第47話『いざ火の国へ!』
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今回は前回ほどではありませんが、文字数多めです。
先程、俺達を襲ってきたこの猪はあろうことか元々自分は人間だと言い出した。俺もブロンズちゃんもにわかには信じられなかったが、猪が人の言葉を話せるわけがないのはこの世界でも常識だ。人間の言葉を話せる以上は信じるしかないだろう。まあ、モンスターが人語を話せる魔法でもあれば話は別だが。
『元々……人間ですって?』
『そうですぅぅ、私人間だった頃は、結構な美少女だったんですよぉぉ』
――などと、自称美少女の猪はそう供述しており、人間だった頃の話を聞かされた。
『じゃあ、何で猪になってるんだ?』
『分かりません……朝起きて、気付いたら、猪になってました』
『それって、いつどこで起きたの?』
『1ヶ月くらい前に外で、1人キャンプをしてた時ですぅ』
美少女 (自称)なのに、1人でキャンプ……あっ。
『何か察したような顔しないで下さいぃぃ、決して、ぼっちなんかじゃないんですよぉぉ』
『じゃあ何で1人でキャンプしてたの?』
『そ、それは……1人でキャンプするのが、趣味で……』
『そんな事はどうでもいいわ、それよりも……』
『ど、どうでも良くないですぅぅぅ!』
自称美少女猪は、厳つい顔に似合わない泣きっ面を披露した。
ねえ、ブロンズちゃんや、最後までこのぼっちなイノシシ女の1人旅の話を聞いてあげよう?
『お兄ちゃん、結構ナチュラルにイノシシちゃんの心えぐっていくのね……心の中だけど』
『猪ちゃんじゃないですぅぅ、私にはみどりっていう名前があるんですぅぅ』
みどりちゃん。思った以上に日本人のような名前だな。
『ごめんなさい……見た目は、どう見ても猪だから……つい……』
ブロンズちゃんは、可哀想なものを見るような目で、みどりちゃんを見つめている。それはそれで心をエグッてるから、もうやめたげて。
『お兄ちゃんが、それを言うの?』
俺は言葉にしてないからね。みどりちゃんが勝手にそう解釈しただけだからね。合ってるけど。
『ううう……はぁ……何でこんなことに……』
『何か心当たりはないの?』
『うーん、思い当たるとしたら、キャンプしてた時に男の人と、話したことくらいですね……』
『男の人? どんな人だったの?』
『えっと……まず、見た目は、黒いスーツを着ていて、サングラスをかけてました』
黒いスーツにサングラスって……なんか逃走したら、全力で追いかけられそうな服装してるな。
『怪しいわね……どんな会話してたの?』
『えっと……薬に興味ないかとか、あなたには薬が必要ですとか、我がギルドの薬を買っていただければ、あなただけではなく、ギルド破滅寸前の私達も助かりますと困っていたようなので、助けました! 私、偉い!』
『偉い! じゃないわよ! それ絶対騙されてるやつよ!』
『そ、そんなことないですぅぅ、だってその時、お母さんから通信魔法で連絡が来てですね……』
通信魔法とは現代でいう電話と同じようなものだ。ただし、お互いが通信魔法を習得していないと話せないのが難点だ。
それで、お母さんから連絡が来たというその時の会話がこれだ。
『あ、お母さん? どうしたの?』
『あ、娘? ワタシワタシ、ワタシよ』
『お母さんったら、私の名前は娘じゃなくて、みどりだよ~』
『あ、ごめんなさいー、ちょっと最近ボケちゃってー』
『もう~気を付けてよね! で、お母さん、突然通信魔法なんてかけてどうしたの?』
『あー、さっきまでそこにいた黒スーツの人いるわよね?』
『いるけど……何で分かったの?』
『あ、えーと……娘の事ならなんでも分かるのよ!』
『お母さん凄いわ!』
『えっへん! それでね、その黒スーツの人、とっっっても良い人だから、その人の言うこと聞いてれば間違いないわ!』
『そうなんだ~分かった! この黒スーツの人の言うこと信じるね~』
『ありがとう、ひとみ~』
『あはは、お母さん~、私みどりだよ~』
『あはは、ごめんなさい、みのり~!』
『あははは、だから~』
この後もこの脳内お花畑の猪女は、自称お母さんと、こんなふざけたやり取りを繰り返した後、変な薬を嬉々として購入し、そのまま何の疑いもなく飲んだという……。ちなみに味はバカみたいに超苦かったようだ。
『あははは、じゃないわよ! それ、どう考えてもワタシワタシ詐欺じゃない!』
『ええ!? そんなわけないですよぉぉ、確かにお母さん、私の名前間違えてたし、声も違うし、そもそも一人称は我だけど、お母さんで間違いないですよぉぉ』
『何もかも違げえじゃねえかああああああああああああああ! てか、お母さんの一人称の癖、強いんじゃああああああああ!』
俺は思わず、ギャグ漫画のツッコミキャラの如く、壮大にツッコんでしまった。
『そんなぁぁぁ、世の中そんなに悪い人ばかりなわけないですよ~、それに私のようなぼ……ソロキャンプが趣味の美少女を、騙そうとするわけないじゃないですか~』
このアホ猪女は現実から目を背けているのか、それとも手のつけようがないレベルのアホなのか分からないが、自分が騙されてるわけがない! と主張している。
『えぇ……みどりちゃん……アホなの?』
とうとうブロンズちゃんも呆れたような目でアホ猪女を見ている。
『ちょっとぉぉぉ、酷いです! 私、アホじゃないですよぉぉぉ』
『じゃあ、バカがいいか?』
『良くないですぅぅぅ』
アホバカ猪女はジタバタするようにドスンドスンと足音を鳴らす。うるせえ。
『はぁ……で、あなたはこれからどうするの?』
『早く人間に戻りたいので……その男の人を追いかけて、人間に戻して欲しいと頼みに行きたいですね。私と別れる時に言ってたんですよ。火の国に用事があるから、達者でって』
『火の国!? 奇遇ね、私達もちょうど火の国へ行こうと思ってたの』
『ええ!? ホントですかぁ! じゃあ一緒に行きませんか?』
正直このバカ猪女を連れてくのは、抵抗があるが……ブロンズちゃんはついてきてもいいみたいな顔してるし……まあいいか。でも、アミさんは何て言うかだが……。
『おお!? こんな所に猪が!?』
言ってるそばから、アミさんが戻ってきた。普段モンスターが出ない安全地帯に、モンスターが居るのだから驚くのも無理はない。
『アミさん!?』
『アミお姉ちゃん!?』
『ふぇ? どちら様ですかぁ?』
『ダスト君、ブロンズちゃん! 下がって!』
アミさんは目にも止まらぬスピードで、バカアホ猪女を斬ろうとしたので、俺が仕方なく、あくまで仕方なく、バカ猪女の前に出て止めに入ろうとした。
『アミさん! ストーップ!』
俺は懸命に、本当に懸命にアミさんに向かって声を張ったのだが――
『痛いですぅぅぅ!』
どうやら遅かったようで、バカアホ猪女はアミさんに一太刀浴びせられてしまった。致命傷はなんとか避けたようだが、傷から出血した様と苦悶の表情が痛々しさを物語っている。めっちゃ痛そう。
『え? あ? ていうか、この猪しゃべらなかった? え? どういうこと?』
アミさんは喋る猪に驚愕の表情を浮かべ、軽く混乱した。
『あの、実は……』
俺は、アミさんにこうなった経緯を説明した。
『ふむふむ……なるほどなるほど……うん、分かった! 君も私達についてくるといいよ!』
飲み込みが早いアミさんは、みどりちゃんを快く受け入れてくれた。
『本当ですか!? ありがとうございます!』
『良いってことよ! それに勘違いとはいえ、私の剣がみどりちゃんを傷つけてしまったわけだし……ごめんね、痛かったよね?』
『いえいえ、大丈夫ですよぉ、私、元々頑丈な方だし、しかも猪になってから更に頑丈になったので、剣が刺さったくらいじゃ、致命傷にもなりませんよ、かすり傷です!』
ドヤ顔で、こんなこと言っているけど、さっき痛いですぅぅぅ! って泣いて叫んでたろうが。しかも未だに血がドピュドピュ吹いてるし。本当に大丈夫なの?
『でも、一応心配だから、回復薬を投入させてもらうよ』
『はーい』
アミさんは、バカ猪女の頭までジャンプし、傷口に液状の回復薬を染み込ませた。すると、見る見るうちに傷口が塞がっていった。
『これでよしっと!』
『凄い! 貴重な回復薬をありがとうございますぅ。アミさん良い人ですね!』
勘違いとはいえ、お前を傷つけた本人だぞ? そんなすぐに良い人認定していいのか? だから詐欺に遭うんだぞ。
『ああ、あと、赤髪ちゃん達には説明したよ。後から合流しましょうってね、あと、どうかご無事で……とも言ってたよ』
『アミさん、ありがとうございます。赤髪ちゃん……すみません』
『それじゃ、行きますか』
アミさんが指をパッチンと鳴らすと、大きな紋章が地面に浮かび上がった。その紋章から、車のような乗り物がワープしてきたように出現した。
『なんだこれ!?』
『おー、ダスト君は、見るの初めてだったかな、これは、ク・ルーマという乗り物でね……このアクセルで走らせたり、時にはブレーキを使って止めたり、このハンドルで進行方向を決めたり……と、色々できるんだよ』
まあ、要するに“車”か。ク・ルーマってまたネーミングが壊れてるよ。
『さあさあ、乗って乗って』
アミさんは持ってきてくれた俺達の荷物をトランクに乗せ、手招かれるままに、助手席には俺が、後部座席にはブロンズちゃんが乗ることになった。問題なのは、この大きなバカ猪女だ。とても車内に入り切らないほど大きい。どうやって乗せようか?
『ふぇぇ、私はどうすれば……』
『小さくなる魔法かけるから、そこから動かないで』
『わ、分かりました』
アミさんは運転席の窓を開け、バカ猪女に向けて、縮小魔法をかけた。すると、バカ猪女は犬や猫くらいのサイズに変貌した。なんとも愛くるしいペットのようだ。
それにしても、アミさん何でもできるのな。まるでドラ(ry
『わぁ、凄いですぅ!』
みどりちゃんは、この小さくなる魔法が珍しかったのか、ク・ルーマに乗ることを忘れるほど、感動している。
『はよ乗れや、置いてくぞ』
『ま、待って下さいぃ』
みどりちゃんは、そのまま後部座席のブロンズちゃんの太ももめがけて飛び乗った。
おお、すげえジャンプ力だ。さてはこいつ身体能力高いな? さっきも剣が突き刺さっててもなんとか無事だったし、意外と戦力になってくれるんじゃ……?
『さあて、合計4人……居るね!』
『はい!』
ブロンズちゃんも、みどりちゃんも大きく頷いた。
『いざ火の国へ!』
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次回は、9日か10日に投稿予定です。
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