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壊れた歯車は異世界に行っても壊れたままだった  作者: カオス
5.5章〜未来への架け橋〜
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EPISODE2『かつて騎士だった旅人③』

すみません、投稿が遅れました!

大変長らくお待たせしました。

執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


 貧困な村の娘に転生してからから5年が経過した。その頃にはもう言語も覚え、ようやく魔法も使えるようになった。


 まずこの村で一番深刻なのは食料不足だ。このままでは村人全員が餓死してしまう。何かするにもまずはライフラインだけは確保しなければならない。


 食料を手にする方法は三つある。


 ① 遠くの国まで行って食料を買う。

 ② 畑を作る。

 ③ その辺の魔物を狩ってくる。


 ①が一番楽ではあるがこの村にはありったけの食料を買えるほどの金はないし、一人分の交通費すら出せない。そもそも金があるのなら、最初から苦労していない。


 ②は既にいくつか畑は作られてはいるが、この村では何故か作物が一割ほどしか育たない。確かにここ数年天気が曇っていることが多いが、それでもこんなに育たないのはおかしい。これについては後で調査するとしよう。


 ③は余裕だ。ヴァルハラで巨人と戦い続けた私ならば、ちょっと強い魔物だろうと軽く屠れる。


 え、今は五歳児だから身体能力は高くないだろうって?


 大丈夫! 転生後もレベルが引き継がれてるから!


 よし、まずは森の中で獣狩りまくるか。もちろん両親には内緒でだ。今の私は五歳の女の子だ。許可など降りるわけがない。なので、ちょっと散歩に行ってくると嘘をついた。


 うまく大人の目をかいくぐって、森の中へ入ることに成功した。


 ついでにきのみがあれば、それも集めておこう。きのこも生えてはいるが、生憎私は菌糸類には詳しくない。素人が手を出すのはやめたほうがよさそうだ。万が一毒に当たれば餓死より最悪なことになりかねない。


 奥へ進むと、飢えた狼二匹が現れた。鋭い牙を剥き出しに、殺意溢れる眼で私を捉えた。


 二匹の獣は同時に飛び出し、私に近づくと大きな口を開ける。その強靭な顎で私という肉を喰らうつもりなのだろう。


 私は獣共に炎魔法を放って、殺意ごと丸焦げにした。食物連鎖のエリートの姿は、もうそこにはなく、代わりにただの焦げた肉と化していた。


 焦げた肉を二つ入手した。


 少し焼きすぎた。せっかくの肉が……。


 仕方がないので、焦げてない部位だけ切り取って、余った布の継ぎ接ぎで作った袋の中に入れた。


 もうちょっと入りそうだ。あと2、3匹ほど狩ってから帰ろう。


 私はもう少し奥へと進む。


 ん、あれは――


 まるで爬虫類のような身体、鱗が全身を埋め尽くすように覆われている。獰猛な牙、見る者を怯ませるほどの大きな翼。


 ――ドラゴンだ。


 なぜこんなところに?


 ん?


 よく見ると翼に大きな斬り傷ができていた。傷口から赤い液体がポタポタと落ちていく。そのせいで空を飛べずに、森の中で身を隠さずを得ないようだ。


 だが、早く助けないと、最強のドラゴン族といえど出血多量で死に至るだろう。


 居ても立ってもいられない私は、不用心にもドラゴンに近づいた。


 すると、案の定ドラゴンは敵を見るような眼で私を睨みつけた。


 ドラゴンはグルルル……と声を上げ、私を威嚇している。“私に近づくな”と言っているような気がする。いや、ほぼ確実にそう言っているだろう。


 怪我をしても尚、威厳を失わないドラゴン。普通の人間ならば、睨まれただけで恐れ、逃げ出してしまうだろう。


 どうすれば敵意がないことを証明できる?


 持っている武器を落せば、信用してもらえるか。だが、今の私には目に見える武器は持っていない。私が武器とするのは格闘と魔法のみ。落としようがない。


 いっそ戦って黙らせるか? いやダメだ。それじゃあ余計に警戒される。


 私はモンスターを狩りたい衝動よりも、傷ついたドラゴンを何とか助けてやりたい。


 何故だかこのドラゴンを狩ってはいけない気がするのだ。


 一か八か会話をしてみよう。人の言葉が通じるかは不明だが。


『話を聞いて! 私は貴方の敵じゃない!』


 幼い女の子らしい口調で話を持ちかけた。


 すると意外にもドラゴンは特に声を上げなかった。話を聞く姿勢に変えてくれたような気がした。


 お、意外と素直か?


『貴方の傷ついたその翼を治したいだけなの!』


 ドラゴンは一瞬自分の負傷した翼に視線を移すと、その翼を差し出した。


 まさか警戒を解いたのか? というか、それ以前に言葉が通じたのか?


『信じてくれてありがとう!』


 私は事前に教わった治癒魔法を発動し、痛々しかった翼は元通りの威厳を取り戻した。


『素晴らしい。さすが()()()()か』


 ドラゴンは人間の言葉を話した。


『え、あなた人の言葉話せるの?』


『いや、正確にはテレパシーで我の念を貴様の脳内に直接送っているだけだ。人の言葉に聞こえるのは貴様の脳がそういう風に捉えているだけだ』


『へえ、そうなんだ』


『やけに落ち着いているな。驚かないのか?』


『ううん、驚いてはいるよ。ただ私からしたら特に珍しくないってだけだよ』


 何でもできるノルン様や、ありえない数の魔法を覚えてるダストさんもいるからね。


 このドラゴンはさっき私を転生の者と言った。何者か知らないが、どうやら私の事情をある程度知っているらしい。


『それよりあなたは何で私が転生した事知ってるの?』


『貴様の魂を見れば分かる』


『魂?』


『我々龍族の眼は全てを見通す。貴様が女神によって意図的に転生された存在であることも、他に仲間がいることも、我には筒抜けなのだ』


『本当に何でも知ってるんだね』


『無論だ』


『じゃ、じゃあ私が今履いてる下着の色も分かるってこと!?』


 私は恥じらいながら、スカート(布で巻いただけ)を押さえる。


『それは知らん』


『そっか、良かった』


 意外かもしれないが、私にだって恥じらいはある。特にダストさんとマーリンさんが女の子のパンツ大好き人間だったから余計に警戒してしまう。


『よ、よく分からんが、苦労したようだな』


 ドラゴンは困惑しつつ、私を労ってくれた。


『うん、苦労したんだよ……』


 その後もドラゴンと雑談を続けた。前世の事やそのまた前世のことも。ただ全てを語るにはあまりにも時間が足りなかった。


『ところで、そろそろ戻らなくていいのか? 貴様の親が心配するのではないか?』


『あ』


 空を見上げると、オレンジ色の天井が見えた。そろそろ戻らないと両親が心配する。


『そうだ戻らないと! あ、ドラゴンさん、話を聞いてくれてありがとう!』


『ドラゴンさんではない。我の名はファフニール。誇り高き龍族だ。今はもう廃れた族だがな』


 どこか寂しそうに天空を見上げるファフニールさん。龍族についての話を聞きたいところだが、今は一旦家に帰らないとならない。


『ねえファフニールさん。また明日もここに来ていい?』


『構わぬが、我がまたここにいるとは限らないぞ。翼も貴様のおかげで回復したことだしな。今すぐ空へ飛び立つこともできる』


『そっかぁ、まあそうだよね』


 ファフニールさんにはファフニールさんの都合がある。空を飛べるようになった以上、用もないのにわざわざここに滞在する意味もないだろう。


 もっと話を聞きたかった。あわよくば友達にもなりたかったなぁ……。


『まあ、我も特に目的地があるわけではない。他の龍族もいない。かといって貴様以外の人間は我と話そうともしないだろう。つまるところ我の話し相手がいないのは退屈なのだ』


『え、それって――』


『ああ、しばらくはこの森に滞在しよう』


 私は目を輝かせた。両親にすら話せない私の秘密を知るまともな話し相手ができたからだ。


『ただし、我が他の者に見つかり、騒ぎになったらここを出ていく。見世物になるのは御免だからな』


 見世物はともかく狩られるという発想はファフニールさんにはないようだ。よほど自分の実力に自信があるということか。


『分かった。じゃあ何があっても私以外の人には一生見つからないでね。もし見つかったらマスコットのような可愛い小動物のフリをしてね』


『それは無理があろうぞ』


 こうしてファフニールさんとまた会う約束をし、森を後にした。


 ちなみに狩り取った肉は、両親に見せて自慢したが、それ自体が私が森に入った証明になり、めっちゃ怒られた。


 迂闊だった……!

ここまで見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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