第567話『家族のために』
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――時は遡り、数日前の朝。
カレンからの手紙を読んだ橋本ルカとルカ・ヴァルキリーは、突然の家族の家出に居ても立ってもいられず、今すぐ捜索しようと他の家族を巻き込んで会議をした。
『分かった。カレンを捜索しよう。今日は平日だけど、家族の危機だもんな。それどころじゃねえよ』
ダストは優しい大人の表情を浮かべてそう言った。
『ディーンさん……!』
ルカ二人は両手を組みながら、ダストの言葉に感動を覚え、軽く涙を流した。これでルカ達からダストへの好感度は爆上がりだろう。
そんな中で、パーシヴァルがこうツッコんだ。
『サボりたいだけじゃないのか?』
ダストはその言葉を受けて、余裕のない焦った表情に一変した。
『そ、そんなこと、ね、ねえし!』
必死に否定するも、明らかな動揺具合で嘘だと目に見えて露呈している。
『めっちゃ動揺してるじゃないか!』
『ま、まあでもルカちゃん達だけに捜索させるわけにはいかないだろう?』
確かに保護者同伴が望ましいな、とこの場の全員が納得しかけたその時、女神ノルンから声が届いた。
――皆さん、話は聞かせてもらいました。このスーパーウルトラキュートの女神ノルンちゃんが、カレンさんの捜索にアドバイスしちゃうぞ☆――
真面目な空気を塗り替えたふざけた空気にふざけたノリを注入したノルン。ウケ狙いも失敗してるので、重苦しい空気が再び舞い降りてしまった。
『ノルン様、空気読んで下さい。今そんなノリいりますか?』
ダストは容赦なくノルンを責めた。
――はあ? てめえうるせえですわよお前だってふざけた空気に変えたじゃねえかふざけんなよこの■■野郎!――
怒涛の勢いで口汚く罵るノルン。最後の方で、とても公共の場では出せない単語を口に出した。
『子供たちの前でそんな言葉使わないで下さい!』
さらにツッコむダストを放置し、ノルンはルカに提案をした。
――さて、橋本ルカさん、ルカ・ヴァルキリーさん。貴女達の想いはよく分かりました。私が手を貸しましょう――
『え、いいんですか?』
――何か問題でも?――
『いやだって、ノルン様は基本的に人同士のいざこざには関わらないんじゃ……?』
――いいえ、今回は未来に関わる事案です――
未来という単語を聞いて、事情を知る者全てに緊張感が加わった。
『それって、どういうことですか……?』
――それはですね……ルカさん達がカレンさんを捜索すると決まって、仕事をサボれるなんてふざけた事を思いついた人が居ましてね……分かってますよね? オーガスト・ディーンさん?――
名指しで呼ばれてギョッとするダスト。もちろん家出したカレンの事も案じているが、それはそれとして、仕事をサボれる正当な理由ができて喜ぶ感情も少なからず湧いている。
『そ、そ、そ、そんなことな、な、な、ないで、ででですすすすよよよよ』
――いくらなんでも動揺しすぎですよ。貴女は壊れた人形ですか――
『壊れた人形――』
『か、仮に俺が仕事がサボれるという魂胆があったとして、それが未来と何が関係あるんですか!』
――貴方にサボり癖ができてしまうと強くなれないからです。特に最近のあなたは本当に不真面目だから、修行サボろうとしますよね?――
ダストはギクッと反応した。
『な、なんのこと――』
――ほう、私に嘘をつくのですか? いい度胸ですね?――
遠回しにこれ以上嘘をつかない方が身のためだと圧をかけるノルン。
ダストは嘘を口に出せず、パクパクと口を動かした後、観念して今日のサボりを諦めた。
『すみませんでした』
――――――――――
結局、ダストとパーシヴァルとルカ達には同行せず、バレスと共に学園に向かうこととなった。ダストはこの世の終わりのような顔をしていた。
残ったのは、ルカ二人とあおいのみ。家主のマーリンは相変わらずの多忙で既に学園で馬車馬と化しているだろう。
『ということは、私が同行するってことでいいのでしょうか?』
――はい。あおいさんはせっかくの休日なのにすみません――
『いえ、気にしないで下さい。今日は特にすることもなかったですから』
――本当にありがとうございます。ですがあおいさんだけに負担はかけさせません。ヒルドさんとファースト・ドライヴさんにも同行をお願いしようと思っております――
『ヒルドさんとファースト・ドライヴさんもですか? 全然構いませんが、人選に理由があるのでしょうか?』
未来視ができるノルンならば何かしらの意図があるに違いないと思ったあおいがそう質問した。
――いえ、なんか暇そうだったのでちょうどいいかと思っただけです――
暇なだけだった。
『ああ、暇なんですね……』
――ええ、今からお二人を呼んでまいります。少々お待ち下さい――
それから数分後――
――お待たせしました。お二人とも快く引き受けて下さいましたよ! というわけで、ここから一番近くの港に集合して下さい――
『え、なんで港……?』
――カレンさんはおそらく海外であるロンドディウム王国にいらっしゃるからです――
『ロンドディウム王国って確か……』
ついこの間ダスト達が平行世界で訪れた国である。ルカ二人はその目で見たことはないが、知り合ったルシウスから話は聞いているはずだ。
――ええ、ルカさん達が行った平行世界にもありましたね。当然ですが、ルシウスさんはいらっしゃいません。その世界のロンドディウム王国とはまるで状況が違うでしょう――
『そうだよね、でもそこにカレンちゃんがいるなら、私行かなきゃ』
ルカは家族を連れ戻す為なら、地の果てまで行く覚悟を持っている。もう一人のルカも同じ想いだ。
――ええ、必ずカレンさんを連れ戻しましょう――
『うん!』
こうして、橋本ルカ、ルカ・ヴァルキリー、あおいは、ここから一番近い港に長い時間をかけて足を運び、待ち合わせ場所に到着した。
そこで、ヒルド、ファースト・ドライヴと無事に合流した。
ヒルドは相変わらず下着が見えそうなミニスカ姿だ。上は深い谷間が見えるほどの薄着を装着している。稀に見ない露出美女に通行人の男性の視線を奪っている。
ファースト・ドライヴは執事風の男装を纏っている。足の長い抜群のスタイルのイケメン美女に通行人の女性の心を奪っている。
『二人共オーラが凄いなぁ……』
『ええ、本当に……私みたいなブスとは大違いですよね』
あおいはスーパー美女二人に対して劣等感を覚え、ネガティブモードに切り替わってしまった。
『そんなことないよ! あおいさんもすごく綺麗な人ですよ!』
『あ、ありがとうございます。でも気を遣わなくていいんですよ……私がブスであることには変わりないですから……』
あおいも紛れもなく美少女である。
『ええ〜本当にそんなことないのに〜!』
そんなやり取りを続けていると、ロンドディウム王国行きの船が到着した。
乗車券はヒルドに出してもらい、船の旅を楽しんだ……わけもなく、橋本ルカとルカ・ヴァルキリーは終始口角が上がることなく、不安の渦に飲まれていた。
そんな時、あおいやヒルドに話を聞いてもらい、なんとかメンタルは保っていた。
そして、船が到着し、五人はロンドディウム王国に足を踏み入れると、少し遠くから爆発音のようなものが聞こえた。
橋本ルカはもしやと思い、一人だけ飛び出してしまった。
そして、彼女は聞こえた音だけでアンドリューの屋敷にたどり着き、ダイアナと戦い、勝利したのだが、時は既に遅く、人形は返事のない壊れた人形となっていた。
『………………』
雨の中、二人は無言となり、動かなくなった家族を連れて帰還するだけとなった。
『………………』
ルカの最愛の家族を失い、あおいは、かける言葉が思いつかない。もし自分が最愛のお姉様がこうなっていたらと想像することはできるが、実体験ではない。とても今のルカの気持ちと共感する事はできないだろう。
『………………』
ルカの頭の中は人形の事でいっぱいだ。これまで過ごしてきた思い出が彼女を包み込む。
『………………』
彼女の未来図の中には人形の姿もあった。ルカチャンニ手ヲ出スナとダストに怒りながら忠告する、そんな当たり前だった日常を思い浮かべていた。
『………………』
だが、それはもはや幻想となった。もう二度と人形の声は聞けない。
『………………カレンちゃん』
――悲しみに暮れる中、人形からわずかに闇の瘴気が現れた。それは誰の目にも触れない程度のほんの小さな“歪み”だ。
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