表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
595/725

第579話『クズのご帰還』

お待たせしました。

第579話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


 ――正義教団。


 それは正義を愛する集団。


 それは神に代わり、正義の鉄槌を下す集団。


 それは何時如何なる時も悪を滅ぼす集団。


 正義の為なら――何であろうと殲滅する。


 たとえ、それで憎悪を生もうと、悲しみの連鎖を繰り返そうとも――


 彼らは雑草を抜くように何度でも何度でも悪を破壊する。


 それが正義教団だ。


 だが、正義の在り方は個人によって異なる。


 各々が独自の正義を掲げているせいで、言い争いが絶えず、国が総力をあげても結束を示すことは叶わない。


 特に王の弟であるルキウス・ペンドラゴン。彼はこの正義教団で最も人を思いやる心を持っている。


 他の横暴な幹部とは、絶望的に価値観が噛み合わない。



 《正義教団元幹部トリスタン視点》


 ――まあ、俺はただ人の苦しむ姿に快楽を覚えただけで、ルキウスの言う正義の心なんて持ち合わせてないんだがな。


 だから、ルシウス王の方針は俺にとってマジで都合の良いものだった。


 だって、正義だと言い張るだけで、何でも正義になるんだからな!


 俺が女子供に暴力振るっても正義の為にといえば許されるもんなあ!


 だから、少しでも挨拶できなかった奴を“挨拶できなかった罪”で殴ったり、泣く奴に“泣く奴は弱いから罪”で蹴り倒したりな。


 いやぁ、マジで快楽だったわ!


 最高だぜ!


 ――だが、そんな最高の日々も、くそったれな侵入者共のせいでぶっ壊れちまった。


 ダストとか言う奴に負けてから、俺はネヴィア王妃に連れ去られて――


 俺は()()()()()()()()()


 その時はほとんど理性なんてなかったが、俺が何をしたのかははっきりと記憶に残ってる。


 最初は化物にされて早々に地下室のモンスター用の牢に閉じ込められちまったが、ネヴィア王妃に“魔王城を襲いに行け”とか命令されて、俺は言われるがままに勝手に身体が動いた。


 それから全速力で一度も行ったことがない魔王城まで駆けつけたが、早々にあのマゼンダにぶった斬られちまった。


 それで気がついたら――


 俺は、一万年前のロンドディウム学園高等部の生徒になっていた。いや、というより転生前に戻ったというべきだろう。


()()()()()


 机に突っ伏してた俺を呼ぶ声が聞こえる。


『あぁ……()()()()()か。おはようさん』


『何がおはようさんだよ。次、移動教室だぞ』


『そうか、じゃあ女子更衣室で女襲いに行こうぜ』


『はぁ? お前何言ってんだよ。んなことしたら退学じゃ済まねえぞ? 冗談だとしても笑えねえし』


 俺の発言に引くようにガウェインは言った。


『あぁ……そうか。そうだったわ。それが常識だったわ』


 改めて()()()()()()()()()()()()()()()()()


『いまさら常識って……もしかしてお前、変な夢でも見たのか?』


『変な夢……そういえば俺が、正義……正義……なに王国だっけ?』


 ――正義教団だ。


『あぁそうだ。正義教団という国で女子供を襲ってやりたい放題してた夢を見てな……』


 あれ、今の何だ?


『めちゃくちゃな夢だな……』


『ああ、本当にやべえ世界だった』


『お前そんな価値観で女子に近づいたらマジで人生終わるところだったな』


 笑い事でもなく、本当に洒落にならないとお互いに引くように話した。


『ああ……』


 だけど、何だこの感情は?


 今までに湧いたこともない邪悪な感情だ。


 俺の身に何が起きている?


 まだ夢の中に意識を置いてきてるのか?


 ……。


 まあ、そうだよな。まだ寝ぼけてんだよな俺。


 それから俺はいつも通りに授業を受け、放課後も遊んだり、勉強したりと、本当に何でもないただの平和な日常を過ごした。


 ――はずなのに、何かがおかしかった。


 女子供に手を出してはいけない。


 そんなキラキラした価値観に縛られ、俺の中の憎悪は膨らむばかり。


 それが当たり前だったはずなのに、まるで大好物の菓子を取られたような、牢獄に収監されたような気分だ。


『うぅ……女ァ……子供ォ……!』


 俺は頭を抱えた。


 既に一人家の中なのは幸いと言うべきか、近くに女か子供が居ようものなら、俺は躊躇いなく暴力に走るだろう。


『殴らせろ……蹴らせろ……泣き顔を見せろ……違う……やめろ……やめろ……!』


 悪魔のような感情が溢れる。まだ善の立場にある俺を支配する。


『助けてくれ……やめてくれ……女をよこせ……!』


 ――染まる。


『ああ……ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!』


 変わっていく。俺の中で積み重ねた記憶(もの)が、別の何かに変わっていく。


 俺の名前はトリスタン。


 正義教団の幹部であり、欲望という名の正義を執行するもの!!!


『ふ、ふはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!』


 俺は蘇った。もちろん元の身体ではないが、それなりに丈夫な身体だ。毎日鍛えれば元の俺とほとんど大差ない力を得られるだろう。


 俺は女子供(えもの)を物色するために窓から外を覗いた。


『うほっ、早速いい女発見〜!』


 金髪ロングの美女が偶然家の前を通り過ぎた。


『よし』


 変装して家を出た俺は、美女の後をつけた。タイミングを見計らって路地裏へ連れ込むつもりだ。


『はぁ……はぁ……』


 早く、早くその豊満な身体を触れさせてくれ。めちゃくちゃにして、その泣き顔を見せてくれ……!


 人が少なくなってきた。いい感じの路地裏も近くなってきた。


 よし、今だ――


 俺はまずその女の口元を塞ごうとした。しかし、そうなる前に俺は手首を女に掴まれた。


『ゑ?』 


 俺はその手を振りほどけないまま、身体ごと背負わさせるように回転し、最終的には硬いコンクリートに叩きつけられた。


『ぐはっ!』


 何が起きたのか理解できなかった。痛みを堪えながら女の方を見上げると、そこには鬼の形相で睨みつける何かが映っていた。いや、人外ではない。ちゃんと人ではある。美女である。だがそれ以前に歴戦をくぐり抜けた強者の姿だった。


 前世ではあるが、戦闘経験が豊富な俺だから分かる。


 ――こいつは強い。


『私はダイアナ・アーサー。あなたは?』


 ゴミを見るような冷たい表情で俺を見下しながら、そう聞いてきた。


『ト、トリスタン・ハーバード……』


『あなた私をそこの路地裏に連れ込む気だったでしょ?』


 その路地裏に親指を指しながらそう言った。


 正直に言えば殺される。そう思った俺は咄嗟に首を横に振って否定した。


『ふーん、しらを切るんだ?』


 そう言った直後、俺はさらなる(せいさい)を喰らい、気を失った。


 それから目を覚ますと、俺はかの有名な極悪組織“リベレーション”の一員となり、償いが終わるまで働かされるのであった。


 こうして俺の正義(よくぼう)は満たされないまま、真人間として更生されるのであった。

第579話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ