第562話『カレン、放浪の旅⑦』
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※2024/07/29誤植があったので修正しました。
アンドリューの部屋に一人の女性が現れた。黄金の川のような金髪のロング、貴族が着用するような赤いドレス。ここだけ見れば、さぞかし気品ある女性のように思うだろう。しかし、彼女の目は怒り狂った猛獣の如く、狂っていた。
『アンドリュー?』
この世の全てを憎むような黒い眼差し。
地獄から流れ出たような血の色の液体。
殺意に満ちた握りこぶし。
そして、身体全体を掴まれるような強い殺気。
今、外に出ているケンは攻撃する手を止めてしまった。
『アンドリューを傷つけたのは貴方?』
そう質問されると、冷や汗が止まらないケンは尻もちをつき、影の中に逃げようとした。
一方で影の中にも殺気が届いており、カレンとバトルジャンキーのフランでさえ、軽く硬直していた。
故に反応が遅れてしまった。
『ア、ア……! ケン、早ク戻――』
カレンがそう口を開く頃には、ケンは既に首根っこを掴まれており、逃げられない状態だ。ケンの命は果物をもぎ取るが如く容易いだろう。
『マズイ! コウナッタラ私ガ出ル! フランハココニイロ!』
『お、おい、今何が――』
カレンは、フランの疑問を聞かずに飛び出してしまった。
そして影から一つの人形が現れた。それは手の先に光の球を浮かせており、赤いドレスの女に向かってビームのように解き放った。
見事命中、ダイアナは回避が遅れてそのまま軽く吹っ飛んでいった。
『今ノ内ニ撤退スルゾ!』
カレンはケンを影の中に入れようとするが、その前に一つの拳がカレンの目前まで迫っていた。
『――』
――反応する間すらなかった。ふっ飛ばされたはずのダイアナはすぐに立て直し、攻撃を行った。
そして、それはカレンの顔部分をめり込ませ、その勢いのままふっ飛ばし、窓ガラスを貫通した後、そのまま下に落ちていく。そして、赤いドレスの女はそれを追う為に割れた窓ガラスから飛び降りた。
『カレンさん!!!』
それと同時に影が消え、中にいたフランが現れた。
『お、おい何がどうなって……?』
状況を把握できないフランへの説明義務を放棄したケンは、フランの手を握り、その場から走ってカレンの元へ向かうつもりだ、
『カレンさんを助けるぞ!』
しかし、二人を傷だらけのアンドリューが止めた。
『待て』
『あなたに構ってる場合じゃない!』
『おいおい、俺は構ってちゃんじゃねえよ。いやそうじゃなくてだな、お前らじゃダイアナを止められねえよ』
『ダイアナって誰だ?』
『おそらくカレンさんをふっ飛ばした赤いドレスの女性だ』
『ええーーーーー!? カレンぶっ飛ばされたのかーーーーー!?』
ようやく状況を理解したフラン。
『ダイアナは俺の嫁なんだ。そんで俺よりも強えぞ』
『……!』
彼らの背中を戦慄感が駆け抜けた。
カレンがいなければアンドリューにすら勝てない二人がカレンを助けに行くなど、もはや自殺行為に等しい。
『まあ待て、ああ見えてダイアナは人殺しを好まねえ。だからさっきの……お嬢ちゃん? は死なねえから安心しろ』
『本当か?』
『ああ、本当だ』
『あと、あいつ人間じゃなくて人形だけど大丈夫か?』
『ああ、大丈――ん、待て人形? 人形っつったか?』
人間ではなく、まさかの人形というワードに驚愕するアンドリュー。
『ああ、カレンは人形だ。訳合って動ける人形になったみたいだが』
『そんなことあるのか? とても信じられねえ……けど、お前たちが嘘をついているようにも見えねえな……特にそこのちっこいガキは嘘つけなさそうだしな』
“ちっこい”というワードにフランは再び憤怒の嵐を巻き起こした。
『誰がちっこいだ! この野郎!』
フランは炎に拳を纏わせた。このまま本気で殴りそうな雰囲気だが、アンドリューは軽く困惑するだけで回避する動作がなかった。
『ああ、悪かったよ。とりあえずその拳を引っ込めてくれないか?』
『……』
しかし、引っ込める気がなく、炎は美しく熱きオレンジを揺らしている。
『おいおい、まだ怒ってんのか? 見て通り俺はもう動けねえんだ。お前らに足を攻撃されたからな』
根に持っているような嫌味を口にした。
『……』
『いいのか? 抵抗できない相手をひたすら攻撃するなんて。ちょっと卑劣すぎると思わないか?』
今度はフランの良心に訴えかけた。
『……確かに。じゃあやめる』
説得されたフランは拳から炎を引っ込めた。
息をついて安堵したアンドリューは話を続けた。
『で、話は戻るんだが、あのカレンとかいう人形、何者なんだ?』
『敵であるあなたに話す理由はありません』
ケンはカレンの情報を守るために、口を固く閉ざした。
『まあ、そうか。でも多分だけどよ、あの人形、この世のモンではないだろ?』
図星を突かれるケン。首を横に振ることもできず、アンドリューの鋭い眼差しの前に何も反論できなかった。
『お前の反応……やっぱりそうだよな。お前らの姿が消えたりしてたのもあの人形の仕業なんだろ?』
またしても手口がバレてしまった。下手に嘘をつこうとしても、勘のいいアンドリューの前ではもはや無意味だろう。
『安心しろ、別に他の奴に言ったりしねえよ。俺はただお前たちの話を聞きたいだけだ』
『俺たちの話だと?』
『ああ』
するとケンは、
『話したら、カレンさんを助けてくれるんですか?』
『内容次第だ』
『確実じゃないけど、でも今俺たちにできることは――』
何かを決心したケンは、
『分かりました。話しましょう、俺たちの話を』
『ケン、いいのか?』
『いい。今はカレンさんを助ける事が第一優先だ』
『まあ、そうだな。分かった。ケン、全部話してしまえ』
『何で全部俺に委ねるんだよ、フランも話してくれ』
ケンは呆れながらツッコミ役に勤しんだ。
『面白いなお前たち』
アンドリューは少しだけ笑った。
『それほどでも〜』
何故か照れるフラン。
『これっぽっちも褒めてないぞ』
ケンは深呼吸をしてから、改めて表情を変えた。
『それじゃあ話しますよ。俺たちの事。まずは――』
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