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壊れた歯車は異世界に行っても壊れたままだった  作者: カオス
5.5章〜未来への架け橋〜
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EPISODE1『セカンド・ドライヴの災難③』

お待たせしました。

執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


 目が覚めたら、俺は病院のロビーの床に寝転んでいて、両手を縄が封じていた。


『お、気がついたか』


 強盗らしき男が、ニヤリと口角を上げて話しかけてきた。


 俺に話しかけた女も、そこに立っていた。俺とは違い、縛られている様子はなく、強盗と同じ目線で、人質(おれたち)を見下していた。まるで強盗の仲間のように。


『貴様ら、何が目的だ?』


『何が目的って、そりゃこの病院には可愛いねーちゃんがいっぱいいるからな。縛られて泣き叫ぶ所を見てみてんだよ』


 強盗は、涙目の人質の看護婦に下衆な視線を送っている。今にも衣服を剥きそうな勢いだ。だが、お楽しみは最後まで取っておくタイプのようで、今はこの5階建ての大きな病院の制圧を優先している。


(金よりも性欲を満たしたい。そういう目的か)


 このロビーには女を除いて、現在5名程の強盗がいるが、どうやら他の階にも仲間がいるらしく、それぞれ制圧中のようだ。


 この病院は総合病院だ。一般病院よりも寝床が多くあり、当然入院患者も多くいることだろう。とても人質を全て逃がす事は不可能。残念ながら強盗の要求を全て飲む以外の道は残されていない。このままならば。


(仕方あるまい)


 シンプルに強行突破することにした。俺の力ならば容易だ。たとえ強盗が拳銃やナイフを持っていようと、大地すら割る大剣を所持していようと関係ない。“こっちには人質がいるぞ”と言わせる前に、強盗共の意識を全部奪ってしまえばいい。


 ――全てねじ伏せるだけだ。


 だが、懸念点が一つある。この時代にやってきて一番最初に俺に話しかけてきた女のことだ。


 こいつは記憶喪失ということになっている俺を病院へ連れて行こうとして、強盗現場を目撃した。警察を呼んだ後もなぜか逃げなかった。そして眠らせた俺を強盗に引き渡し、今に至ると。


『……』


『ぎゃははは! 偉そうな奴だと思ってたが、急に黙りやがった! やっぱ俺達が怖いんだよな?』


 強盗は他の仲間と共に笑うと、床に密着する俺の顔を覗いてきた。


『顔を近づけるな。反吐が出る』


 俺が強盗に軽蔑の言葉を吐き捨てると、強盗は不服そうな表情に変え、俺の顔面を蹴り上げた。


 なかなかの脚力のようだが、俺には通用しない。感じるのは痛みではなく、ただの衝撃だ。


『ちっ、なんだこいつ! おい()()()()()()()()()()()()()()()、全然動じなくてつまんねえんだけど! てか男なんだが!』


 アメリアとは、俺に話しかけてきた女の名前のようだ。何気に初めて聞いたぞ。


 強盗の男はアメリアに苦情を投げつけると、アメリアは、


『そんなの知らないわよ。だって顔が良い奴で人質になりそうな奴連れてこいとしか言われてないから』


 まるで仲間のような態度で、そう弁明する。


『女だよ! 俺が欲しいのは! 誰がイケメン連れてこいって言ったよ!』


 なら、最初にそう言いなさいよ、と肩をすくめるアメリア。


『というか、こいつどっから拾ってきたんだ?』


 別の強盗がアメリアに質問した。


『プールよプール』


『プール? なんでそんなところにいたんだ?』


 人質を連れてくるのに、わざわざプールに行く必要はない。その辺にいる奴を連れてくればいい。


『だって、その辺にイケメンがいなかったし』


 なるほど、それで水着に着替えてまでプールにやってきたのか。


『だ・か・ら! イケメンじゃなくて美女だっつってんだろうが!!!!!』


『はいはい、そうでしたねー。すみませんねー』


 反省の色がなさそうな謝罪をするアメリア。


 ――だが、妙な話だ。


 あの強盗の仲間だというのなら、警察に通報した理由は何だ? それとも通報したフリして別の誰かに電話したのか?


 通報云々を置いたとしても、そもそも病院へ行くことになったのは完全な成り行きだ。俺が記憶喪失と言ったから、病院へ行くこととなったのだ。


 にも関わらず、病院強盗の人質を増やすという任務は見事に達成された。


 何なんだ。この違和感は。今も強盗の仲間のように振る舞っているあの女は何者なんだ?


 ――刹那、女は俺に鋭い眼差しを送ってきた。まるで“お前ならどうにかできるだろう”と、暗に伝えているように。


 女はすぐに視線を外した。


 ただの一般人だと思っていたが、どうやら見当違いの見立てだったようだ。


 ――俺は縄を解いた。次の瞬間、強盗は慌てて俺をもう一度捕まえようとするだろう。その前に俺は強盗を一人倒し、その他の強盗のリアクションを見る前に、他の四人を軽いジャブで気絶させた。


 その間、僅か1秒ほど。


(1秒もかかってしまった。気が抜けてるな)


 アメリアには手を出さなかった。不可解なクイズの答えを耳に入れておきたかったからだ。


『へぇ、お兄さんやっぱり強いんだね』


 アメリアは仲間が倒れていく光景に何のリアクションもなく、まるで全てを見透かしているような視線を俺に突き刺した。


『お前は何者だ?』


『その答えを知りたければ、この病院を救え。まだ強盗はいるはずだ』


 馴れ馴れしい態度から一変し、偉そうな司令官のように指示してきた。今までのアメリアはどこに行ってしまったのやら。新たな謎は増えたが、今はそれどころではない。


 他の階にもまだ強盗はいる。今頃看護婦や患者達が銃口を向けられていることだろう。もし、ロビーの異変に気づけば、まだ未解放の人質に危害が及ぶかもしれない。


『そうだな。先に強盗共を片付けてくる』


 俺はアメリアの指令に従い、他の階の強盗を始末しに駆け出した。


 ――特に難なく強盗を一網打尽にし、病院は強盗の魔の手から無事に解放された。


 後に警察が到着し、強盗グループを連行した。


 その様子を俺とアメリアは見送った。これにて一件落着といったところで、俺はアメリアに引き延ばしにされた謎の解答を求めた。


『さて、アメリア。答えろ。お前は何者だ?』

ここまで見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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