EPISODE3『精霊と妖精⑭』
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《ただのサラリーマン視点》
俺は何をやっているんだろうか。
毎日毎日クソクソ上司に遅くまでコキ使われて、やっと帰ってきても大好きなアニメを見ることやゲームをプレイする時間もなく、ただカロリーを口に運ぶだけの作業を行うだけ。それも生きるためというより、働く為にやっているに過ぎない。
俺は生きるために働いているんじゃなくて、働くために生きている。
上司はそれが当たり前とかほざいていたけど、普通逆なんだけどな。
まあ、そんなクソみたいな生活を長年送ってみろ。死ぬぞ普通に。だって娯楽もないし、残業ばかりでまともに身も心も休めてないんだもん。当たり前じゃん。
ブラック企業という名の人でなし犯罪組織にぶっ殺されてしまったわけですよ。
え、辞めればよかったじゃんって?
辞めさせてくれなかったんだよ!!!!!
あのクソ上司に何度も何度も何度も何度も何度も辞めるって言ったのに、人手足りないからあと半年居ろとか、お前はどこに行っても雇ってくれないから最後のチャンスをくれてやるとか昇給を約束してやるとか都合の良いことばかり言って俺を無理やり留まらせて、また長い間働かせて、もちろん約束なんて守らずに、ずっとずっとずっと――
ふざけんなああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
……まあ、でも正直俺には生きる希望なんてなかった。あれだけ没頭してた趣味もいつの間にか俺の頭から消えて、代わりに仕事の書類ばかり。
家族も特に俺に興味なしって感じだ。何せ俺の兄貴と妹がめっちゃいい大学出て大企業で大出世、それに比べて俺は勉強も運動もできなくて、高卒で底辺ブラック企業しか内定が貰えなかった。学歴至上主義の家族が劣等生の俺には見向きもしねえだろうよ。
家族がこんな態度だ。せめて友人でもいれば多少救われたかもしれないが、残念ながら俺には友人もいないし、かつてのクラスメートはもはや完全に他人でしかない。つまり俺は圧倒的ぼっち。
俺はただ会社で働くだけの人形だ。壊れるまで使われる道具でしかないのだ。
そんな扱いを受け続けてきた。
そして、ある日突然、残業中の俺は眠るように意識を失ってしまった。それは死への入り口だった。
《火の鳥視点》
それで異世界で転生したら、世にも珍しい鶏冠を有した鳥になってましたと。
異世界転生キターーーと最初は思ったけど、人間共がクソすぎてうんざり。ここでも俺の居場所はなかった。
俺と同類の鳥がいないのかと探してはみたが、ただの鳥ばっかりで、俺みたいな突然変異の鳥はこの世で俺だけみたいだ。だから同族にも気味悪がられて、またしても一人ぼっちだ。
じゃあこの世界の俺の親はどこにいるのやら。気がついたら一匹だけだったからよく分からない。もしかしたら親も同様に、この炎の鶏冠を不気味に思って俺を捨てたのかもな。
それから色々あって、俺がいつものように一匹で飛んでいると、サラマンダーに出会った。何でもそいつは俺を気に入ったようで、出会ってから何度も何度も俺に話しかけてきた。
鬱陶しかったけど、でも嬉しかった。俺は誰にも見向きもされなかったから何だか必要とされているような気がして。
それからサラマンダーは俺にモーガンを紹介してくれた。気がついたら俺はモーガンとも気が合って、よく話すような仲になっていた。
モーガンの最終目的を聞いて、俺は彼女に協力することにした。
そして今日――
可愛らしい少女と美人メイドの二人と戦うことになった。しかも普通に強いわ。どんな相手でも死なない自信が俺にはあるけど、何故かあの二人相手だと負ける気がしてならない。
ここは攻めてすぐに逃げる作戦を実行しよう。めちゃくちゃセコくてうざい奴って思われるかもしれないけど、仕方ない。勝つためだ。許してくれ。
《現在》
戦闘中、煙の中に閉じ込められたと思ったら、いつの間にか鶏冠が斬られてた。
『あ……あぁ……』
翼を斬られた時は全部元通りだったのに、鶏冠だけは再生できない。
まあ、自分でもなんとなく分かってた。俺に弱点があるとしたら、この炎の鶏冠だろうって。
だから鶏冠を守るために対策する事もできたはずだ。でもやらなかった。俺は結構強かったから、俺より強い奴に出会わなかったから――
『怠けちまったよぉ……』
なんて情けない話なんだ。今も前世もそうだった。俺にもっと行動力があれば何か変われたかもしれない。でも、俺はそれをしなかった。何かやらなきゃと考えるたび何かと理由をつけて怠けてしまう。
『前世と何も変わってねえな……』
最悪だ。休日に何もできないサラリーマンのような精神が抜けてない俺に戦場を任される資格なんてなかった。サラマンダーやモーガンの期待を裏切っちまった。甘えかもしれないけど、俺、あいつらだけはこんな俺を認めてくれるから、居心地が良かったのに……あいつらの喜ぶ顔が見たかったのに……。
ごめん、失敗した。もう合わせる顔がない。
鶏冠を失った俺は、力が抜けたように落ちていく。翼があるのに飛ぶ気にもなれねえ。
ただ、このまま落ちて――
俺は、来世に期待したい。
涙が止まらない。男らしさなんて古い価値観を持っているわけじゃないが、最後の最後まで俺は負けて涙を流す自分を情けないと思う。
何で俺はこんな風に生まれてきちまったんだろうな。なあ神様……俺は――俺は――
カッコよく生きたかった。
――それから三時間後。
『ここは……?』
意識を取り戻した俺は、状況の確認のため、眠る前の記憶を呼び覚ます。
『そうだ、俺は……落ちて死んだはず』
ということは、ここは天国か地獄か?
一見ただの森に見える。というか俺達が戦ってた森にしか見えない。
『俺は……生きているのか……?』
まさかと思い、鏡代わりの川へ足を運んだ。
『マジかよ』
鶏冠は復活していた。さっきの戦いがまるで最初から無かったかのようにピンピンしている。
『待てよ、鶏冠は再生しないものだと勝手に思ってたけど、やっぱり再生できるってことなのか』
よく分かんねえ。
あ、そういえば戦いはどうなったんだ?
まだ戦いの音が聞こえる。どこかで誰かが戦っているのだろう。
俺は巻き込まれない程度に音のする方へ向かった。そこで俺が目にした光景は――
『――え、は?』
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