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壊れた歯車は異世界に行っても壊れたままだった  作者: カオス
5.5章〜未来への架け橋〜
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EPISODE3『精霊と妖精⑧』

大変お待たせしました。

投稿が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。

宜しくお願い致します。


 ――鋭利な爪がアレーシアに迫る。


 振り下ろされたその凶器はまるで断頭台の刃。かつてそれで首を斬られた貴族がいたらしい。どんな理由でそうなったのかは分からないが、きっとこんな風に突然やってきて、理不尽な力の権化に潰されたのだろう。


 しかし、そのギロチンにあるのは殺意だけではなく、純粋な戦意。この刃を受け止めて見せろ。そんな意思がこの刃に映しているような気がする。


 どういう意図で前衛のリックスではなく、アレーシアを狙うのか。不意を突くためなのか、偶然なのか、あるいは――


『それで私を殺せると思ったのかしら?』


 アレーシアは短剣を使い、炎の獅子の攻撃を弾いた。細身である彼女の意外な腕力に慄いた百獣の王は一度跳躍し、五メートルほど引き下がる。


『ガルルルルルル……!』


 炎の獅子は攻撃を止めながらも、戦意を燃やし、アレーシアを睨みつける。


『まさか僕の風の防御陣を、こんなにあっさりとくぐり抜けてくるなんてね……』


 自慢の技を破られたバルカンは、落胆し、顔面に手を張り付かせる。


 これまでの戦闘(たとえば敵襲とか稽古試合)も防御陣を突破された事はあったが、一分も保たなかったことは一度たりとも無かった。


『こうなれば防御は捨て、攻めるのみだ』


 リックスがそう提案する。


『いやいや、それは無謀が過ぎるよ!』


『何も無防備でいろというわけではない。奴の攻撃を避けられるなら避けろ。無謀に挑むのではなく、戦況を見極め、慎重に行動しろということだ』


 攻めに徹するが、無策で突っ込むなとリックスは唱える。


『それはそうだけど、それが正確にできれば苦労しないんだけどな……まあでもそうだね。それしかないよね』


 バルカンは覚悟を決め、再び戦闘態勢に入る。どうせ精霊の身体能力を超えた獅子の足からは逃げ切れないのだから。


『行くぞ』


 まずはリックスが攻める。


『喰らうがいい!』


 リックスは跳躍し、振りかざした斧を振り下ろす。


 結果、斧の餌食となったのは緑が生い茂る大地だ。亀裂が三メートルほど走り、豊かな緑の一部がえぐられた。もちろんまともな倫理観を持つ彼がそれを望んでいたわけではないが、今はそれに罪悪感を覚えている場合ではない。


 炎の獅子は亀裂と少し離れた所に立っていた。リックスの攻撃は軽々と避けられてしまったようだ。


 次はアレーシアが走り出した。彼女は一つの短剣を炎の獅子めがげて投擲した。それを最強の獅子は自慢の爪で弾き返そうとした。


『かかったわね』


 悪者のような顔つきで、呪文を唱えるアレーシア。どうやら雷の精霊の力で爪ごと焼き焦がすつもりのようだ。


 爪を振り下ろした獅子は、電気を纏った短剣に触れてしまい、電流が身体中を駆け巡った。


『オオオオオオオオオオオ!!!!!』


 激痛に苦しむ獅子は悲鳴を上げる。


『よし、今だ!』


 ――この機を逃さない。


 三人は一斉に攻撃を始める。


 しかし、叫ぶ獅子はたてがみの炎の勢いを上げ、熱風を放つ。


『くっ……!』


 肌を焼くような痛みが広がる。これ以上近づけば、肌が燃えてやがて身体の全てがコゲとなり、崩れ去るだろう。


『水の精霊よ、我に力を貸したまえ!』


 バルカンは、“水の防御陣”を張った。これは風の防御陣と違って、防御力は高くないが、その代わり防御範囲が広く、炎による攻撃に関しては全て無効になる。


 防御は捨てる作戦ではあるが、ここで防御をしなければ、そもそも攻めることができない状況だ。必要な防御は欠かせない。


『水の防御陣を張った! これで熱風はかき消せる!』


『バルカンないす〜! 攻めるよリックス!』


『嗚呼』


 アレーシアの短剣で炎の獅子を斬りながら、先ほど落とされたもう一つの短剣を足で拾った後、早速それを足で蹴り飛ばし、獅子の足に直撃させた。


 リックスも重い斧でひたすら炎の獅子を斬って斬って斬りまくる。


『グオオオオオオオオオオオオ!!!!!』


 炎の獅子は電撃で痺れてるせいでろくに抵抗できず、何回も血を吹き出しながら、その度に悲鳴を上げる。


 このままでは、炎の獅子が倒れるのも時間の問題だろう。


『………………』


 沢山の傷ができた。そこから血液が川のように流れていく。


『…………』


 出血量が許容範囲を超えようとしている頃から痛みが薄れてきた。それに伴い意識も遠のいていく。


『……』





 《かつて最弱だった獅子視点》


 ――ああ、やはり私は弱い。


 ()()のようにはなれない。


 私は何で師匠のようなりたかったんだっけ?


 …………………………。


 ――王者の雄叫びが聞こえる。強者ですら、その声を耳に入れただけで慄き、その場から逃げてしまう。同じ種族なのにまるで鬼神のように恐れられている。


 ――ああ、そうだ。


 強く気高く、ただ強者を屠る彼が――


 妬ましかったんだ。

ここまで見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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