第50話『赤い憤怒』
遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
第50話の執筆が完了しましたので、宜しくお願い致します。
※2022/07/17改稿しました。
※文字数多めです。
一方、後続組は先行組を追うように迷いの森を抜け、緑の平地に突入して少し経った時に、突然怪しい男が立ち塞がった。
『おい! そこのク・ルーマ止まれ!』
まるで取り締まる警察官のような口調で、謎の男が赤髪ちゃんのク・ルーマの前に立ち塞がった。
無論、その男が警官などではないことは分かっているが、一旦仕方なくク・ルーマを止めることにした。
『何ですか?』
赤髪ちゃんは、運転席の窓を開けて、訝しむ目で男を見た。
『なあ、お姉さん達、可愛いな……俺といいことしない?』
魔王にも劣らない悪人面をしているその男は、飄々とした態度で、赤髪ちゃん達をナンパし始めた。
『お断りさせて頂きます』
赤髪ちゃんは即答で断った。そんなのに構ってる暇はない。たとえ暇だったとしても、付き合うつもりは無いと赤髪ちゃんはそう言った。
『そっか……じゃあ仕方ないね』
男はこのまま大人しく引き返してくれるはずなどなく、後ろの木々に隠れている仲間達を呼んで、赤髪ちゃん達を取り囲んだ。
赤髪ちゃんは、車内の3人に合図をし、一斉にク・ルーマから降りて各々武器を取り出した。
あおいちゃんだけは、ベンリ街の一件で顔を知られるわけにはいかないため、猫の仮面を被っている。
『な、なに!?』
男達は驚愕した。彼女達がまさか全員戦闘員で、武器を取って戦る気になっていたなんて思わなかったからだ。
彼女達を強敵認定した男は、他の仲間に即座に一旦後ろに下がるように指示して、ズボンのポケットからナイフを取り出した。最初に声をかけてきたこの男は意外にも戦闘能力はそれなりに高いようだ。――だが、それでも赤髪ちゃん達の敵ではないが。
『ちっ、お前ら! やっちまえ!』
いつの間にフォーメーションを変えた男達は、それぞれ武器を取り出し、赤髪ちゃん達に襲いかかった。
『やっぱり、そうなってしまいますか』
『お姉さま、こんな奴らさっさと片付けて、火の国へ向かいましょう』
『戦うなんて、久々だなー』
『私もだよ、緊張するなぁ……』
4人からすれば、この程度の男達など簡単に無双できる。この中で1番緊張しているシルバーちゃんでさえ、負ける未来が見えない。
『ボス!』
有象無象の1人がボスと呼ばれる男に騒々しく話しかけてきた。そのボスこそが最初に赤髪ちゃん達に声をかけてきた不埒者である。
『何だ!』
『あの女達……めっちゃ可愛くねえすか?』
男の部下は赤髪ちゃん達を見てそう感想を述べた。他の部下達も全員彼女達の美貌に心を奪われている。
『ああ、そうだろう? だから俺達がここで襲ってやろうと思ったんだ。それがどうかしたか?』
『か、可愛すぎて……攻撃できねえっすよ!』
『お、俺も、とても手を出せません!』
『もし、彼女達を傷つけたら、罪悪感で自害しそうっす!』
ゲームでいう魅了状態とはまさにこのこと。ボス以外の彼ら全員が、彼女達に手を出せないという状態になっている。
『はあ!? いいから動け! バカ野郎共!』
ボスは苛立ちながら、部下たちに早く命令通りに動くように促すも、部下たちは全く言うことを聞かない。
『あいつら、何やってるんだ? 早く攻撃してこいよー、せっかくアミっちがくれた、新しいハンマー使いたいんだからさー』
ゴールドちゃんは退屈そうに、重そうなハンマーを何回も素振りしている。
『あの金髪の女の子タイプっす!』
1人のその声が本人の耳に入ると、ゴールドちゃんは素振りを止め、恥ずかしさで顔を真っ赤にした。
『わ、私が……か、可愛い……?』
『おお! あの娘可愛いって言われてすごく照れてるぞ! すげえ可愛い!』
『なんて可愛いんだ!』
『や、やめろよ!』
ゴールドちゃんは、男達の怒涛の可愛い連呼にますます恥ずかしくなり、両手で顔を隠し、ハンマーを地面に落としてしまった。
『お姉ちゃん! しっかりして!』
シルバーちゃんは、戦闘どころじゃないゴールドちゃんの正気を取り戻すために身体を揺らし続ける。
『あの、銀髪の女の子も可愛いな~』
その声もシルバーちゃん本人の耳に入り、ゴールドちゃん同様に顔が赤くなり、両手で顔を隠して、持っていた銀色の弓を落としてしまった。
『もう、恥ずかしいよぉ!』
『うおおおおおおお! 可愛いいいいいいい!』
『おおおおおおおおおお!』
部下達は、まるでアイドルのライブでも見に来たかのような盛り上がりを見せた。
『ゴールドさん、シルバーさん、しっかりしてください!』
照れ屋な姉妹に、あおいちゃんは一喝を入れるも、2人はそれどころではない模様。
『あわわわわわわ』
いつまでも羞恥が止まらない。戦闘中なのにも関わらず、ここまで照れてしまうのは、強敵がいない故どこか気が抜けているからか、それとも緊張感より照れが上回ってしまうのか、それは彼女達のみぞ知る。
『あの2人、まだ照れてるぞ! なんて可愛いんだああああ!』
『ふえええ……』
ゴールドちゃんもシルバーちゃんも、その場でへたり込んでしまい、戦闘どころではなくなってしまった。
『くっ……お姉さま! こうなったら私達だけで蹴散らしましょう!』
『……カワイイカワイイカワイイ』
『お姉さま?』
『グヘヘヘ、お2人共~可愛いですね~』
赤髪ちゃんまでもが、男達と同様ゴールドちゃんとシルバーちゃんのあまりの可愛さに魅了されている。
『お姉さままで……』
『ったく仕方ねえな……じゃあ俺が、こいつらを軽く屠ってやんよ……。その後はお楽しみの時間だぜ?』
敵の中で唯一魅了状態になっていないボスは下衆な目でナイフを回し、やる気を表明している。
『ここは私が……』
あおいちゃんは一瞬で終らせるつもりでボスに刃を向けようとするが、その前に赤髪ちゃんが――
『あおい、下がっていて下さい』
赤髪ちゃんは剣を持ったまま、あおいちゃんよりも前に出た。
『お姉さま?』
赤髪ちゃんは、ボスの前まで歩き止まった。
『なんだあ? 降参するかあ?』
『……ミルナ』
『ああ?』
『その下衆な目で、私の可愛い子達を見るな!』
赤髪ちゃんはそう叫んで男達に威圧した。その姿はまるで縄張りを荒らされた猛獣。大切な人に手を出そうとした罪は大きい。
男の部下達は赤髪ちゃんに対する恐怖を本能で感じ、1人残らず戦意喪失した。
『ひ、ひぇぇぇ』
『こ、殺される!』
『に、逃げなきゃ!』
『ダメだ、体が動かねえよ!』
部下達は誰1人として動くことができなかった。それは魔法ではなく、恐怖で身体が膠着してしまったのだ。今この場では赤髪ちゃんこそが最強。それも男達と実力の差が天と地ほど離れている。
『ちっ……』
最初にナンパしてきた男も、心までは怯みはしないものの、膝をついたまま動く事ができなかった。そんな状態の男を赤髪ちゃんは見下ろした。
『分かりましたか、もう……2度と……』
赤髪ちゃんは謎の男の胸ぐらを掴んだ。
『私達の前に現れるな!』
赤髪ちゃんの威圧を含んだ、圧倒的強者の声が辺りの空気を支配する。その際に待ってたかのように突風が吹いた。まるで自然さえも彼女の味方をしているようだった。
そんな彼女に逆らう者は誰1人としていなかった。――ただ1人を除いて。
『ふっ……そりゃ無理だな』
さすがボスと呼ばれているだけある男は、赤髪ちゃんの威圧に耐え、拒否をした。
『なぜです?』
『俺達はな、お前と深い関わりがある盗賊団の一員なのさ』
『私と……?』
『ああ! お前の母親がいるからだ!』
『私の母……』
赤髪ちゃんは前にブロンズちゃんが、迷いの森で下衆な輩に襲われた後の事を思い浮かべた。その時に赤髪ちゃんに不意打ちをしようとしたが、ダストが赤髪ちゃんを庇い代わりにダストが傷ついてしまった事があった。その不意打ちをしようとした、卑劣で最低な男が、俺らのアジトに赤髪ちゃんの母親がいると言っていた。
『そうですか……貴方達……あの卑劣な男の仲間か!』
『卑劣な男?』
『とぼけるな! 前に、この近くの迷いの森で私に不意打ちしようとしたやつだ!』
『ああ、イーブル様の事だな』
『イーブル……!』
ああ、あの男は確かそんな名前だった。かつて私と同じ正義教団の軍隊に所属していたが、不祥事ばかり起こしていたので、正義教団から死刑宣告を受けたが、死刑にされる前に親友であるバレスに濡れ衣を着せて、正義教団から抜け出した、最低で卑劣な男だ。
『私はあの男を許さない! どこにいるイーブルは!』
『ククク……イーブル様は言ってたぜ? あの時バレスに罪を着せて、あの正義教団という巨大都市から去った時の、バレスの絶望に歪んだあの顔が……最高に快感だってなあ!』
『黙れええええええ!』
赤髪ちゃんは、怒りを抑えきれず、胸ぐらを掴まれていた男をそのまま地面に叩きつけた。
『ぐおっ……』
男は血を吐いて、そのまま気を失った。
これにて下衆な男集団は完全に戦意を失った。
『はぁ……はぁ……』
『お姉さま……』
あおいちゃん達は、赤髪ちゃんを心配そうに見つめていた。
『ごめんなさい、待たせてしまいましたね』
『赤髪ちゃん……』
『では、行きましょうか』
赤髪ちゃんが偽りの笑顔でそう言うと、みんな、何事も無かったこのようにク・ルーマに乗り、死屍累々となった男達を置いて、火の国へ向かった。
『赤髪ちゃん、大丈夫?』
『大丈夫ですよ』
――しかし、ハンドルを握ったその手は、わずかに震えていた。
第50話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、16日か17日に投稿予定です。
やはり体調が優れないので、もしかしたらまた投稿が遅くなってしまう可能性があります。
せっかくの50話目なのに、暗い後書きですみません……。
自分は、小説に関しては、本当にド素人ですが、今後も、楽しみにして下さっている方に、面白く、楽しめるような小説を執筆していきたいと思います。
宜しくお願い致します。




