表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
577/724

第561話『かつて孤児だった男の回想』

お待たせしました。

第561話の執筆が完了しました。

前回扉が開かれる所で終わりましたが……ごめんなさい、今回は回想です……。

宜しくお願い致します。

 《アンドリュー視点》


 俺の名前はアンドリュー・アーサー。我が組織“リベレーション”のボスをやっている。


 俺は元々孤児だった。顔は見たことねえがろくでもねえ親がまだ赤ん坊だった俺を捨てやがったらしい。


 孤児院に行っても、そこにはろくな設備も整ってないし、今日を生きる食い物すら調達できるか怪しかった。


 そんな劣悪な環境に数年、ある人がやってきた。


 その人は当時ギャングのボスだったが、とても寛大な方で俺のような孤児にも手を差し伸べて下さった。


 あの人が俺を拾ってくれて、俺は救われた。


 設備が十分整ってる屋敷に引っ越し、俺に部屋を与えてくれた。


 まともな寝具で横になったのは生まれて初めての感覚だった。とてつもない安心感に俺は涙した。


 しかし、ギャングっていうからには柄が悪い奴がさぞ多いことだろう。ああ、本当に多かった。素行も最悪で同業者は容赦なくぶちのめす残虐非道な奴らだ。とてもお優しいあの人の部下とは思えねえくらいにな。


 でも、あいつら全員根はいい奴らだったんだ。俺に優しく接してくれたし、面倒も見てもらった。


 部下達も俺と同じだったんだ。親に捨てられ、大人には匙を投げられ、世界に絶望しながら生きてきたんだって。


 俺は自分と同じ境遇の人間と対面して思ったんだ。


 “あぁ、俺は一人じゃなかったんだ”ってな。


 間違いない。ここが俺の骨を埋めるまでいる唯一の居場所だ。


 それから俺はボスのお役に立てるように仕事に勤しんだ。報酬(かね)なんていらねえ。俺はアンタの役に立てることが俺の何よりの報酬なんだってな。それを言ったらボスは“自分を安く売るな。俺を慕ってくれるのは嬉しいけどな、労働の対価だけはちゃんと払わなきゃならねえ。恐竜が生きてた時代からそう決まってんだ。だからちゃんと報酬を受け取れ”と仰っていた。


 なんと素晴らしい……ボスの言葉は目に染みるぜ。


 俺が報酬(かね)を受け取ると、ボスはこう言ったんだ。


 “なあアンドリュー、お前何か買いたい物はねえのか?”


 生まれて初めて聞かれた質問。孤児院時代の俺の元に金なんて一切転がって来なかったから、欲しい物なんて何も思いつかなかった。


 “いえ、特には……”


 “もったいねえな、分かった。俺がお前に世界を教えてやるよ!”


 ボスは笑顔でそう言ってすぐに旅行の準備を始め、困惑する俺を余所に世界を教えてくれた。


 世界は広かった。


 俺の目には何が映っている。


 世界(いろ)だ。

 人間(いろ)だ。

 景色(いろ)だ。


 世界は残酷ではあるが、これほどまでに美しかったとは。


 俺がいた世界はきっと、世界の端にあるゴミ箱だったんだろうな。外の世界はとても美しい。俺は目を奪われた。


 その時ボスは別居してる娘の話をしてくれた。名前はダイアナ・アーサー。どうやら俺と同じくらいの歳で、誰よりも気高く美しい娘だそうだ。訓練を受けているため、戦闘能力も高く、下手したらギャングどころか王国すら潰せるほどの力を持つらしい。


 にわかには信じられなかったが、ボスが言うなら本当なんだろう。


 すると、ボスは突然とんでもないことを言い出した。そのボスの娘と俺を婚約させたいと。


 俺は驚いた。だって、ボスの大切な娘を俺なんかに預けるなんて恐れ多いにも程がある。


 何で俺なんかに預けるのか、俺は理由を聞いた。


 そしたらボスは、“お前は根が優しいからだよ”と言った。


 俺が……優しい?


 “お前ならダイアナを大切にしてくれる。俺はそう信じてるんだ”


 ボスの言葉に毎回感銘を受けた俺ですら、この時のボスが何を言っているのか分からなかった。


 でも、任されたからには最後までやり遂げる。それが俺のポリシーだ。


 “分かりました。ダイアナさんのこと必ず生涯幸せにすると誓います”


 そう言うと、ボスは安心しきった顔で少し涙を流していた。


 ここで婚約話は一旦終わった。一応(ダイアナ)の写真を見せてもらったが、本当に美人だった。俺にはもったいないくらいに。


 そして旅行が終わると、実家に帰るような心地の良い安心感と、楽しかった思い出を置いてきてしまったような寂寞感(せきばくかん)が心を惑わした。


 要するにさいっっっこうの旅行だったってことだ!


 またボスと……今度はダイアナさんや部下(あいつら)を連れて行けたらいいなぁ、と何百回も思った。その日を夢見て――


 だが、その願いは永遠に叶わないものとなった。


 数カ月後――ボスは病気で亡くなった。


 突然の事で誰もが状況がついてこれず、俺は虚無感を抱いて息をした。


 なんでだよ……!


 まだ俺はアンタとやりたいことがあったのに!


 話したい事があったのに……!


 また旅行に行きたかったのに……!


 早いよ……!


 俺を置いて行かないでくれよ……!


 俺にはまだアンタが必要なんだ……!


 泣き言は心だけに響かせた。


 俺はもう15だ。


 もう立派な組の一員であり、将来のボス候補なんだ。俺をボス候補に選んだのはボスだけじゃなくて、他の部下達もだ。


 俺は彼らの信頼を積み重ね、着実に成果を上げた生活を崩さなかった。


 だから、今俺はここにいる。


 そして、俺は無事にボスになり、この組織を守り、導き、俺と同じ境遇の子供も助ける。


 ボスの意志はまだ俺……いや、俺達の中にある。


 ボスの葬儀の時、ダイアナと初めて出会った。その時はしおらしく泣いていたので分からなかったが、とても前向きで明るいが、ちょっと感情の起伏が激しい女の子のようだ。俺が婚約者である事も知っていた。


 俺はダイアナとボスの話をして盛り上がった。


 その時、ダイアナとボスが別居してた理由も話してくれた。どうやらボスが一緒に組織の本部に住めば、ダイアナの身が危ないと思ったからだそうだ。ちなみに奥さんはダイアナを産んですぐに亡くなったそうだ。常に別の組織に追われ続けて、かなり疲弊してたんだそうだ。許せねえ……!


 でもダイアナは俺より強いから別居する必要はなさそうだけどな。まあ娘を愛していた故に万が一の可能性すら排除したかったんだろうけど。


 ダイアナはそんな父親の意に反して、なんと俺と一緒に本部である屋敷に住み始めることになったのだ。


 確かにダイアナとは軽く一戦交えたが、話に聞いた通り、俺では手も足も出ない程の強者だった。


 “一緒に暮らしましょう! ぜひあなたの手伝いをさせて頂戴!”


 俺は迷ったが、まあ無理やり追い返す程の戦闘能力はないし、これだけ強ければむしろ戦力になると考えた。しかし、それだと亡きボスの意志に反してしまうことになる。そもそもダイアナを強くしたのは戦力にするためではなく、己を守るためだ。やはり多少の犠牲を払ってでも元の家に帰すべきではないだろうか。


 ……いや、それじゃ何も変わらない。そもそもダイアナは父親と別居してたのに、何故今更ここにやってきた?


 俺が婚約者だから、といえばそうなんだろうが、別の理由がある。


 それは――


 “私、もう何も失いたくないの……だから貴方だけは死ぬまで側にいてほしい……”


 死なせたくない。その想いが彼女を動かしたのだ。


 そんな彼女を迎え入れたい。しかしそれでは彼女ばかり戦いに出させてしまうことになる。まあ、その方がはるかに効率が良いが、彼女に依存してはダメだ。


 俺も強くなろう。出来れば彼女を超えたいが、それはさすがに現実的じゃない。


 でも、せめて彼女の背中が見えるくらいには強くなりたい。


 そう思った俺は早速修行にとりかかった。


 毎日、毎日、何があっても修行を怠ることなく、そしてボスとしての任務をこなしつつ、戦闘でもなるべく前線に出るようにした。


 そうしている内に敵の気配をかなり敏感に感じ取れるようになった。そのおかげで敵の位置を把握し、ダイアナの手を汚させないように動くことも可能となった。


 それから3年後、俺とダイアナは正式に結婚した。相変わらずダイアナの方が強いが、それでも俺は一生彼女を守っていきたいと、改めて誓ったのであった。


 その後も修行を続けてきた結果、俺は世界最強という称号を手に入れた。だが未だにダイアナの方が強いはずだ。それが俺に渡ったのは理由がある。何故なら彼女が戦闘に混じる前に俺が敵を殲滅したからだ。ダイアナが表舞台に出なかった故に俺が偽物の世界最強となった。


 そして、今日俺は敗北した。偽りの世界最強は たった二人の少年によって破られたのだ。


 まったく……あまり戦わせなくなかったが……。


『あとは任せたぞ……ダイアナ』

第561話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ