EPISODE2『かつて騎士だった旅人④』
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森に入ってモンスターを狩ったことがバレてしまった。こんな幼い女の子が獣のいる森に入るなど危険すぎる。
今後は出入り禁止にされると思ったのだが、貴重な食糧を手に入れたからか、狩猟の許可が降りた。むしろ獣を狩る方法を教えてほしいと懇願されてしまった。さっきめちゃくちゃ怒ったくせに……。
両親は早速私のことを村長に相談すると、自分よりも一回り大きい大人達が私の元にゾロゾロと駆け寄り、両親と同じように狩猟のやり方を伝授してほしいと頭を下げた。
こんな幼い子供を囲んだ大人達が1人残らずつむじを見せるという異様な光景に私は困惑した。
私が獣を狩れたのは、ノルン様の能力により、前世の記憶を引き継いでいるからだ。その経験値があったからこそ、適当に魔法を放つだけで倒すことができるのだ。
ダストさんやルカさん等、その時代には私よりも強い人なんていくらでもいたが、少なくともこの村には魔法を使える人はいないし、ろくに獣も狩れるだけの武器も人もいない。せいぜい村の周りに塀を囲んで防御してるだけ。
だが、もし村人全員が私レベルの魔法を覚えたなら、森のモンスターなどあっという間に枯渇するのでは?
でもそれだけ強くなれば、遠くの街へ出かけることもできるし、モンスターを狩るという仕事も受けられるかもしれない。
私の魔法を継承することは、この村にとって革命と言っていい程の躍進では?
そう思い、次の日私は父と母だけではなく、村の大人全員を集めて魔法講習会を開いた。
この村には魔法という概念がないので、それはまあ教え甲斐があったというもの。だが意外と覚えは早かったもので、既に村の半分以上が完全に魔法を使いこなした。覚える魔法は人によってバラつきがあったが、森の獣を倒すには十分だ。
ファフニールさんには会わせないでおこう。私以外の人間には、やはり警戒心が強いからだ。
私は一度ファフニールさんに会いに行き、事の詳細を伝えた。すると、『それは困る』と言われた。理由を聞くと、『いやだって我の食料無くなるの嫌だし……』と答えた。
なるほど、そこまでは考えてなかった。
『分かった。じゃあ狩り尽くすね』
『我の話聞いてたか!?』
『聞いてたよ。だから狩った肉をファフニールさんにもあげるねってこと』
『なるほど。だが龍族は人間の胃袋とは比にならない程のサイズだぞ。人間が腹一杯になる程度の肉なんぞでは我の腹は満たされぬ』
『うーん、そっか』
『まあ、我ならば森以外にも範囲を広げれば食料は取ってこれるがな』
自慢気に言った。
『ここを離れちゃうの……?』
私は涙目になった。
『言ったではないか。我にとって貴様は唯一の話し合い相手だと。必ず戻ってくるから安心しろ』
『良かったー!』
私の出かけていた涙は嬉しいという感情に押されて、大放出することとなった。
『全く、泣きすぎだ。やはり貴様はまだ子に過ぎないということか』
それからファフニールさんと会話を続けた。すると、ある取引を提案された。
『魔法を教えてほしいって?』
『ああ、魔法とやらに興味があってな。我も使えるようになれば、狩りが楽になる』
龍族の眼は全てを見通すことができる。だから私がどんな魔法を使えるかも分かる。
『その対価として、他の地域にある物資を貴様に届けてやろう。村の人間共と分けるがいい』
『いい提案だと思うけど、村の人達には何て説明すればいいんだろう。ドラゴンが持ってきてくれたなんて言ったら大パニックだよ』
『我の事はドラゴンではなく偶然出会った旅の商人だと説明すればいい』
『なるほど、でも私お金持ってないから、どうやって取引したのか疑問が残るんじゃない?』
『何も金だけが取引材料ではない。物でもいいのだ』
ファフニールさんが言うには、何かを買い物する時には金も必要だが、金がなければ他の物で代用することができるようだ。ただしそれはこの地域でのみ通用する手段らしい。他の国では金だけみたいだから注意が必要だ。
『なるほど、それなら不自然じゃない……のかな?』
少し無理やりな気がするが、まあいいか。何はともあれ、村の人達にとっては大助かりだろうし。
『分かった。それならファフニールさんの提案受けるよ』
『交渉成立だな』
こうして私はファフニールさんと契約を結び、魔法を教える代わりに、ここでは手に入らない物資を持ってきてくれることとなった。これで村も少しずつだが、発展できるだろう。
それから一ヶ月ほど経過し、すっかり戦士の顔つきになった村人達を連れて森に出て、実戦経験を積ませることにした。
すっかり教官が板についた私は、自分より屈強な大人達に命令を下した。
『森の平和を脅かす獣共を討ち取れー!』
『イエッサー教官!』
もう教官って呼んじゃってるし。
老若男女問わない大群は次々と獣達を無双し、大量の肉と森の平和と圧倒的な自信を手に入れた。
――その夜は騒がしかった。
村人全員が本気でフードファイトしても尚減らない程の大量の肉を並べ、勝利の宴を開催した。
悲壮感に包まれていたあの村はどこに行ってしまったのだろうか。細々と暮らしていた頃が嘘のように活気あふれる村となっている。
みんな笑顔だ。嬉しい。
また明日ファフニールさんにも肉を持ってこよう。人よりも食べるって言ってたからなるべく多くの肉を詰めよう。
過酷な環境で生まれてどうしようかと思ったけど、とても充実した毎日を過ごしている。平和だけど勉強して働いてばかりの前世とは大違いだ。
ダストさんやルカさん達にも会いたい。この時代のどこかで生きてるのかな。ノルン様の話では送り込んだ時代はそれぞれバラバラみたい。偶然同じ時代に転生することもあるらしいけど、だとしても、この広い世界で特定の人に会える可能性は相当低い。
あの未来にたどり着くまで会えないと思った方がよさそう。
寂しい気持ちもあるけど、今はきっと最後の修行期間なんだ。未来で理想を実現するために頑張ろう。
今はこの時代を精一杯生きよう。コードネーム“ガレス”でもバレスとしてでもない、ドラゴンと友達になったとある村の娘として――。
ここまで見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
一応このエピソードはここで終わるつもりでしたが、少し物足りない気がするので、続きを書こうと思います。ただし、それは別のエピソードを書いた後だったり、最終章を書く最中とかで書こうと思います。いつ更新するかは分かりませんが、どこかのタイミングで必ず投稿したいと思います。
もしすぐにこのエピソードの続編書いて欲しいのであれば言って下さい。
宜しくお願い致します。
以上です。
次回も宜しくお願い致します。




