EPISODE3『精霊と妖精⑥』
遅れてしまってすみません。
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迫りくる拳にウンディーネは、軽く手のひらだけで受け止め、サラマンダーの勢いがなくなった隙に、強烈な腹パンチをお見舞いする。
『ぐあっ……!』
モロに拳を受けたサラマンダーは、膝を崩し、腹を押さえながらゴホゴホと咳をするが、すぐに立ち上がる。
サラマンダーは苦い顔をしながらも、笑みを浮かべ、『さすがだな』と一言。拳を構える。
『ウンディーネ様……?』
味方は全員、意外そうにウンディーネを見た。
勝手なイメージではあるが、彼女はその清楚な外見上、精霊の力を使って可憐に戦うタイプだと思っていたからだ。それがまさかの暴力でねじ伏せてみせた。
『やだ、ちょっと、みんなして何ジロジロ見てるの? 私が格闘できたのそんなに意外?』
『いえ、そういうわけでは……』
『嘘だ、絶対思ってたでしょ』
『その……はい……正直めっちゃ意外でした』
『素直でよろしい。でも勘違いしないでね。私は格闘もできるってだけで、妖精の力も使えるんだからね』
ウンディーネは恥ずかしそうに頬を染めながら、自分の戦闘スタイルを暴露した。
まだ立ち上がるサラマンダーは、拳に炎を灯して、再び闘志を見せる。
『おいおい、何くっちゃべってやがる! まだやれるぞオレは!』
まるでサラマンダーの闘志を表しているかのように燃え上がる炎。その熱気だけで彼女がただ者ではないと、この場にいる誰もが理解する。
しかし、とはいえこちらは七人。対して相手は一人だ。実力のある七人で押し切れば確実に、より楽に勝てるだろう。但しそれは正々堂々なプライドを度外視すればの話だが。
『ええ、いいわよ。かかってらっしゃい』
ウンディーネは手のひらを上に指先をクイッと引き寄せた。この煽るような仕草も、またもや彼女のイメージとはかけ離れている。
『てめえらまとめてぶっ潰してやるー!!!』
サラマンダーはウンディーネどころか後ろの七人すら倒すつもりのようだ。だが戦力的に不可能なので無謀以外の何者でもない。
まるで八人の強敵に挑む主人公のような図だ。敵ながら、サラマンダーの狂戦士ぶりに敬意を払った。なので他の七人は暗黙の了解で手を出さずに、先にアジトへ乗り込むことにした。
『ウンディーネ様、任せました!』
ウンディーネもそれは承知で一人で挑んでいる。尤も今の自分ならばサラマンダーに勝てる確信があるようだ。きっとサラマンダーを倒して、後を追うだろう。
『その川の中に精霊の力で波紋を作ってみて! そうすれば多分川が開いてアジトがあると思う!』
完全に推測ではあるが、正解だ。昔なじみの心理を理解しているからこそ導き出した答えなのだから。
『承知しました!』
二人の戦いを他所に川へ向い、ウンディーネの言う通りに川に波紋を作ろうとする。
サラマンダーはそんなことにも気づかず、ただ目の前の敵に激しい攻撃を繰り返す。それを全て受け流すウンディーネ。もちろん彼女も拳で反撃し、サラマンダーにダメージを与えていく。
サラマンダーはウンディーネにダメージを与えられないまま、彼女の攻撃を許している。
サラマンダーは確かに強いが、ウンディーネとの戦力差は明らかだ。
ウンディーネの方が強い。サラマンダーが敗北するのも時間の問題だろう。
精霊軍の作戦は今のところ順調そのものだ。誰も彼もがそう思った。このままアジトに潜入し、ボスと幹部を一網打尽にし、橋本ルカを救い出す。
完璧なシナリオが彼らの頭に浮かぶ。
しかし、川の向こう側からシュバッと上空を飛んだ何かと、空の彼方から現れた二つの何かによって、それは阻まれることとなる。
『何だ!?』
川に映る三つの何かに目を奪われ、その姿を拝むことになる。
『あれは……?』
――その姿を見た者は総じて言うだろう。
架空の動物がなんでここに?
一匹はタテガミにと尻尾に炎を灯したライオン。物語でしか見たことのない神秘的な動物だ。獰猛な爪と牙が敵意を剥き出しにしている。
一匹は翼と鶏冠に炎を灯した火の鳥。こちらもファンタジー溢れる美しい鳥類だ。全てを見透かすのよう鋭い目が敵の全てを見通している。
最後の一匹は赤いドラゴンだ。他の二匹とは違って炎を纏ってはいないが、見る者を圧倒する王者の覇気を感じる。ドラゴンは最強であるというイメージがあるからだろうか。直感的に三匹の中で一番強いと思える。
『どういうことだ……? まさかサラマンダーの仲間なのか?』
バルカンが根拠のない推理を披露する。警戒しておくに越したことはないので、全員身構える。
飛び出した三匹の中で唯一空を飛び続けられない炎のライオンは切り込み隊長として、オベイロンを襲う。
案の定、三匹の謎の生物はサラマンダー側の増援だったようだ。
『オベイロン様!』
リックスが飛び出し、斧を盾のように使い、炎のライオンの攻撃を防いだ。
炎のライオンはこのまま押しきれないと判断し、一旦後ろに下がって様子を伺う。
リックスの元にバルカンとアレーシアが駆け寄る。
『ここは我々にお任せください!』
三人は炎のライオンと対峙した。
『私はあのドラゴンと戦う。カヴァとクラウディアはあの鳥を任せる』
空を舞う火の鳥。今にもこちらに突いてきそうな勢いで、高速で羽ばたいている。
『一人で大丈夫ですか?』
『大丈夫だ。それにあのドラゴン――』
オベイロンは羽を仰ぎ続けるドラゴンを見つめる。
『ずっと私を見ている。まるで私との戦いを臨んでいるような気がするんだ』
通じ合う精霊と龍。オベイロンが鋭い眼差しを向けると、それに反応したように龍が雄叫びを上げた。
『じゃあ行ってくる。そっちは頼んだ』
『お気をつけて』
オベイロンはそう言い残し、龍の元へ飛んでいった。
『オベイロン様……』
王様である彼を護衛もなしに送り出してもいいのか。不安そうに主を見つめていたクラウディアは、そっと飛んでいく彼から視線を外し、自分達の敵と対面する。
その敵である火の鳥は空気を読んでいたのか、今までこちらに攻撃せずにまだかまだかと旋回し続けていた。心なしかちょっと怒っているように見える。
『あの鳥、私達を待ってたみたいだね……』
『ずいぶん律儀な鳥ですね……』
苦笑いするルカ・ヴァルキリーとクラウディア。そんな二人は、すぐに真剣な顔つきに変えて、剣を取り出す。
『さて――行きますよ!』
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