第553話『シャドーディストーション』
長らくお待たせしました。
第553話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※2024/07/07少し修正しました。
《ルカの影の中》
みんな、最近私のこと忘れてるのではないか?
カレンだ。ルカちゃんの親友のカレンだ。
私はいつもルカちゃんの影に隠れているから、見かけないのも無理はないが、それでも誰一人として私を話題に上げていない。
これでも陰で頑張ってたのに……ルカちゃんが平行世界に行った時も、精霊世界へ帰った時も、そこで宇宙人が攻めてきた時も、私はいたのだ。何なら宇宙人の軍勢をそこそこ倒していたんだぞ。
それなのに、なぜ誰も私を賞賛しないのだ?
もちろん、ルカちゃんが賞賛されればこれ以上ないほど歓喜だ。とはいえ、私は名前を呼ばれないどころか数にさえ入れられてない。
なぜだ?
確かに私は元々、ただの肉体の塊を皮膚で包んだだけのただの人形だ。主人に可愛がられ、癒されるだけで十分私の役割は果たしている。
それ以上望むのは贅沢なのは重々承知だ。しかし、今の私はもはやその範疇に収まらない。
私はルカちゃんを守る為の動く人形なのだ。
で、あれば私を人類として扱ってもおかしくはないはずだ!
もちろん多くは望まない。だが、私は道具じゃなくてルカちゃんの騎士であり、親友なのだ!
それを踏まえた上でさっきの話を掘り返してみよう。
宇宙人の侵略阻止に貢献した私がなぜ賞賛されないどころか名前すら呼ばれないのか?
――私が道具だからか?
違う。私はルカちゃんの……ルカちゃんの……!
嫌だ。ルカちゃんが私を忘れるなんて……。
ルカちゃんは私を人形としか思ってないの?
そんなの嫌だよ。私はずっとルカちゃんの愛する家族でいたい……!
だから、私を忘れないで……!
好きだよルカちゃん……!
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き。
大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き。
愛してる、私の可愛いルカちゃん。
こんなに愛してるのに何で私に何も言ってくれないの?
私が嫌いになったの?
そんなの嫌だよ。嫌いにならないでよ。
私を呼んでよ。私だけを抱きしめてよ……。
あぁ、そっか。あの男がルカちゃんをたぶらかしたから、私の事なんてどうでもよくなったんだ……!
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない。
そうだ、あの男……オーガスト・ディーンを殺そう。そうすれば、ルカちゃんも私に見向きするだろう。
そうと決まれば早速――
私はあの男を殺す為の詠唱を唱えながら、影から外に出ようとした。
『モウヤメロ』
本体の私が私の前に立ち塞がった。
『自分……邪魔をするな!』
『ダメダ。オマエハココデ始末スル』
『何故だ! 自分だって分かるはずだ! ルカちゃんを愛する気持ちを! にも関わらず名前すら呼ばれない! この悲しみを!』
『確カニ分カル。私モオマエト同ジ様二思ッテイル部分ハアル』
『だったら……!!』
『ダガ、モシソレデ“オーガスト・ディーン”ヲ傷ツケタラ、悲シムノハ本人ダケデハナク、ルカチャンモ悲シム事二ナルノダ』
『ち、ちがっ……ルカちゃんはあの男に騙されてるだけ……』
『モウ分カッテルンダロウ? “オーガスト・ディーン”ハソンナ男ジャナイッテ。オマエガ嫉妬シテルダケニ過ギナイ』
『いいや違う! あいつは……オーガスト・ディーンは消さなければいけないんだああああああああああああああああああああああああ!!!!!』
信じたくない。私は……私は――
『闇の精霊よ、その力を以て我に力を与えたまえ!』
私は高ぶる感情に身を任せ、闇のオーラを放った。
この闇に触れれば、あらゆる苦痛を受け、やがて身体中を蝕み、死に至る禁忌の術だ。
『喰らえ!!!』
私は闇の瘴気を本体に向けて放った。それほど早くはないが、じわじわとこの空間を支配する。そうする内に逃げ場がなくなり、確実に闇に触れさせることができる!
――あぁ、気持ちいい。激情に流されるとはこれほどまでに愉悦なものだったのか。
『あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!』
私は勝利を確信した。闇を払う術など本体の私にはないはずだ。記憶を共有してるから間違いない。
『残念だったな! 本体! お前の身体は私のものだ!』
しかし――
目の前には闇を塗り替える眩い光があった。それはみるみる内に広がり、やがて闇を全てかき消した。
『なんだ……それは……?』
本体に闇を払えるほどの光を扱える程の力はないはずだ。なのに、なぜ?
『コレカ? コレハタッタイマ習得シタ光魔法ダ』
『光魔法だと……? 本体……異界の技を今さっき使えるようになったというのか……?』
『アア』
『そんな……バカな……』
光が私に触れた。すると私は浄化されるように人格が徐々に溶けていく……。
これに抗う術はない。私の完全敗北だ。
そして、私という人格は本体に吸収されて一体化するだろう。そうなれば私は二度と自我を目覚めさせることなく、本体の一部として生きていくのだ。私にとっては実質的な死である。
『………………してる……カちゃ……』
――私の人格が消えた。私はもう二度とカレンとして現れることはないだろう。
第553話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
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