第54話『彼女は嗤った』
どうも。
思ったよりも早く、第54話の執筆が完了しましたので投稿します。
宜しくお願い致します。
※改稿しました。ストーリー・キャラ設定等は変えてません。
夜が明けてすぐに、後続組はすぐにク・ルーマに乗り、荒野での冒険もそろそろ終盤に差し掛かかる。
『アミさん達は、もう火の国に着いてる頃ですね』
『ええ、予定通りならですが……』
この荒野はとにかく時間の経過が早い。その影響で生活リズムも狂いやすく体調も悪くなる。赤髪ちゃんとあおいちゃんは平気だが、ゴールドちゃんとシルバーちゃんは、ク・ルーマを発車させてから、少し経ったところで体調不良になってしまった。その為、今は後部座席で横になっている。
『うぅ……ぎもぢわりぃ……』
真っ青な顔でお腹をおさえている。そんな美少女達の辛そうな姿を映し出したサンバイザーを覗いている赤髪ちゃんは、心配が絶えないようだ。
『ゴールドさん、シルバーさん、そろそろこの荒野を抜けられますよ』
『お、おぉそろそろか……』
『良かった……』
ようやく先に進んだと実感したその時、突然ク・ルーマの真横に爆弾が落ちてきた。
ドカーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!
赤髪ちゃん達にはダメージは無いものの、爆音と共に窓ガラスが散り散りになり、それぞれ小さな凶器となって襲いかかる前に、赤髪ちゃんは咄嗟に風魔法でその破片を全て吹き飛ばした。
『な、なんだ!?』
冷静な赤髪ちゃんはク・ルーマが無事に動くことを確認し、ハンドルを回し、その場から離脱しようとする。
しかし、また2つ目の爆弾がク・ルーマのすぐ近くに落とされた。
赤髪ちゃんはほとんど形がない車窓から風魔法をその爆弾に放つと、それは水平に飛んでいき、こちらに被弾しないように距離を離す……と思ったら、その爆弾から白い煙が充満し、ク・ルーマの中を包み込む。
『げほっげほっ……!』
赤髪ちゃんは再び風魔法で辺り一帯の白煙を吹き飛ばした。すると、目の前に見覚えのある男が、白煙に紛れてク・ルーマ内に侵入し、ナイフであおいちゃんの首を斬ろうとした。
そのナイフがあおいちゃんの首を掻っ切る前に、赤髪ちゃんはナイフを素手で受け止めたことで、なんとかあおいちゃんを守ることができた。
『お姉さま!』
仕留めきれなかった男はやむを得ずナイフを手放し、一旦ク・ルーマから離れた。
『ちっ! またしても仕留め損なったか!』
この男はかつては非行ばかり繰り返す元正義教団で、今は盗賊団の幹部をやっている。前にブロンズちゃんが迷いの森で襲われた時に、赤髪ちゃんに不意打ちをしようとした卑劣な男……名をイーブルという。
『またあなたですか……』
『あぁ! 俺様だ! 会いたかったぜ!』
イーブルは不意打ちが失敗したにも関わらず、焦りの表情は皆無で、飄々とした態度で口を開く。
『私はもう、あなたの顔も見たくなかったのですがね……!』
赤髪ちゃんは殺意と共に剣を取り出し戦闘体勢を整えた。
『おーこわ。今のままじゃ、俺はお前に勝てねえなあ! 今のままじゃな』
その時、赤髪ちゃんの体に異変が起こった。突然、手足が痺れ、息もしづらくなった。
『な……』
赤髪ちゃんは、あまりの苦しさに膝をついて倒れてしまった。
『その煙には、死なない程度の毒が含まれていてなぁ……こんな感じに敵を苦しませて捕縛するにはうってつけの道具ってわけだ! いかに聖剣使いであってもこの苦しみには……耐えられねえな! アハハハハハハハハハ!』
防毒魔法をかけていたイーブルはただ1人高笑いをしている。完全に勝ったと思っている。
確かに1番戦闘能力が高い赤髪ちゃんは確実に倒れた。
イーブル自身もなかなかの戦闘能力を持っているので、残りの3人が毒の煙を吸っていなかったとしても、まだいくらでも手段は残されているので勝機はある。
――しかし、イーブルは気づかなかった……毒をくらっても尚、平気で立ってられる誰かが、ここに居ることを……。
そして、その誰かは剣を持ち、目にも留まらぬ速さでイーブルを斬った。
『ぐあっ!』
完全に油断したイーブルは膝をつき歯を食いしばり、負傷した部分を手で押さえた。
『はぁ……はぁ……何者だ、お前……』
『……』
その誰か……彼女は無言でイーブルに剣を向けた。問答無用でもう1回斬るつもりだ。
『お前……そのイカレぶり……もしかして壊れた歯車持ちか?』
イーブルがそう聞くと、彼女は嗤った。
『アハハハハハハハハハ!』
『ああ……やっぱり、お前は……』
『フフ……消えろ、モブが』
彼女は無情に剣を振り、イーブルの首と身体は離れた。だが手応えがあまりにも無かった為、これは分身だと彼女は気づいた。
『私を騙すなんて……人間のくせになかなかやるじゃない……』
彼女は剣を粒子化という形でしまった後、倒れてしまった3人の手当てをした。
『ふふふ、この3人には、まだまだ利用価値があるもの……分かってるわよ、お前に自害されたら、私も消えてしまうからな。どちらにせよこの3人にはまだまだ生きてもらわなくちゃ……え? まだあのガキ……ブロンズを殺そうとした事怒ってるの? いえ、私はただ都合の悪い記憶を消そうとしただけよ、なんせ彼女は私の存在を知ってしまったからね、まあ、彼が私に敵意を向けてきたことに腹が立って、ちょっと感情的になっちゃった事はあったけどさ……』
彼女が誰かと話している内に3人の手当てが終わった。すると彼女はク・ルーマの中でそのまま眠った。目覚めた時には、本来の人格に戻りいつも通りの彼女になっているだろう。
――――
――それから2時間後。
『……ん……あれ?』
シルバーちゃんは目を覚ました。しばらくボーッとしていたが、この状況を徐々に理解し、慌ててまず隣で寝ているゴールドちゃんを起こした。
『お姉ちゃん! 起きて!』
『……ん……あと7分23秒』
『お姉ちゃん、細かすぎるよ……そこはあと5分って言うところでしょ……ってそうじゃなくて、起きて!』
いくらゴールドちゃんを揺すっても、起きることは無かった。こうなったら……とシルバーちゃんは、ゴールドちゃんの耳元で絶対起こせるあることを言った。
『ほら、早く起きないと、赤髪さんにパンツ撮られちゃうよ?』
『はっ!』
パンツを撮影されると思い、ゴールドちゃんは赤面しながら勢いよく起きると、その際にゴールドちゃんの頭がシルバーちゃんの頭に当たった。
『痛っ!』
『痛ってえ! はっ! おい赤髪ちゃん! アタシのパンツ撮るなー! ってあれ?』
ゴールドちゃんが、ク・ルーマの中を見渡すと赤髪ちゃんの姿はなく、あおいちゃんは助手席で寝ていて、シルバーちゃんは、頭を押さえて悶絶していた。
『おいシルバー、どうした! 頭痛いのか! 大丈夫か!』
『お姉ちゃん……石頭過ぎるよぉ……』
シルバーちゃんは、故意のない頭突に痛みを感じながらも今の状況を説明した。
『なるほどなぁ……突然、何者かに襲われて、白煙巻かれて、眠らされた……というわけか』
『うん、確かそうだったよ』
『うん、で、そいつは今どこに……?』
『分からない、それに、赤髪さんもいなくなってるし……』
『マジか、赤髪ちゃん……どこ行ったんだ……?』
――その頃、赤髪ちゃんは……。
赤い髪を靡かせた彼女は自分のク・ルーマから、少し離れた場所で1人立ち尽くしていた。
『情けない……何やってるんだ……私……』
赤髪ちゃんは自分の不甲斐なさに、唇を血が出る程、噛み締めた。
『次は……こうは行きませんよ……』
第54話を見て下さり、ありがとうございます。
次回なんですが、23日と24日は、執筆する時間が、あまり取れない為、25日に投稿予定となります。(執筆がスムーズに進めば、23日か24日に投稿できる可能性もあります)
申し訳ございませんが、宜しくお願い致します。




