第52話『赤髪ちゃん、暴走』
お待たせしました。
第52話の執筆が完了しましたので、宜しくお願い致します。
※2022/08/05改稿しました。
一方、後続組は既に荒野に入り、モンスターがいつ襲ってきても対応できるように、警戒しながらク・ルーマを走らせていたのだが……。
『モンスター出ませんね……』
この荒野にはモンスターが適度に出没するはずだが、ただの一匹すら見かけなかった。
先行組のアミさん程の実力者なら、ここら一帯のモンスターを狩り尽くす事もできなくはないだろう。しかし、今は火の国へ向かって魔王を迎えに行くことが目的だ。モンスターに寝込みを襲われる心配があるとはいえ、この広い荒野の隅々まで渡って、それら全てを排除するなんてあまりにも現実的ではない。なので恐らくは赤髪ちゃん達以外の多くの冒険者が倒したのだろう。その推測以外の事は思いつかない。
『ホント、出ねえなー、いつになったら新しいハンマーを試せるんだよー』
ゴールドちゃんは退屈そうに手を後ろの頭で組んでいる。一方、隣に座っているシルバーちゃんは、意外にもぐっすりと眠っている。シルバーちゃんの性格なら、緊張感が出て眠れないはずなのだが、こうして眠っているなんて珍しい。
『ん……アースさま……』
シルバーちゃんはどうやらアースちゃんと話している夢を見ているようだ。そんな寝言が続々と聞こえる。そんなに女神様と離れたのが辛いんだろうなと、ここにいる皆がそう思った。
『シルバーさん、そんなに疲れてたんですね……』
赤髪ちゃんが運転席と助手席の上にあるサンバイザーを覗くと、そこには可愛い寝顔ですやすや眠っているシルバーちゃんが写っていた。赤髪ちゃんは、その光景を見て口角が上がった。
『皆さん、そろそろ暗くなってきましたので、この辺でキャンプしましょうか』
『わーい! キャンプだ! キャンプ!』
ゴールドちゃんは、キャンプと聞いてテンションが上がり、足をバタバタさせた。ゴールドちゃんもアミさんと同じく、キャンプしたい派なのである。
『ゴールドさん、気持ちは分かりますが足をバタバタしないで下さい、はしたないですよ』
『はーい!』
ゴールドちゃんは分かったのか分かってないのか元気よく返事をした。これはきっと後でまたはしゃぎ回るに違いないと思った赤髪ちゃんであった。
『やれやれ……』
赤髪ちゃんはやれやれと言いつつ、心は癒されていた。赤髪ちゃんはさっきの盗賊団の一件で心が乱れていたが、この癒されるような光景を見て通常運転に戻りつつあった。
『皆さん、降りてください。キャンプの準備をしますよ』
『わーい!』
ゴールドちゃんははやる気持ちが抑えられず、早々にク・ルーマから、飛び出していった。
『ゴールドさん、あまり遠くへ行かないで下さい!』
ゴールドちゃんは、遠足ではしゃぐ小学生のように荒野を走り去った。既に遠くへ走って行ってしまったので、赤髪ちゃんの声は聞こえていない。
『全く……』
『お姉さま、私は先にキャンプの準備をしてきますね』
『お願いね、あおい。ゴールドさんを連れ戻したら、すぐに私も準備に取りかかります』
『はい』
あおいちゃんは、笑顔で返事をし、ク・ルーマから降りて、手際よくキャンプの準備を進めた。
『ん……ふわぁ……』
『シルバーさん、起きましたか』
シルバーちゃんは、目を擦り腕を伸ばした。
『ここは……?』
『ここは荒野の真っ只中です。ここら辺でキャンプしようとしていたところです』
『あ、もうキャンプの準備かぁ……。私、手伝いに行きます』
『お願いします』
シルバーちゃんは寝惚けながらも、率先してキャンプの手伝いをしにいった。どこかのはしゃいで走り去って行ったお姉ちゃんとは大違いである。
『さて、私はゴールドさんを連れ戻しに行きますか。どこまで行ってしまったのやら……』
赤髪ちゃんは呆れながらゴールドちゃんを探しに行った。
『ゴールドさん、どこですかー!』
すると赤髪ちゃんは、なぜか大きな岩の前で立ちつくしているゴールドちゃんを見つけ、そこへ小走りで向かった。
『ゴールドさん!』
『おお、赤髪ちゃん』
『おお、じゃないですよ、全く……勝手にどこかに走り回らないで下さい』
『ごめんごめん』
ゴールドちゃんは、明らかにさっきよりもテンションが低かった。どうやら、“何か”を見ているようだった。
『ゴールドさん? どうしました?』
ゴールドちゃんが、見つめている岩を見てみると、なぜか、赤く光る宝石が表面に埋め込まれていた。
『これは……なんでしょう?』
赤髪ちゃんは警戒しながら宝石を観察した。珍しいモンスターというわけでも無さそうだが、なぜか宝石から、熱気を感じた。
『少し、熱気を感じますね』
すると、ゴールドちゃんが、宝石に手を伸ばそうとする。
『うかつに触らないで下さい、何か嫌な予感がします』
『お、おお』
この宝石を下手に取り出したり破壊してはいけない。赤髪ちゃんは、そんな予感を肌で感じていた。
『ゴールドさん、戻りましょう』
赤髪ちゃんは、ゴールドちゃんを連れて元の場所へ向かった。あれはなんだったんだろう? 赤髪ちゃんもゴールドちゃんもその事をずっと頭によぎらせていた。
――――
元の場所に戻ってみると、短時間だというのにキャンプの準備は完了していた。あおいちゃんとシルバーちゃんの手際の良いこと。
『あ、お姉ちゃん』
シルバーちゃんはゴールドちゃんの元へ、トコトコと小走りをした。
『もう! お姉ちゃん! 手伝いもしないでどこ行ってたの!』
シルバーちゃんは、ゴールドちゃんへの心配と協調性の無さに対して怒りをぶつけた。
『あはは、ごめんごめん』
『ごめんごめんじゃないよ!』
シルバーちゃんは、ぷくーと頬を膨らませた。そんなシルバーちゃんを見たゴールドちゃんは、優しくシルバーちゃんの頭を撫でた。
『ごめんな、シルバー』
『もう……!』
お姉ちゃんに頭を撫でられてシルバーちゃんは満更でもない様子だ。尊い。
『か……可愛い……』
赤髪ちゃんはこの素晴らしい光景を見て、ニヤケ顔でそう呟いた。
『何か言った?』
『いえ、何も……』
と言いながら、赤髪ちゃんはニヤけた口元を隠したが、ゴールドちゃんとシルバーちゃんの尊さに耐えられず、すぐに暴走モードに入った。
『フヘ、フヘへへへへへへ』
『赤髪ちゃんさん、怖いです……』
『あの状態の赤髪ちゃんは近付いちゃダメだ。恥ずかしいところをガン見してきたり、撮影されたりするぞ』
ゴールドちゃんとシルバーちゃんは小走りで赤髪ちゃんから離れようとしたが、赤髪ちゃんも同じ速度でゴールドちゃん達に追い付こうとしている。しかも、どこからか投影器具を取り出し、ゴールドちゃん達をローアングルで、撮影しようとしていた。
『こら! どこ撮ってんだ!』
ゴールドちゃんとシルバーちゃんは赤面しながら、ヒラヒラするスカートを抑えた。
『フヘへへへへへ!』
赤髪ちゃんは彼女達の赤面パンチラを投影器具に収めるべく、ほふく前進で彼女達に迫った。そんな体勢なのに気持ち悪いくらい早い、まるで地中を泳ぐ魚のようである。
『助けて! あおいちゃん!』
ゴールドちゃん達は本気で走り、あおいちゃんに助けを求めた。
『フヘへへへへへへへへへへ! 逃がしませんよぉ!』
赤髪ちゃんは一度暴走すると、なんとしてもやり遂げようとする。それが例え女の子のパンツを見るという非常にモラルに欠ける行為であっても。
『お姉さま』
あおいちゃんは、ゴールドちゃんとシルバーちゃんを守るように赤髪ちゃんの前に立ち塞がった。ほふく前進の赤髪ちゃんからしたら、チラチラとあおいちゃんのパンツが見えている状態だ。
『フヘ?』
赤髪ちゃんは、ターゲットをあおいちゃんに変えて、地に這いつくばったまま、実の妹のスカートの中を覗こうとする。
『お姉さま……そんなにパンツが見たいなら……』
あおいちゃんは両手でスカートの端をつまみ、赤面しながら赤髪ちゃんの前でスカートをたくしあげた。どの角度から見てもパンツが見える状態だ。
自分を犠牲にしたかに思えるあおいちゃんだが、内心は大好きなお姉さまにパンツを見られて興奮している。つまり役得なのである。この変態が。
『あおいちゃん!?』
『どうぞ、私のパンツを撮ってください!』
ニヤケ顔が出ているあおいちゃんだったが、赤髪ちゃんは真顔で立ち上がり投影器具をしまって服についた泥を払った。さすがに実の妹にこんな格好はさせられないと正気を取り戻したように見えたが……。
『お姉さま……』
『フヘ、フヘへへへへへへへへへへへへへへ!』
赤髪ちゃんは鼻から血が水鉄砲のように噴射し、そのまま気絶した。
『お、お姉さま~~~~~! 真っ赤なものを出してから、真っ白に燃え尽きないで下さい~~~~~!』
赤髪ちゃんは真っ白に燃え尽きた感を出し、あと1時間程は気絶したままだった。
そんな赤髪ちゃんを見たゴールドちゃん達は、呆れ顔でこう呟いた。
『あんな大人には、なりたくねえな……』
『うん……』
第52話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、20日か21日に投稿予定です。
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