第591話Aパート『一家団らんってレベルじゃねえぞ!』
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――もう嫌だ。
俺はそれを心に秘めながら、家内の惨状にため息をついた。
経緯を説明すると、マーリンがようやく一息つけるということで、“スーパーハイパーウルトラ超絶美少女マーリン様の慰労会”を開催することとなった。
まるでホームパーティーのように、美味しそうな料理やデザートを机いっぱいに並べている。想定20人分くらいあったにも関わらず、机の上の料理を全て平らげてみせた。しかも、その後もお菓子の袋も大量に用意されていた。で、それも女性達がほぼ食い尽くした。
確かに元々結構食べる人が多かったけど、今日は別格だ。こいつら胃袋どうなってんだよ……。どこぞのピンクのキャラクターみたいだ。
未成年者が多いため、酒は控えることにな……るわけなかった。主にマーリンがワインを運動後に飲む水のように次々と口に流し込んだのだ。
すると、どうなるか?
俺以外の全員があられもない格好で床に寝込んでいる事態に……。中にはスカートが捲れて下着が見えてしまっている者やそもそも服を着ていない裸族もいる。
しかも、そこら中に、お菓子の食べカスや袋、あと何故か下着やおもちゃまでもが、道端の枯葉のようにバラバラと落ちていて、このあとの清掃作業を想像をするだけで、かなりのストレスが俺の脳に重くのしかかる。はぁ……。
まるで食中毒でも起こしたのかと思う程の凄惨な現場だが、全員気持ちよさそうに夢の世界を渡っている。
マーリンに至ってはワインの瓶を抱き枕のように使っている始末。瓶の口の先から僅かに赤紫色の液体が垂れている。
あれれ〜? おかしいな〜? マーリン以外のみんなは飲酒していないはずなのに、なぜこんな全員が酔っ払いの末路のような姿を見せているんだろうね〜?
――俺は知っている。
マーリンが派手に酔っ払った後、家中を走り回って、みんなの下着を集めて回り、それを俺の前に掲げて、『それぞれ誰のパンツでしょう?』という、人の羞恥心を最大限に弄ぶクソみたいなクイズを開催した。
ルカちゃん含めて羞恥組のみんなは急いでパンツを回収しようと手を伸ばすも、それをマーリンが、華奢な身体から出るはずのないバカ怪力で阻止する。
その時、マーリンから漂う酒の匂いが至近距離にいた彼女達の鼻腔をくすぐる。
すると、ルカちゃん達は『ひっくぅ!』しゃっくりをし始めた。それは――泥酔の始まりだった。
ルカちゃん、カヴァちゃん、あおいちゃん、バレスは酒の魔力に溺れてしまったのだ。酒飲んでないのに。
なんで酔っ払ってんの!?
そうツッコむ間もなく、酔っ払った3人はパンツの回収をせずに、ルカちゃんはおもちゃを取り出したり、カヴァちゃんは勝手にテレビゲームをやり始めたり、あおいちゃんはパーシヴァルを赤髪ちゃんだと勘違いし、抱きしめたあと、あらゆる部位に手を伸ばして、ちょっとエキサイトな光景を見せてしまった。ちなみにバレスだけは直立不動で頬だけ赤く染めている。
なんだこれ。
ほぼ女達による花園の空間だが、とてもそんな綺麗な表現など烏滸がましい。花は花でも樹海に咲くラフレシアとか、敵を待ち構える食虫植物などがふさわしい。
カオス……圧倒的カオス。
今日は久々に一家団らんできると思ったのに、これじゃあ慰労会じゃなくて苦労会だわ。
『はぁ、やれやれ……』
これじゃ、どこぞの魔王と変わらんな。
俺はひとまず酔っ払った奴らを一人ずつ部屋で寝かせることにした。
まずはルカちゃん。いつ買ったのか分からん銃のおもちゃを持っている。もちろん本物の弾丸は出てこないし、人工的に発射音が鳴るという、うるさいだけのおもちゃだ。ここが一軒家だから良かったが、壁の薄い団地やマンションだったら隣から苦情が来るレベルだ。
『えへへ〜、らまにはじゅうをつかっちゃうもんね〜』
たまには銃を使いたいと言っているようだ。確かにルカちゃんは主に剣を使っているから、銃は新鮮なのかもな。
『喰らえ〜』
ルカちゃんの視点では敵がいるのか分からんが、壁へ向けて乱射している。足元がおぼつかない状態とはいえ、あまりにも照準がブレブレすぎるので、残念ながらスナイパーの才能はないようだ。
そこら中に撃ちまくったあと、ついに足元が滑り、尻もちをついた。
『痛てて……』
痛覚によってHPが尽きたのか、そのまま硬くて冷たい床に寝込んでしまった。
目も当てられない。そう思った俺はルカちゃんを抱えて、彼女の部屋のベッドまで運んだ。
『うわぁ……』
部屋の中にあったおもちゃ箱が倒れて散乱していた。彼女の部屋には何回か入ったことはあるが、普段はここまで散らかってはいない。おそらく先ほどルカちゃんが酔っ払いながら、おもちゃを取り出したせいで、ぐちゃぐちゃになってしまったのだろう。
ちなみにおもちゃ銃の他にも槍や棍棒などがある。もちろん全部贋作なので、普通に使っても武器にはなり得ない。
そして、最も気になったのは下着の入った引き出しだ。普段は仕舞われているはずの引き出しの中身が丸見えだ。
まるで泥棒に物色されたような有り様だったが、別に下着大好きな変態こそ泥が現れたわけではなく、これはさっきマーリンがみんなの下着をパクった時に荒らされた跡だろう。それでも余裕で大問題だが。
こんな現場を、保護者とはいえ異性である俺に見られようものなら、間違いなく発狂するだろうな。黒歴史確定ガチャ。
『他の奴は全員まともに動けんし、俺が仕舞うしかないか……』
俺はできる限り色や柄を見ずに、ルカちゃんの下着をタンスの中にしまった。
ごめんねルカちゃん。決して下心で下着を触ってるわけじゃないんだ。君の名誉を守るためなんだ。あとでマーリンのバカにはキツく言っておくからね。
下着をあるべき所に戻すと、ついでにおもちゃ箱も全て片付けた。まるで手のかかる子供の面倒を見ているような気分だった。
まあ、ルカちゃんも年齢的には子供ではあるが、比較的精神年齢は高めだったので、幼いような印象はなかった。だからこそ、このように部屋のおもちゃ箱を片付けるという行為そのものが新鮮だったし、そもそもおもちゃ箱があったこと自体意外だった。
『ふぅ、こんなもんか』
綺麗に片付いた部屋を見て達成感を覚えつつ、早急に且つ静粛にその場をあとにした。お休みと言葉を残して。
『さて、次は……』
次はカヴァちゃんだ。さっきはテレビゲームをしていたが、画面つけっぱなしで眠っている。どうやら寝落ちしてしまったようだ。
『あらら……まあゲームで寝落ちってよくあるよな』
ルカちゃんと同じように、俺はカヴァちゃんを抱えて、彼女の部屋まで運んだ。で、その部屋の中だが、やはり下着が散乱していたが、それ以上に驚いたのは――
パーシヴァルの写真が部屋の至るところに貼られていたことだ。全部見たわけじゃないが、普通に正面から撮ったものもあれば、後ろからこっそり撮ってるものから、下着が写ってる際どいものまで多種多様に取り揃えてあった。怖い。
『見なかったことにしよう』
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