第577話『それでも、やるしかねえよな』
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その後もなかなか話題が尽きずにお喋りを続けていたが、夕焼けに黒を差すような空になったので、運転手の杉田さんに連絡して迎えに来てもらうこととなった。
運転手が到着すると、魔王は名残惜しそうな表情をしていたが、己の立場を理解しているようで、すぐに立ち上がり、玄関まで足を運んだ。
『じゃあね、あおいちゃん』
魔王はまるで清楚な美少女のような振る舞いで、一時のお別れを伝えた。
さすがにこの時代では皇帝陛下を務めているのもあって、佇まいが美しい。中身はあのうるせえジジイだけど。
『また……会えますか?』
あおいちゃんが不安そうな表情で聞くと、魔王は笑顔で親指を立てた。
はっきりと口にはせずとも、何が言いたいかは分かる。
あおいちゃんの表情はみるみる内に明るくなり、わずかに嬉し涙を流した。
美少女同士の絆……マジ尊い。中身は姉狂いの変態と隠し事大好き爺さんだけど。
中身……か。
『あおいちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんですが』
『なんでしょう?』
『前にあおいちゃんの職場の先輩のマゼンダさんがここに来たじゃないですか?』
『ええ、そうですね……』
あの時は、何がとは言わないが大変ハッスルしてて驚いたが、それ以上に驚愕したのはマゼンダさんが赤髪ちゃんにそっくりだったことだ。
『マゼンダさんに何か変化はありませんか?』
『特に、いつも通りですね……』
何を思い出したのか、あおいちゃんは頬を赤らめてそう答えた。
おいおい、今度は一体何をされたんだ?
『そっか、なら大丈夫です』
ということは、一万年後では赤髪ちゃんは死んでいない。
他にも、ヘラクレスことケイデス、ヒルドさんことケールさん。超絶美少女三姉妹は黄金、銀河、銅。バレス・テイラーことバレスさん等も未来ではまだ生きている。
しかし、今の虹皇帝陛下の人格は魔王そのものが混ざっている状態だ。未来のマーリンによって一万年後に死んでから派遣された。
つまり、一万年後で死んだ者は全員この時代に来るようになっていると言ってもいい。
ということは、まだこの時代の人格のままでいる本人達は未来では死んでいないということになるのだ。
逆に言えば、顔馴染みの全員が未来から来てしまった場合、それは魔王軍の全滅を意味する。
そうなれば、ゼウスを止められる者は誰もいない。俺が未来に帰る前に世界は滅びるだろう。
『くっ……!』
俺は自分で自分の頬を殴った。
『ダスト様!?』
俺の奇行にあおいちゃんは困惑した様子を見せた。
『ああ、ごめんなさい。なんでもないです』
なんでもないですわけがない。俺は何やってんだ……。
最近あの真相を知ってしまったからって、気が抜けて、急にサボリ気味になって……。
真相がなんだろうと、みんながピンチであることには変わりないだろ。
改めて気合を入れ直す必要があるみたいだ。
『あおいちゃん』
『何ですか?』
『俺、ちょっと修行してくる』
『え、でも今日は仕事でお疲れでは?』
『そうだけど、そうも言ってられない。それに俺最近サボリ気味だったし』
俺は転移魔法でヴァルハラへ行く準備をする。
『分かりました。行ってらっしゃいませ。でも無理はしないで下さいね』
あおいちゃんは、まるで子どもを心配する母親のような表情でそう言った。
『もちろんだ』
俺は転移魔法でヴァルハラに飛んでいった。
転移先は森の中だ。これまではいきなり城の中に現れても未来予測できるノルン様がいるから大丈夫だったのだが、最近ノルン様の調子は悪いそうで、未来予測が思ったように発動できない状態だとマーリンから聞いている。
いきなり城の中に転移すると驚かせてしまう可能性があるので、ほとんど人がいない森の中を転移先に選んだのだが――
『え?』
俺はそこに浮かぶ光景を見て唖然とした。
ウンディーネと森の管理者Fことエフちゃんが下着姿で踊っている最中だったのだ。
『――あ』
その二人は、まだ状況を理解しきれていないのか、表情が固まったままだ。
テンションがやや狂い気味のウンディーネはともかく、真面目な印象が強いエフちゃんが、こんな人気のない所とはいえ、こんな痴態を晒すとは考えにくい。
一体どういう経緯でこうなったのか聞きたいところだが、その前にエフちゃんの悲鳴を聞くところから始めなればなるまい。
そして、ようやく状況を理解した二人はそれぞれ違う反応をした。
まずエフちゃんは顔を真っ赤にして、上下の下着を覆いながら、
『きゃあーーーーーーーーー!!!!!!』
と、聞けば誰もが振り向くような悲鳴を上げた。だが、この広い森の中に俺達かモンスターしかいないので、誰かが駆けつけることはないだろう。
次にウンディーネだが、下着を隠す動作など一切せずに、目を光らせて俺に話しかけてきた。
『ダスト君久しぶり!!!!!』
そう言った後、その姿のまま俺を抱きしめてきた。
ヤバい、柔らかい胸部が俺の身体に押し付けられている。
それだけじゃない。こんな美女に抱きつかれたという事実だけで卒倒しそうだ。
グヘヘヘへ。
頭がピンク色に染まった時、頭上に銅色の大きなタライが降ってきた。
俺はそれに気づかず、脳内ピンクのまま意識を失った。
それから、例のごとくベッドの中でヒルドさんに抱きつかれ、顔色が悪いノルン様にこっぴどくキレられた後、経験値稼ぎという名の修行に励んだのであった。
久々の修行でかなり大変な思いをしたが、これでゼウスを倒せる可能性が少しでも上がる。
そうだ、ちょっと前の俺もそう思いながら修行してたじゃないか。
今は真相を知ってるから、あの時ほどの情熱はないが、それでも俺は進まなければならない。
ゴールの、さらにその先へ――
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