第556話『カレン、放浪の旅②』
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《フランの想い》
俺はフラン。親はいなくて孤児院で育った。
だけど、その孤児院はろくな支援もなく、時間が経つほど建物も老朽化くなる一方だ。ただでさえ子どもの数も多いのに、今日を生きる食べ物もあまり調達できてない。
そんなんじゃ、とても生きていけない。だから俺達で金を稼ぐ必要があった。
だが、俺達はまだ子どもだ。雇ってくれる所なんてどこにもない。かと言ってこのまま飲まず食わずで生きていけるわけがない。
だから、金や食料を盗むしか無かった。
強盗が悪なのは分かってる。なので、不良やギャング等、なるべく悪い奴らから盗むようにした。そうすれば罪悪感は比較的感じずに済むからだ。それでも、どこか気が引けるけどな。
強盗メンバーは俺とケンの二人だ。他の子ども達はまだ幼い。俺達年長組がやるしかなかった。
今回のターゲットは客船のギャングの男だ。こいつは子供を誘拐し、サンドバッグのように殴り倒してきたクズだ。そんなことをしている内に警察に捕まったようだが、今は出所してすぐに大きなギャング組織に拾われて、成果を上げて、ある程度の金を得たみたいだ。
俺はそいつの背後からわざとぶつかり、どさくさに紛れてポケットの中の財布を抜き取ろうとしたが、その手を掴まれてしまった。
どうやら、その男は思ったよりも警戒心が強かったようだ。
まんまと返り討ちにあった俺達は意識を失って――
それから、どうしたんだっけ?
――――――――――
《影の中》
眠っていた背の低い方の少年の一人がまぶたを上げた。
真っ黒な空間で浮いている自分を見て、すぐに目を覚ました。
『うおっ!! なんだこれ!?』
その声で隣の背の高い少年も目を覚ました。
『うん……ここは? え? 浮い……てる?』
何度も眼を擦り、状況を飲み込もうとする。
『まさかここは……地獄か?』
背の低い方の少年は考える限り最悪の予想を口にした。
確かに前方面暗所で常に身体が浮いている状況を現実だと思う者は少ないだろう。
カレンは混乱する二人を落ち着かせる為、状況を説明しようと、二人の前に姿を現した。
『チガウ、ココハ影ノ中ダ』
『うわっ!? ビックリした!?』
動くドール人形✕暗所=超絶ホラーである。驚かない方が難しいだろう。
『え、人形……?』
『おい、何で人形が動いてるんだ!?』
二人は勇敢にも退かずに、カレンと対話しようとしている。
『マア、落チ着ケ。自己紹介ヲシヨウ。私ノ名前ハカレン。タダノ人形ダッタガ、訳アッテ動ケルヨウニナッタ。私ハオ前達ノ敵デハナイ』
『本当か? そう言って俺達を騙そうとしてるんじゃ……?』
背の低い方の少年がカレンを訝しい目で見た。
『ウーム、確カニソレダケデハ信頼デキナイカ』
信頼を得る方法を考えるカレン。
『あ、でも待ってくれフラン。もしかしたらこの人形は俺達を助けてくれたんじゃないか?』
背の低い方の少年の名はフランというらしい。
背の高い方の少年はフランにそう言ってカレンの誤解を解いてくれるようだ。
『は? どういうことだ? ケン』
背の高い方の少年の名はケンというらしい。
『思い出してみてくれ。俺達はさっきまでどこで何をした?』
『えっと……確かあのギャングのおっさんの財布をパクろうとして……でも失敗して……殴られて……それからどうしたんだっけ?』
『意識を失ったんだよ。でも何かに引きずり込まれるような感覚に襲われて、気づいたらここにいたって感じだ』
『ソノ通リダ。アノ男ニ殴ラレタオ前達ヲ見兼ネテ、私ガ匿ッタトイウワケダ』
『……なるほどな。そういえば俺達が受けた傷もなくなってるが、それもアンタのしわざか?』
『アア、ソウダ。医療道具ハ医務室カラ勝手ニ拝借シタケドナ』
『勝手にって……そんなの泥棒じゃないか!』
『・・・オ前ガ言ウナ』
少し間を置いてから、小さい手で軽く叩いてツッコミを入れた。
『ぐっ……そうだった……俺達の方がよほど泥棒だった……』
フランの放った発言がそのまま自分に突き刺さった。
『おいフラン。カレンさんは俺達を救ってくれたんだぞ。その態度はないんじゃないか?』
『あぁ、その通りだな。カレン、すまなかった。あと助けてくれてありがとう』
フランはケンの説教を受けて、素直に謝罪と礼を言った。
『気キスルナ。私モコンナ形ダカラナ。疑ウノモ無理ハナイダロウ』
『そうだ、それで何でアンタは人形なのに動いているんだ?』
『おい、フラン』
あまり人形の過去を詮索するなとケンがフランを止めようとする。
『想イガ通ジタダケダ。ダガ、今ハソレモ無意味ナモノトナッタガナ』
抽象的に説明するカレン。どこか寂しそうに上を見る。
『カレンさん……』
少しだけ沈黙が続くと、フランが喋りだした。
『なんかよく分からねえけど、アンタは自分の行動が無意味だと思ってるってことか?』
『ソウダナ……』
『俺はそうは思わねえけどな』
『貴様ハ私ヲ知ラナイダロウ』
『そりゃそうだけど、少なくともアンタは俺達を救ってくれたわけだ。ということはアンタすげえ良い奴なんだよ』
『…………』
『そんなアンタを見捨てる奴なんていねえ。もしいたらそいつはクズ野郎だ』
『ダガ……私ハ……』
『他に何を思い悩んでるんだ?』
『実ハ……』
カレンは自分の正体を打ち上け、これまての経緯を話した。ただし、女神ノルンやヴァルハラなどの禁則事項だけは伏せた。
『――トイウワケダ』
想像以上にファンタジーすぎる話にケンは唖然として、固まってしまった。
だが、フランは凛々しい顔で毅然とした態度を崩さずにカレンの話を聞いていた。しかし、本当に話を理解できたかは不明だ。
『話は分かった。なら尚更アンタは家族の所へ帰るべきだ』
『ナゼダ』
『分からねえか? アンタと、そのルカって奴は家族なんだろ?』
『無論ダ』
『なら、離れる必要なんかねえ。アンタを大切に思う家族ならずっとそばにいるなんて当たり前のことだろ?』
『ダカラコソ! 危ナイ目ニ遭ッテ欲シクナインダ!!』
声を荒げるカレン。フランはそれに一切臆さず話し続ける。
『アンタの家族や仲間は強いんだろ? 俺は知らんけど』
『ソウダガ……! デモ……デモ……』
『いいから話し合ってみろよ! そうすりゃ案外うまくいくかもしれねえぞ! もし、それでも離れなきゃいけない時は好きにすりゃいいからよ』
『…………………………』
イエスともノーとも言わないカレン。
今、怪物の僅かな迷いがフランの言葉によって、大きな迷いへと変貌した。
ルカちゃんと居たい。
だが、一緒にいればルカちゃんを傷つける。
家族と仲間は皆強い。
解決してくれる。
しかし、自分の尻拭いに時間を取らせたくない。
思いの羅列が怪物を支配する。
それらはカレンを蝕む気はない。ただ選択せよと、その時を待っているのだ。
『ウウ……ルカちゃん……』
(私ハどウスれバ……)
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