第584話『八回分の質問権』
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魂だけの存在となった一万年後のシャイは、幾数多の世界を渡り、今はヴァルハラの霊魂室に入り浸っている。
魂はそれぞれビンの中に保管され、そこから出ることはできない。
他の魂も学校の一つのクラス分の数だけあるが、魂となった存在は基本的に言葉を発する事はできないので、魂同士で会話することはままならない。
しかも魂には顔がないので、今どういう表情をしているのかさえ分からない。ジェスチャーしようにも手足がなく、ただの炎のような形状なので何かを伝えるという行為も封印されている。
そこら中に魂はいるのに、会話ができないのならいないも同然、実質孤独である。
一万年後のシャイは元々死人でしかない。現世に存在してること自体が理に反している。
肉体から離れた魂は、本来は冥界に行くはずだが、訳あってヴァルハラに流れつく場合もある。自力では冥界に行けないし、そもそもどこにあるのかも分からない。だからといって現世で彷徨い続ければ悪霊と化してしまう。
だが、ここ霊魂室ならば、悪霊にならない結界が施されている。だから魂はここにいる。というか、ここにしか存在できない。
故に、
――暇だ。
そう思ってしまう程には、この空間に退屈を感じてしまっている。
仕方がない、本当に仕方がないのだ。
シャイ自身もそう割り切っている。
だが、それでもこの退屈を解消したい欲は健在だ。解消できなければ永遠に甘い夢を想うまま苦しむことになるだろう。
――ただ一つのイベントを除いて。
ガチャッ。
扉が開く音がした。入口から誰かが入ってきた。
ここへの出入りは特に禁じられてはいないが、基本的に二人しか入ってこない。その一人はヒルド、もう一人は――
『はぁ……はぁ……』
女神ノルンだ。
今は苦しそうに息を切らしながら、壁に背を預けている。
全力疾走したわけでもあるまいし、なぜこんなに息が上がっているのか。声無き魂たちは困惑していた。
『………………』
四方からの視線を集めるノルンだが、本人は気にせず息を整えている。
『はぁ……はぁ……』
(辛そうだな。一体何があったんだ?)
シャイがそう思ったその時、ノルンは魂となったシャイの方に視線を送った。
『衰えているんですわ……』
シャイの心を読んだノルンがそう答えると、シャイは内心驚愕したが、興が乗ったのか次の質問をぶつけた。
(なんと、私の心が読めているのか?)
『ええ……私はこの世の全ての人間の心を読むことができます……。それは魂であれど例外ではありません……』
まあ、だんだん心を読める範囲が狭くなっているんですけどね、と最後に付け加えた。
(なるほど、言葉を発せずとも会話ができるということか。これは魂となった私達にはかなり大きな希望ではないか)
それなら他の魂もノルン様と話をしたいのではないか、と聞こうとすると、その前に女神ノルンが口を開いた。
『いいえ……この中で私に話しかけているのは貴女だけです…………なので気が済むまで私との会話を楽しめます………………』
(そうか、だが無理はするなノルン様。確かにこうして話せるのは嬉しいが、貴女を苦しませてまですることじゃない)
『いいえ…………話して下さい。その方が気が紛れますから………………』
そういうことなら、とシャイは会話の続きを再開することにした。
(わ、わかった。じゃあいくつか質問してもいいか?)
『構いませんが、時間が許す限りです…………。私の計算では縺ゅ→莠泌屓縺碁剞逡後〒縺』
(?)
『すみません。エラーです。復元しましたのでご心配なく。未来予測を使用した結果、私への質問はあと五回行えます』
(なるほど、あと五回……さっきの質問は含まれるか? あ、これも質問に含まれるか?)
『いいえ、どちらも含まれません。先程の質問と合わせて八回。つまり、貴女は今から私に四回目の質問ができるということです』
(理解した。じゃあ早速質問をしよう)
『はい、どうぞ』
――四回目の問い。
(じゃあまずは……今ノルン様が履いてるパンツは何色だ?)
『なっ……一体何聞いてるんですの!? 貴重な質問権をそんなことに使うなですわよ!?』
(いや、別に答えなくなければそれでいい。ただ答えられる境界線を知りたかっただけだ。ちなみに私が殺される直前に履いてたパンツの色は紫だ)
『てめえの下着の色なんかどうでもいいですわよ!』
(私の下着の色教えたんだから、ノルン様のも教えてほしい)
『えぇ……もう仕方ないですね……えっと』
女神ノルンはスカートの裾をへその位置まで上げて、下着の色を確認しようとする。
(ピンクだな)
この時点で多方面から下着の色を視認できる状態だった。そんな簡単な事にも気づかなかった女神ノルンは頬を染めながら即刻スカートを元の位置に戻し、さらに力強く押さえた。
『私が言う前に見るんじゃねえですわ!』
ガルルルルルルルと獣のように威嚇する女神ノルン。
(次の質問にいっていいか?)
『私の下着への感想はねえんですか!?』
自分で嫌がる素振りをしておきながら、下着への感想を求める女神ノルン。
(いや、別に興味ない。さっきも言ったが質問してもいい境界線を知りたかっただけだ。私はパンツになど微塵も興味がない)
『おいふざけんな! ただ私が恥ずかしいだけじゃねえか!』
(それもそうか、ごめんなさい。お詫びにこれまで私が履いてた下着の色を公表します。まずは白――)
『やめろ、長くなるだろ!』
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