第559話『カレン、放浪の旅⑤』
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最上階である三階は他のフロアほど広くはない。部屋の数も僅か5つのみだ。
『アトハコノフロアダケダ』
『長かったなぁ……』
『カレンさん、すみません。もう少しだけお付き合い下さい』
『アア、ココマデ来タラ最後マデ付キ合オウ。ソレニ二階ノ連中ハ許セナイシナ。チョットオ灸ヲスエテヤラナキャ気ガ済マナイ………!』
カレンの個人的な炎が燃え上がる。怪物にとっては、
色欲に溺れた人間=ルカちゃんを襲う獣。
となっているので、ダスト含む汚らわしい男達を許さないのだ。
『そ、そうですか……それは頼もしい限りだな、あはは……』
ケンはカレンの熱狂ぶりに苦笑いした。
『マズハコノ部屋ダ』
扉をすり抜けてみると、そこには一番偉い人間が使うような高いデスクが奥の中心部にあり、その中心部には低い透明のデスクとそれを囲うようにソファが置いてある。
要するに社長室……つまり、このギャング組織のボスの書斎だ。その本人も椅子に座って、刀を眺めている。
『誰カ居ルナ、察スルニアイツガボスカ?』
ボスはイメージよりも若く、顔立ちの良い好青年という印象だ。しかし、刀を持っているせいで人斬りを好むサイコパスにも見えてしまう。
『ああ、あいつの名はアンドリュー・アーサー。察しの通り、この組織のボスでこの国……いやこの世界で最も戦闘力の高い男と言われている』
『コノ世界デ最モ……ダト……!?』
無論、女神ノルンやダスト達のようなファンタジーな存在は除くが、彼に勝てる者は今のところこの世に存在しないようだ。
『ああ、一度戦ってみてえよな!』
拳を合わせて、アピールをするフラン。
『やめとけ、フランじゃ勝てないよ』
『勝てるか負けるかなんて関係ねえ。楽しいか楽しくないかだ!』
わりと名言らしい名言を口にするフランだが、そもそも戦いを楽しむのはあまり褒められたことではないだろと思うカレンとケンであった。
『マア、トニカク部屋ノ中ヲ見テミヨウ。ドコガニ金庫ガアルカモシレナイカラナ』
『そうですね、一刻も早く探して退散しましょう』
方針を決めてから影を進めると、アンドリューが突然喋りだした――
『そこにいるのは誰だ』
『!?』
影は一旦椅子の中に隠れ、様子を伺う。
『バカナ……姿ヲ現シテイナイノニ、ナゼ分カッタ?』
一同驚愕の表情を浮かべる。しかし、カレンの言うように姿を現しているわけではない。しいて言うのなら影が不自然に動いているくらいだが、常人ならほとんど気付かないレベルだ。
アンドリューも特にこちらの姿が見えたわけではないようで、椅子から立ち上がることはなかった。
『でも、あいつは見えてないはずだぞ?』
『偶然か、それとも気配でも察知したのか』
『イズレニセヨ、我々ハ進ムシカナイ。最悪戦闘モ視野ニ入レナイトナ……』
アンドリューに見つからないように、なるべく物の下からすり抜ける作戦に出た。
椅子から隣の椅子、次にアンドリューの机の下を進む。この時アンドリューは椅子に座っているので、別方向からすり抜けて進む。
『そこか』
アンドリューは、1秒後に影が通る予定だった箇所に刀を突き刺した。
『なっ……!?』
『ヤハリ気ヅイテイルノカ?』
それに答えるようにアンドリューが口を開いた。
『気配がな、するんだよ。うちの金をパクろうとする気配がな』
『バ、バレてる……?』
『こうなったら戦うしかないか』
『やめろフラン! 大丈夫だ、俺達は影の中にいる! 攻撃なんて当たるわけが……!』
『イヤ、影ハ敵ノ攻撃ヲモ引キ込ム。ダカラモシアノ刀ガコノ影ニ突キ刺サッテシマエバ、コノ空間ニモ刀ガ飛ンデクル』
それで攻撃が当たらなかったとしても、アンドリュー視点では刀が影に吸い込まれる超常現象を見ることになる。そうなれば影の存在が明るみになってしまうだろう。
『やっぱ戦うしかねえじゃねえか!』
『イヤ、ダガアノ男ハ影ノ存在ニ気ヅイテナイ。椅子や机の下に逃ゲナガラ動キ回レバ大丈夫ダ』
一旦机の中に隠れた。
『どこ行きやがった……気配は近いはずなんだがな』
アンドリューは気配がする机周辺を徘徊しはじめた。
『マズイナ、アイツナントナク私達ノ場所ガ分カッテイル』
このままではアンドリューも影を見つけられず、漂う気配を追いつづけ、カレン達も一向に机の下から離れられずに膠着状態になるだろう。
お互いに膠着状態が続けば、もはや耐久戦だ。どちらかがしびれを切らすまでこの戦いは終わらない。
『お前……いやお前らは誰だ? 気配はするのに姿が一向に見えねえ。透明人間か何かか? さっさと出てこい。俺と斬り合え。それで俺に勝てばたんまり金をくれてやるよ』
姿なき相手に挑戦状を叩きつけるアンドリュー。その表情は獲物を狙う獣そのものだった。
『よし、俺出てくる!』
影の中から出ようとするフランをケンが止めた。
『フラン、お前戦いたいだけだろ!』
『そ、そんなこと、ね、ねえよ』
動揺しながらも、表情は嬉しそうだ。
『めっちゃ行きたがってる! 完全にバトルジャンキーの目をしてる!』
フランを止め続けるケン。
『ダガ、コノママデハ膠着状態ガ続クノモ時間ノ問題ダ。幸イアイツハ増援ヲ呼ンデコナイ。モシカシタラ私達ダケデ勝テルカモシレナイゾ』
『本当か?』
『だけど、アンドリューは影の存在に気づく程の猛者です。我々が束になっても勝てる気がしません。そもそも組織の一人すら倒せなかった俺達に勝ち目はない……』
二人の戦闘能力は組織の一端すら倒せないほど低い。想像するまでもなく、勝ち目はないと結論付けても不自然ではない。
『大丈夫ダ。私ガイル』
『カレンさんも戦うんですか? 確かにカレンさんは俺達より強いけど』
『私ニ考エガアル』
『考え?』
『アア、聞イテクレ』
カレンは二人にある作戦を伝えた。
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