第557話『カレン、放浪の旅③』
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――カレンは結論を出した。
『ヨシ、コレデイイダロウ』
フランとケンのアドバイスを受けて、カレンはとある作戦を立てた。
『フラントケンモ協力シテクレルノカ』
『ああ、これも何かのセンだからな』
『フラン、それを言うなら縁だぞ』
『ああ、そうとも言うな』
(大丈夫カ、コイツ)
『ソレナラ私モ、オマエタチノチカラニナルゾ』
『ほんとか! ありがとな!』
『協力関係トイウヤツダ』
お互いに握手して、協定関係が結ばれた。
フランとケンの目的は、ロンドディウム王国の極悪ギャング組織の金品をできる限り奪取すること。
二人だけではギャングの本部に潜入するだけでも骨が折れるが、地中を移動できるカレンならば見張りをかいくぐる事も容易い。
『モウソロソロ到着カ』
船が港に寄り付いた。
途端に人の賑わう声が聞こえる。どうやら港に沢山の人間がいるようだ。おそらくほとんどがこの船に乗ってる客の家族か恋人だろう。
『コノママ行クゾ』
影が降りる人々を追い抜かし、港まで降りた。
港にはいくつもの漁船と大きな船があった。かなり設備の整った大きな港という印象だ。
しかし、すぐその先には検問所がある。そこを通らなければ、ロンドディウム王国には入れない。
だが、カレンは影の中に入ったまま検問をくぐり抜け、誰の目にも留まらぬままロンドディウム王国に不法入国することに成功した。
『おお、検問抜けて入れた……!』
ありえない事態に歓喜しながらも震えるフランとケン。カレンは特に何の感情もなく、二人に話しかけた。
『ドコガ例ノギャングガイル組織ガアル?』
『確か村正さんが、国王がいる城とは正反対の方向にある大きな屋敷だって言ってたな』
『村正……ドコカデ聞イタ名ダナ』
『え、村正さんを知ってるの?』
『イヤ、聞イタヨウナ気ガシタダケダ。少ナクトモ知リ合イデハナイ。ソレヨリ、ソノ屋敷トヤラニ行コウジャナイカ』
『おお、そうだな』
影は蛇のようにロンドディウムの通路を進んでいく。
――ロンドディウム王国は広い。別の世界線のロンドディウム王国とほぼ同格ほどだ。ただ時代が全く異なるので、使える魔法の種類が圧倒的に少ない。故に生活水準レベルは今の方が格段に下がっている。
しかし、国民は不自由なく暮らしている。極端に貧乏な家が一つもなく、貧困対策が機能している証拠だ。
『コンナ平和ナ国ニギャングノ組織ガアルノカ』
影に中から国を眺めつつ、そろそろ目的地が近くなっていく。
そして――
『ココカ?』
やたら色の濃いデザインのお城があった。とてもギャングがいるとは思えないファンシーな――
『イヤ、ココハ絶対違ウナ』
『なんだここ?』
影の中からこっそり覗くフランとケン。
『オマエタチニハ早イ。大人ニナッタラ来ナサイ』
フランとケンは意味もわからず、首を傾げる。
『行クゾ』
(イツカ、ルカチャンモアノ建物ニイク時ガ来ルノダロウカ。オーガスト・ディーントアンナコトヤコンナコトヲ……)
彼女を思いながらも、次の目的地へ向かった。
『ココカ?』
今度こそ、お城ではない大きな屋敷にたどり着いた。何だかやたらボロくて悍ましい雰囲気が漂っている。
にも関わらず、行列ができるほど人が賑わっており、中に入った者の悲鳴まで聞こえる。その度にビクッと身体を震わせる者もいるが、行列が崩れることはなかった。
そして、最後尾には30分待ちと書かれた看板を持った男がいる。
『お化け屋敷じゃねえか……』
『ソノヨウダナ。マルデ遊園地ダ』
『遊園地ってあんな感じなのか?』
『アレダケジャナイゾ。メリーゴーランドヤ観覧車ヤラ人ガ楽シメルモノガイッパイアル。マア私ニ興味ナイガ』
『そっか……楽しそうだな』
『俺も、俺達もいつかあんな風に楽しめる時が……』
遊園地で自分達が楽しく遊ぶ未来を想像する二人。それは二人にとって夢に見た光景だ。
『ああ、その時は近いぞ』
『今回の作戦、絶対成功させるぞ』
『おお!』
いつか孤児院の子供を連れて、みんなで遊ぶという夢を叶える為に――
改めて意志を固めた二人を連れて、カレンは先へ進んだ。
そして、今度こそ目的地へたどり着いた。
『ココ……デイイノカ?』
すっかりシャドータクシードライバーとしての自信を失ったカレン。
『うん、ここで間違いない。ちょうど城と正反対の所だし』
堂々とした門構え。広々とした中庭。立派な噴水まで置いてある。いかにもイメージ通りの屋敷である。
屋敷は全体的に白く彩られているが、犯罪組織なだけに中身はさぞ真っ黒な闇にまみれていることだろう。
端から見れば貴族の家としか思わない様相なだけに、通りがかりの国民はみんな素通りしている。
『マーリンノ家ヨリモ豪華ダナ』
昨日までの我が家と比較するカレン。そのために連想しただけに過ぎないが、どこか寂しそうにしている。
『よし、入るか。頼むカレン』
『任セロ』
門に見張りはいないが、監視カメラ等はありそうなので、影に潜みながら中に潜入した。
中庭を泳ぎ切り、扉の僅かな下の隙間から侵入する。
『ホウ』
中にはサングラスにスーツ姿の柄の悪そうな男達が徘徊している。見張りなのか他の仕事なのかは分からないが、もし見つかれば袋叩きは免れない。
『これ見つかったら終わりだな』
脳筋のフランもさすがに状況は理解している。間違ってもここから出て、戦おうなんて思わないだろう。そもそも目的は組織の壊滅ではなく、金品を盗むことなのだから。
『コノママ進ムゾ。金庫ノ場所ハドコダ?』
『そこまでは分からない。だから片っ端から探すしかない』
『ソウカ。シカシコノ広イ屋敷ノ中ヲ探ストナルト、ナカナカ骨ガ折レルナ』
この屋敷の部屋の数は50以上はある。誰にも見つからない前提で考えても、最悪50部屋は調べなくてはならない。
『カレンさん、ごめんなさい。こんなことに付き合わせて』
ケンが申し訳なさそうな表情で言った。
『構ワナイ。相手ガ組織トイウ時点デコノ程度ハ想定シテイル』
とはいえ、少し憂いを覚えるカレンだった。
『俺からも礼を言おう。ありがとなカレン』
『気ニスルナ。オ互イノ利益ノタメニ動イテイルダケダ。行クゾ』
カレン達は影のまま、静かに屋敷中を回るのであった。
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