第583話『九つの選択肢』
大変長らくお待たせしました。
更新頻度が低くて本当にすみません。
第583話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
オーガスト・ディーンの喜びそうな事と言えば、
① パンツを渡す
② パンツを渡す
③ パンツを渡す
④ パンツを渡す
⑤ パンツを渡す
⑥ パンツを渡す
⑦ パンツを渡す
⑧ パンツを渡す
⑨ パンツを渡す
やはりパンツ。パンツは全てを解決する。
――って、んなわけあるかあ!!!
いや、あの変態のことだからそれで機嫌治るかもしれんが、まず私のパンツをこんな変態教師に渡したくない!
それにこんな人だかりでパンツの受け渡しなんてあったら大事になるわ!!
というか私のパンツを見ていいのはルカちゃんだけだ!!!
ついでにルカちゃんのパンツを見ていいのは私だけだ!!!!
人形だった頃にもう既に何億回も見てるけどな!!!!!
パンツで機嫌を治そうなんて一瞬でも考えた自分に腹が立つ。周りにパンツ好きの変態が多すぎるんだよ! ルカちゃんのような純情な子もいるんだぞ! 少しは反省しろこの変態共が!
こんなの却下だ却下!
となると……どうするか。
他にこいつの喜びそうな事は……そうだ、女に飢えていたから、私がこいつとデートしてやるのはどうだろうか。本当はルカちゃんとデートしたかったが、背に腹は代えられない。
そうだ、そうしよう。
『オーガスト・ディーン。次の土曜空いてるか?』
『空いてるけど……え、彼女いない俺へ追い討ちするの?』
『違う違う、お詫びに私とデートしてやるって言ってるんだ』
『デート……だと……?』
オーガスト・ディーンに動揺の表情が浮かび上がった。
元々人形だったとはいえ、今の私の容姿は美少女だ。私とのデートの誘いを断る男などこの世におらぬ。
そう思っていたのだが、
『いやいや何言ってんだよ。そんなの無理に決まってるだろ?』
突然のデートの誘いに動揺してるわけでも強がってるわけでもない。ただ、ありのまま返答した様子だ。
想定外のリアクションに私は思わず『は?』と疑問のリアクションを漏らしてしまった。
『私という美少女とのデートを断るのか?』
具体的な疑問を口にしたところで、オーガスト・ディーンはこう返答した。
『そういう問題じゃない。教師という立場があるんだ。この学園は変わってるけど、生徒とデートしたなんて知られたらさすがに処分されるから勘弁してくれ』
あくまで立場上の問題でデートができないと語る我が担任。
これには私も納得するしかなかった。私だって倫理観というものがあるし、ルカちゃんが悲しむような事はしたくない。
デートが無理なら……。
『うむ、分かった。それなら次の休日、私がお前の言うことをなんでも聞く権利ならどうだ? もちろん私ができる範囲でだが』
生徒の私ではなく、同居人の私としてそう持ちかけた。
教師としての立場を完全に忘れられるわけではないが、同居人が休日中に何か手伝うという形ならば、特に規律に触れることはないだろう。
『なんでも言うこと聞く権利か……それならいいか』
オーガスト・ディーンも私の意図を汲んでくれたのか、承諾してくれた。
『そういうことなら次の休日までに考えておくから、待っててくれ。じゃあな』
どこかくたびれた男は、そう言って職員室へ足を運んだ。
――よし、計画通り。
いや、当初の計画とはずいぶん異なるが道のりが違うだけで目的地まではたどり着けるはずだ。
理想を思い浮かべる私は思わずニヤリと笑みを浮かべた。鏡がないので分からないが、今の私の顔は端から見ればずいぶんと悪人面になってるかもしれない。
――そして、次の休日。
約束を覚えていたオーガスト・ディーンは、朝ご飯を頂いた私を部屋に呼び出し、例の話について会議を行った。
『え、一緒にヴァルハラでレベル上げだと?』
全く想定外の提案だ。てっきり、私を一日メイド服着させて奉仕してもらうとか、一緒にお風呂に入るとか、ルカちゃんのパンツについて話し合うとか、そういうのを想定していた。もし最後のを願ったら心の底から軽蔑するがな。
『実は俺最近サボり気味だったからさ、修行の頻度上げないとなんだよね』
『それで、なぜ私と一緒に行く必要があるんだ?』
『俺がサボらないように見張り役を頼みたいんだ。もし俺がサボるようならヒルドさんかファースト・ドライヴにチクっていいから』
『そういうことか……でもそれならやはり私である必要はないのでは? それこそ見張り役はヒルドかファースト・ドライヴに頼めばいいだろう』
『二人も修行で忙しいから、俺を四六時中見張らせるわけにいかないんだよね。だからせいぜい見張り役から報告を受けるくらいしか頼めない』
多忙故に頼める範囲は狭い。だから一日手を貸せる私が適任というわけか。
『なるほど、よく分かった。そういうことなら、その役割私が請け負おう』
『ありがとう、助かるよ』
『だけど、何でも言うこと聞く権利をこれに使って大丈夫なのか? もっと欲望のままに願いを言っていいのだぞ? ああでもルカちゃんを襲う手伝いとかはナシだからな!』
『ルカちゃんを襲うだなんて、そんなことしないよ』
オーガスト・ディーンは呆れたような表情でそう言った。どうやらこの変態教師からルカちゃんへの邪な思いは皆無のようだ。
『うむ、それならいい』
『何でちょっと偉そうなんだよ』
『偉そうも何も、私は元々こういう口調だ。気にするな』
『確かにそうだけど……まあ学校では一応TPO弁えてるし、別にいいか』
『そういうことだ。ではお前のレベル上げとやらを手伝おうじゃないか』
『うん、頼むよ』
こうして私達はヴァルハラへと赴き、予定通りオーガスト・ディーンの修行を見張るのだった。
そして結果だが、オーガスト・ディーンは思ったよりも本気で取り組んでおり、今朝とは比べ物にならない程レベルが上がっていた。
ついでに私のレベルも上がった。もちろんルカちゃんやオーガスト・ディーン程ではないが、以前潜入したロンドディウム王国のアンドリューの組織の“あの女”を倒せるかもしれないくらいには強くなったと思う。
『なあ、オーガスト・ディーン』
『なんだ?』
『私も明日から修行を続けようと思う。私も強くなりたい』
私の瞳に決意の色が宿らせる。その覚悟を汲んでくれたのか、オーガスト・ディーンは表情を明るいものに変えてから、こう言った。
『ああ、一緒に強くなろう!』
私達は互いに拳を合わせた。
守りたい者の為に――
私は、いや私も戦う事を選んだ。
――まだかなり先の話ではあるが、一万年後ゼウスに攻め込まれた魔王城で私は今までみんなに隠していた本来の力を解放する。
第583話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




