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第51話『楽しいキャンプ』

※改稿しました(2022/07/23)。


お待たせしました。

第51話の執筆が完了しましたので、宜しくお願い致します。

※文字数かなり多めです。

 現在俺達先行組は一時の休憩を終え、火の国への旅を再開した。それからしばらく経って――


『あれ? もう夜になってる』


 つい先ほどまで空は透き通るような青を演出していたのに、今は全てが闇に染まっている。まるで演劇での場面(シーン)が変わったかのようだ。


『ああ、この荒野は何故か時間の経過だけは早くてね、すぐに暗くなってしまうんだ』


 なるほど、この荒野は生活リズムブレイカーなんだな。誰も人が寄り付かないわけだ。


『ああ、それでキャンプする必要があったんですね』


『それもあるけど……やっぱり、キャンプしたいじゃない? したくない?』


 アミさんは少し照れ気味で頬を掻いた。なるほど、個人的にキャンプしたかったんだな。


『キャンプか……俺は全然経験無いですが、興味は少しあります』


 実はアニメでキャンプしてるシーンを見てから、少し憧れを抱いていた。


『そうだろう! 分かってるなあ!』


 アミさんは、めっちゃ嬉しそうにハンドルを回した。このお姉さん、少年心が分かってるな。


 ――さて、もうここまで来たら、そろそろ誰かこの()()()に気づくだろう。


『お兄ちゃんも()()()()?』


 さすがブロンズちゃん、彼女もこの異変に気づいたようだ。


『え? どうかしたんですかぁ?』


『あぁブロンズちゃんも気づいていたんだね、私もおかしいと思うね。だって……』


 バカ猪女以外はこの異常事態に気づかない。


 話を聞く限りこの荒野にもモンスターは出現するはず。しかし、俺達はさっきから()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。確かにこの荒野は広いし、確率的に出会わなかっただけとか、運が良かっただけ、と片付けることもできるのだが、それだけではない。


『しかも、それだけじゃなくて、すぐ先に()()()()()


『誰か……?』


『ふぇぇ!? 誰かいるんですかぁ!?』


『私の眼は夜の闇でさえ、見通す力を持ってるんだ』


 アミさんは、一旦ク・ルーマを止め運転席から降りて、闇の中にいる()()に、こう言い放った。


『貴様は何者だ!』


 ク・ルーマの中で見守る俺を含めた2人と1匹。その中でもブロンズちゃんは闇の中の誰かの心を読もうとした。するとブロンズちゃんは唖然としてこう言った。


『あの人……ただの迷子よ……』


『え? 迷子?』


『ええ、心の中でここはどこだとか、そこにいる人達に道を聞こう、とかそんなのばかり』


『なるほど、少なくとも敵意はないってことか……』


 ブロンズちゃんはドアを開けて、アミさんにあの人は迷子だってことを説明した。


『え? 迷子……? そうなんだ、教えてくれてありがとう』


 そして闇の中から出てきたのは、ボロボロで返り血が大量についている鉄の甲冑を着た、緑髪の美少女だった。やけにモンスターが少ないと思ってたけど、この人がモンスターを狩りまくってたからか……。


 ん? この人よく見たら、あおいちゃんとベンリ街へ行く道中で出会った……確か……バレスさんだったかな。なぜこんなところに?


『あの~すいません、わ、私は、ぼ、冒険者のバレスと申します。見ての通り、わ、私迷子です、超迷子です。道を教えて頂けないでしょうか?』


 血まみれの剣を杖代わりにして立っているバレスさんは、まるで戦場帰りの戦士のような格好で、そう聞いてきた。


『あなた……もしかして……バレス!?』


 どうやらアミさんはバレスさんと知り合いのようで、まさかの再会に涙を流した。


『え……まさか……アミさん!?』


 かつての知り合い……いや友人か、2人は感動の再会を果たし、思い出話を咲かせる前に互いに抱擁した。


 こういう展開は漫画やアニメでよく見る光景だ。俺もある美少女と恋愛してから、しばらく経った後に再開した時は泣けたなぁ……俺もあの2人のように触れ合いたかったけど、その相手は画面の中から出てこれないからな……あ、これ、何年か前にやったギャルゲーを再びプレイした時の話です。はい。


『あ、そうだったのね……』


 ブロンズちゃんはまた心を読み、悲しそうな顔で手で口を覆っている。きっとあの2人は今、まさに頭の中で感動的なエピソードを思い浮かべて、それをブロンズちゃんが心を読んで一緒に感動しているに違いない。


『お兄ちゃん、やっぱり可哀想なぼっちなのね!』


 ブロンズちゃんは、あちらの2人ではなく俺の方を向いて可哀想なものを見る目で俺を見た。


『いや俺の心を読んでたのかい! うわあああああああああ! やめろおおおおおおおおお! 俺の心を読むなあああああああああ!』


『よしよし、2次元じゃなくて3次元の私が相手してあげるから……』


 ブロンズちゃんはそう言って、哀れにも優しく俺の頭を撫でてくれた。しかし――


『お兄ちゃんを慰めたあと、調教してあんなことやこんなことを……フヒヒヒ……』


 不敵な笑みを見せるブロンズちゃん。俺は悪寒を感じた。


『ようし、逃げるか』


 ブロンズちゃんは逃げようとする俺の肩を掴み、悪い顔をしながらこう言った。


『逃げられるとでも思ってるの?』


 俺は戦慄した。もし逃げたら地の果てまであなたを追いかけてやると、そう言われているような気がしたからだ。怖い。


『もし、お兄ちゃんが逃げたとしても……ね、私が、お兄ちゃんに作った料理の中に、ある魔法をかけたの……なんだか分かる?』


『な、なんだ……?』


『ふふふ……それはね……位置を特定する魔法よ』


『位置を特定する……魔法……?』


『位置を特定する魔法をかけた人は、この魔法をかけられた人の位置を常に特定することができるの。束縛が激しい人がよく使う魔法よ。つまり世界中のどこにいても、確実にお兄ちゃんを追いかけられるってこ・と・よ』


 ほうほう、つまり俺は……もう逃げられない! ってことか! うわあああああああああ!


『オワッタ……』


『もう一生離さないから……』


 舌舐めずりする悪い顔のブロンズちゃん。逃げられないと知り、逃げることを諦めた俺。そして存在を忘れられた可哀想なバカ猪女ことみどりちゃんは、状況が分からずぽけーっとしている。そんな空気の中アミさんが、こっちに戻ってきてこう言った。


『いや~ごめんよ~皆~、ちょっとかつての知り合いと会ってさ、よかったら一緒にキャンプしないかって誘われたんだけど、大丈夫かい?』


 誘われたというか助けを懇願されたって方が正しいだろ。まあバレスさんは悪い人では無さそうだからいいけどさ。


『俺は大丈夫です』


『私も大丈夫よ』


『私も異議はないですぅ』


『うん、ありがとう。じゃあみんな、今日はこの辺りでキャンプしよう! 肉いっぱい持ってきたよ~』


『おお!』


 俺達はウキウキしながらク・ルーマから降りて、キャンプの準備をしようとしたが、バレスさんがいつの間にキャンプの準備を全て終わらせてくれたようだ。なんという手際の良さ、ありがたい。


 テントはバレスさんの自前テント1張りと、アミさんが持ってきたテント2張り、1張りにはそれぞれ2人ずつ入る。つまり、この中で唯一の男である俺は1張りのテントで、女性達は残りのテント2張りのどれかの中で、2人ずつ寝れるということだ。急に人数増えたから誰かが野宿するんじゃないかと思っていたがその心配は無さそうだ。


『おお、肉めっちゃ旨そう!』


 楽しいバーベキュータイムは今始まった。さあ俺もいよいよキャンプデビューだ! わくわくすっぞ!


『そうだろう! そうだろう! もっと食えい! もっと飲めい!』


 アミさんは皆とキャンプ出来て嬉しいのか、テンションが酔っ払ったおじさん並である。


『ってあれ? 君この前、迷いの森付近で会わなかったかい?』


 バレスさんは、俺を見て、少し前に会っていたことに今頃気づいたようだ。


『はい、会いましたよ。お久し振りです』


『おお! まさかまた再会するとは……今日の私は再会の縁が強いのかな……おっと、そういえばあの時は聞かなかったけど、名前なんて言うんだい?』


『ダストと言います』


『ダスト君か、よろしくね! そういえばあの時ダスト君と一緒にいた青い髪の美少女はいないのかい?』


 あおいちゃんの事か。


『ああ、今は別行動をしてまして……』


『そうなのかい、残念だなぁ、あの女の子私のかつての知り合いにどこか似てて、めっちゃ可愛いかったから、また会いたかったんだけどなぁ』


 かつての知り合いって赤髪ちゃんの事かな?


『また会えますよ、火の国で合流する予定なんで』


『おお! 火の国か! ちょうど私も火の国へ行こうかと思ってたからちょうどいい! 君達についていくよ』


『はい! よろしくお願いします! ところでこの辺のモンスターが、全然居なかったんですが、バレスさんが狩り尽くしたんですか?』


『ああ、そうだよ、もう何日も迷ってしまってね……食料に困ってたから、モンスターを狩らせてもらったよ……そしたら、もうモンスターがいなくなってしまってね……せっかくここら辺のモンスターは、美味しいのばかりだったのに……』


 バレスさんは、バカ猪女の方をチラッと見た。


『何で、私の方を見るんですかぁ!』


『べ、別に、き、君を食べたいなんて、お、思ってないぞ!』


 動揺してる、明らかに最初は食材だと思ったんだろうな。


『ふぇぇ……私を食べないで下さぁい、信じられないかもしれないですけど、私、美少女なんですよ? 今は猪だけど……』


『分かってるよ、自称美少女のみどりさん』


『自称じゃないですぅぅ! 私の住んでる街の男の人達は、みんな私にメロメロだったんですよぉ!』


『ホントに?』


『信じてくださぁい!』


 バカ猪女は涙目で地団駄を踏んだ。小さい姿のままなので、ドスンドスンではなく、ちょこんちょこんという音がしただけだった。


『か、可愛いな、みどりちゃん』


 バレスさんは、バカ猪女をマスコットとして気に入ったようだ。


『そうでしょう! 私、美少女なんですから当然ですぅ!』


 今、美少女じゃなくて猪だろうが。何ドヤ顔してんだこいつ。


『ああ、このままマスコットにして、一生、私の部屋に吊るしたい……』


 バレスさんは笑顔を保ったままそう言った。怖い。


『吊るさないでくださぁい!』


 ひぇぇ……バレスさんって、結構発想がサイコパスなんだなぁ。


――その後もキャンプは、相当な盛り上がりを見せ、普段は陰キャの俺もまるで陽キャのようにテンションが上がった。


 アミさんもバレスさんも酒を飲んだわけでもないのにまるで酔っ払ったように肩を組んでバカみたいに踊っていた。めっちゃ楽しそう。


 ブロンズちゃんはバカ猪女をぬいぐるみのように抱いて、俺の隣にちょこんと座っている。おいめっちゃ可愛いなおい。やっぱこうして見ると、ブロンズちゃんも年相応の女の子なんだなぁって思う。


『お兄ちゃん? 可愛いって思ってくれるのは嬉しいんだけど、私だって立派なレディーなのよ?』


『分かってるよブロンズちゃん』


 俺はブロンズちゃんの頭をポンポンと叩いた。するとブロンズちゃんは不満そうな顔で俺を睨んできた。


『分かってないでしょ、このぼっち、鈍感男、へたれ。私の部屋で一生檻の中に閉じ込めてあげようか?』


 ブロンズちゃんは、ふてくされたと思ったら徐々に悪い顔になって、最後にとんでもない発言をした。


 ここにもサイコパスがいたあ!

第51話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、18日か19日に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

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