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第570話『親友への罪悪感』

お待たせしました。

第570話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


 《橋本ルカ視点》


 私はカレンちゃんを助けられなかった。もう少し速く走れていたら助けられたかもしれないのに。


 ディーンさんやノルン様みたいに頭が良ければ、もっと早くたどり着いたかもしれないのに。


 いや、そもそも私がカレンちゃんに遠慮せずに話せていたら、こんなことにはならなかった。


 私のせいだ。


 誰よりも付き合いの長い親友なのに、カレンちゃんの気持ちを汲み取れずに、こんなことになってしまった。


 私は最低だ。


 カレンちゃんの親友失格だ。


 これからカレンちゃんのいない人生を歩むことになる。これは私への罰だ。


 カレンちゃんに寂しい思いをさせた大きな罪を背負っていくんだ。


『……カレンちゃん』


 もはや布と綿の塊でしかない親友を抱えながら、あおいさんの傘の中に入る。


 私達は無言のまま、港へ向かった。


 せめてカレンちゃんを持って帰らなきゃ。たとえ原型がボロボロでも親友であることには変わりない。


 港へ向かう最中、心配そうな表情を浮かべたもう一人の私とファースト・ドライヴさん、相変わらず無表情のヒルドさんと再会した。


 カレンちゃんを運ぶ私を見て、心中を察してくれたのか、私に声をかけずにそのまま一緒に港まで足を運んだ。


 もう一人の私は堪らず号泣した。先程の私と同じように。きっと同じ気持ちなんだろうな。


 港に到着した。それまで誰も会話しなかった。きっと帰りの船に乗っても家に着いても同じように空気が重いままだろう。 


 でも、そんな事を気にしている余裕は今の私にはない。もう一人の私も泣き止んだ後は同じだろう。


 船が来るまで待機所で時間を潰すことになった。本来ならそこで楽しくショッピングでもする予定だったが、私のせいでとてもそんな空気ではない。


『私のせいだ……』


 罪悪感で居た堪れなくなった私は黙ってカレンちゃんを連れて、一人外に出た。あおいさんが傘を渡そうとしたけど、受け取れる気力すらなくスルーしてしまった。


 ごめんなさい、あおいさん。


 外に出ると、雨は相変わらず大地を打ち付けているが、私はそんなことも気にせずに、雨に肌の通行を許した。


『………………』


 また涙が零れそうだ。だけどそれも雨がすぐに掻っさらってしまうだろう。まるで泣いている姿を誤魔化す手助けをしてくれるように。


『カレンちゃん……!』


 涙が雨粒と共にカレンちゃんに落ちた時、異変が起こった。


『なに……これ……?』


 ――緊急事態が発生した。


 カレンちゃんの色々な部位から真っ黒い瘴気が上に登るように漂った。


 周りの人の視線がこちらに向き始めた。誰が見ても明らかな異変だからだ。


『え!?』


 待機所にいたファースト・ドライヴさんがいち早く気づき、血相を変えて私の元へ走った。


『ルカさん!!!』


 ファースト・ドライヴさんが手を伸ばすも、その前に黒い瘴気が霧のように舞い、私を包み込んだ。


 私の視界は完全に黒く染まった。どこを見渡しても一面の黒、黒、黒、黒、黒。


 音も一切聞こえない。


 一歩一歩進んでみても、景色が変わることはなかった。


 そうか、カレンちゃんは私をここに閉じ込めたいんだ。


 罪人の私をこの牢獄に収監したいんだ。


 よく目を凝らしてみると、闇の中で何かが蠢いているのが分かった。


 ぬるぬると触手のように動くそれは私を拘束するためなのか、私の手足に向かってゴムのように伸ばした。


 このままでは私は拘束されて、抵抗できない状態になってしまうだろう。


 ディーンさんが前に呟いていた触手プレイ? みたいになっちゃうんだろうね。好き放題にされちゃうらしいけど、それが私への罰なら受け入れるよ。知らない人なら嫌だけど、カレンちゃんになら好きにしていいよ。


 なんて事を考えていると、突然ガラスが割れたように暗闇の景色が崩れ落ち、途端にロンドディウム王国の港が視界に映った。なんとなくだけどノルン様の怒りを感じたような気がした。


『あれ?』


 私を拘束する予定だった触手も姿を消して、今目の前には血相を変えたファースト・ドライヴさんがいる。


『ルカさん! こちらへ!』


 彼女は私を抱き寄せ、後ろにいる“何か”に光魔法で生成したであろう“光の弾”を連射した。 


『この!』


 ある程度攻撃したら、ファースト・ドライヴさんは私を抱きながら、後ろに下がった。


『ルカさん! ファースト・ドライヴさん!』


 そこには騒ぎに駆けつけたあおいさん達が、それぞれ戦闘態勢に入っている。


『あれは――』


 ――禍々しい何かがそこにいた。


 全長5メートルくらいだろうか。


 カレンちゃんに似たようなドール人形をベースに手足が蛇となっており、頭から3頭の蛇が生えている。


 モンスターにしても、あまりにも悍ましい姿をしており、戦闘慣れしている者でも恐れ戦く人が居てもおかしはないだろう。


 実際に私は、かつての親友が巨大化して蛇に侵食されている姿など、悪夢を見た時以上に恐怖で震えた。


 いっそ悪夢ならまだマシだった。だが、これは現実だ。


 あれはカレンちゃんであってカレンちゃんではない。


 カレンちゃんに似た怪物だ。この世にいてはいけないバグだ。


 そもそもシステム上、モンスターは一定の場所にしか出現しないはずだ。この港はモンスター出現エリアではない。 


 この光景を見た一般人全員、妖怪か宇宙人か何かが襲来してきたんだと思うだろう。それほどまでにありえざる状況だから。


 最初はパニックになっていた港だが、今は私達を除いて全員避難できたのか、雨の音と怪物の声しか聞こえない。


 おそらくこの後、王国の騎士あたりが討伐にやってきそうだけど、私やあおいさんはともかく、ヒルドさんと特にファースト・ドライヴさんは秘匿性の高いヴァルハラの住人だ。公にしていい存在じゃない。


『早く決着を着けましょう! 私達の存在が知られるとマズイ!』


 そう叫ぶように言ったファースト・ドライヴさんは、私と同じ事を危惧していたようだ。


 ここには私含めて五人いる。しかも一人一人が精鋭揃いだ。勝てない相手なんていないはずだ。


『カレンちゃん、今解放してあげるからね』


第570話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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