは、絶対に防御できるか、あるいは反撃できる手段があるということだ。そうなると、真正面から攻撃するのはかなりのリスクを伴う。
それならば、下手に正面から攻撃せずに、卑劣と呼ばれても瞬時に後ろに回り込んで攻撃した方がいい。プライドは大事だが、戦術を選べるほどの余裕はない。私には民と仲間を守る使命があるのだから。負けるわけにはいかない!
ドラゴンの背中にはいくつか傷があった。それはいくつもの戦いを乗り越えた証だろう。最強と呼ばれる種族でも、決して楽な戦いばかりじゃなかったということか。
それでも尚、こうして戦場へ足を踏み入れた。鍛え上げた戦士でさえ傷を負ってそのまま引退する者もいる。さすがの精神力と言える。
敵である以前に敬意を払おう。このような形ではあるが、あなたのような者と剣を交えること、誇りに思う。
だからこそ、この勝負勝たせてもらう!
『後ろはとった!』
剣先をドラゴンの背に――気づいたら宙を舞っていた。
尻尾……だと……!?
ドラゴンは尾を使い、私を振り払った。
『ぐあっ……!』
なんて重い攻撃なんだ……金属バットで殴るよりもはるかに強い威力だ……意識が飛びそうだ……。
強い力に流されるかの如く、私は剣と共に宙を舞い、重力に従って落ちていった。
このまま地面に墜落して死ぬのか……なんて不甲斐ない話だ。私は王である以前に誇り高き戦士だ。これ以上、こんな姿を晒してたまるか!
意識が落ちそうだった私は、自分に鞭を打ち、何とか起き上がった。
うっ、肋骨が痛む……が、弱音を吐いている場合じゃない。
『まず剣を回収する』
共に落ちていった剣は先に森の中へ吸い込まれるはずだ。私は一旦森の中へ探しにいくつもりだったが――
ドラゴンがわざわざ回り込んで、私の前に立ち塞がった。
武器を取らせないつもりか、と思いきや、ドラゴンが前足で私の剣を掴んでいたようだ。そして、あろうことかその剣を私に差し出した。
『なぜ私の剣を?』
『……』
ドラゴンはまたしても何も喋らず、ただ私を見つめた。
一体何がしたいのだ、このドラゴンは。
すると、ドラゴンは突然雄叫びを上げて、私を前足で抱きしめた。
『なっ……何をする!?』
すごい力だ。自力で解けそうにないし、手足が縛られているから剣も使えない。ここで精霊の力を使っても振りほどかせる方法はない。
まさか、武器を返してくれたと油断させて、私を捕まえにきたということか!
くっ……相手は敵だという認識はあったのに、まんまと罠にかかってしまった……。
どうする……どうすればいい……!
――考え込んでいる内にそれは解決した。なんとドラゴンは突然掴んだ前足の力を急に緩めて私を解放したのだ。
『なっ……!』
また罠ではないかと疑ったが、私はすぐにドラゴン後ろに回り込み、また尻尾に振り払われないように、尻尾にしがみついた。
『はぁ……はぁ……』
ドラゴンも尻尾の違和感に気づいたのか、私を振り落とそうと急速に尻尾を振り続ける。
それでも、なんとかしがみつく私は氷の精霊の力を使い、尻尾を凍らせる。
尻尾は氷に包まれ、一ミリも振ることはできなくなった。
当のドラゴンは特に叫ぶことなく、ただ尻尾が動かない違和感に首を傾げているだけで、何もしてこない。
『よし』
私は氷の尻尾から離れ、自分の羽でドラゴンの背に辿り着いた。
『悪く思うな』
今度こそ私は剣先をドラゴンの背に向けて――
『全ての精霊よ――我が剣に森羅万象の力を与えたまえ』
これは私の最終奥義――全属性の精霊の力を借り、破格の攻撃力を得ることができる。ただし、かなりのエネルギーが必要だ。この一撃でどれだけのダメージを与えられるのか、それによって今後の戦術が変わってくる。
『行くぞ――全精霊剣!』
様々な属性の力が剣に宿り、それはドラゴンの身体を貫いた。
攻撃してみて分かったが、ドラゴンの鱗は尋常じゃなく硬い。普通に剣を当てるだけでは到底破壊できない。それが身体中にあるのだから、ダメージを与えることさえ至難と言える。
しかし私はやり遂げた。既に傷だらけでその部分にある鱗も多少脆くなっているのもあるが、ドラゴンに致命的なダメージを与えることができた。
だが、これで喜ぶのは早い。敵を仕留めたという確証がない限り、戦場で剣を収めるのは愚者のやること。故に最後まで武器を放なすことはない。
ドラゴンはさすがに痛かったのか、先ほどよりも大きな雄叫びを上げた。
私は剣を抜き、その場から一旦離れた。
すると、ドラゴンはこちらを向き、
『――!?』
笑った。
ここまで見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
最後ちょっと怖かったでしょうか? もしそうなら申し訳ございません。お笑い系の動画でも見て楽しい気分になって下さると幸いです。
次回も宜しくお願い致します。




