第535話『一番デカい宇宙船にラスボスいるのバレバレ』
前回の話のエピソードタイトルをつけるのを忘れてました。申し訳ございませんでした。
そして、
お待たせしました。
第535話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
まあ、正直楽勝だった。
空に浮かんでいた他の宇宙艦隊は俺とシャイだけで全て壊滅させた。
あとは地上にいる宇宙人だけだが、既にオベイロンやルカちゃん達がそれぞれ戦っているので、まだ誰も対応できてない宇宙人を倒すとしよう。
俺が目をつけたのが、地上近くにいるのに何故かまだ誰も降りてきてない唯一の宇宙船。他の宇宙船と比べると大きさが段違いな上に、色も赤みがかった金色だ。明らかにこの中に今回のラスボスがいるのだろう。
『グランよりも強いんだろうな』
腕が伸びる宇宙人も戦闘能力は悪くなかったが、俺の敵ではない。これがラスボスならあまりにも拍子抜けだ。まあ、別に戦いたいわけではないが。
『行くか?』
『ああ。さっさと大将倒してこようぜ』
俺とシャイは浮遊魔法で、大きな宇宙船へと向かうが、近くに来たところで宇宙船から砲台が現れ、そこからビームが放たれた。
『なっ……!?』
シャイは咄嗟に剣を取り出してビームを斬ろうとするが、俺がシャイの肩を掴んでそれを制止させた。
『大丈夫だ』
俺は手のひらを前に出して、
『鏡魔法』
長方形の大きな鏡を目の前に出現させた。そこにビームが当たると亀裂の一つも入らずに吸収される。次の瞬間、鏡の中から吸い込んだビームと全く同じものを放った。この鏡はただ映し出すだけのものではなく、ビーム類や炎や雷といった物質系のものを反射させるものだ。防壁魔法ばかり飽きたけど防御はしたいよって人におすすめだ!
そして、そのビームは見事に宇宙船に当たり、ダメージの証である炎と煙が上がった。
ジリリリリリと緊急音が鳴る。宇宙船の異常を船員に知らせる為だ。船の修理をする者、操縦席にいる者。そして――敵を排除する者に割り振られた。
まずは宇宙船から二匹の宇宙人が現れた。双方ともに羽虫を思わせる羽をブンブンと振るわせており、腕はカマキリのような形をした鋭利な刃物になっている。
こちらに向けて刃物を振り上げると、俺は鏡をしまって、代わりに剣を大量に出して浮かせた。
鏡魔法はビームや魔法に対してのみ反射する事ができるが、物理的な攻撃には効果がないどころか、あっさり破壊されるほど脆い。まあ最悪盾に使うことはできるが、防壁とは違い、普通に壊れるので、さっさと違う魔法を発動した方が早い。
『浮遊魔法“自立戦闘”』
空に浮かぶ無数の剣は、襲い来る虫に向けてミサイルのように飛来する。
空気を裂く勢いで2匹の虫をザクザクと連続で突き刺し、蜂の巣にする。
虫共は為す術なく緑色の血を垂れ流しながら、地に墜ちた。
『この程度か』
まるで雑魚のようにあっさりと葬ったが、あの虫共はそれなりに戦闘能力は高かった。具体的には俺と最初に会ったばかりのあおいちゃんとほぼ同等かそれ以上くらい。
まあ何が言いたいかというと、俺が強くなりすぎた、ということだ。
あの頃の俺が今の俺を見たらびっくりするだろうな。憧れの俺TUEEEEEEEEEEEEEEEだもんな。
“あの真実”さえ聞かなければ、きっと今の俺も調子に乗って舞い上がったんだろうな。
『つまらないな、本当に……』
誰にも聞こえないくらいの僅かな声量だが、ボロっと口に出してしまった。
『行くかシャイ』
『あ、あぁ……』
どこか上の空なシャイ。俺が強すぎる故にあまり自分の存在価値を感じないのだろうか。別にいなくなってほしいわけではないが、この程度なら俺一人で十分なのは確かだな。
でも、あえて口にはしない。めんどうだからな。
俺達は無事に宇宙船の中へ侵入することができたが、入口に待ち受けていたのは銃を持った宇宙人の大群だった。
『大人しくしろ侵入者!!!』
銃口の視線が全てこちらに集まっている。どうやら待ち伏せされていたようだ。
『まあ予想はしていた』
さっきの虫共がやられた所は目撃しただろうし、侵入者が入口から入ってくることも分かっていただろう。
残念ながら俺もシャイも無策で挑むほどバカではない。
『防壁魔法』
超絶便利すぎる魔法を発動する。これで敵の攻撃は全て通らない。
『敵は容赦するな、撃て!』
一斉射撃が始まった。素の力でこれだけの弾丸を避ける自信は皆無だが、魔法があればどうにでもなる。
案の定、全ての弾丸は壁の前で弾かれ、あえなく地に墜ちる。
『な……銃弾が落ちた……!?』
『おい、銃のメンテナンスはどうなっている!?』
『いや、間違いなくメンテナンスはやってある!』
『じゃあ何で弾丸が落ちてんだよ!』
『そんなの知るかよ!』
宇宙人は武器の種類が乏しいのか、銃弾が塞がれたという発想がなく、銃の不具合を疑っている。
俺は宇宙人に聞こえないように、念話魔法でシャイと会話する。
(シャイ、どうやら宇宙人、魔法を知らないらしい)
シャイは俺に視線を向けた。何か言いたそうだが、シャイは念話魔法を使えないので、伝わるわけがない。だが、それでいい。一方的でもこちらの情報を伝えられるだけで十分だ。
(魔法を使って脅せば、大人しく投降してくれるかもしれない)
そう念話すると、シャイは訝しい目でこちらを見た。なぜ?
(何か思うところがあるのか?)
と、言ってみるが、口を開かぬシャイの答えを伝える手段は喋る以外にない。書く物は魔法で生成する事はできるが、そこに魔力を使うくらいなら――
『喋っていいから話してみ』
『……いいのか?』
『あぁ、宇宙人もビビってそれどころじゃないみたいだしな』
とはいえ絶対に相手に聞かれたくない情報もある。その時は念話で話すつもりだ。
『それで何が不満なんだ?』
『不満じゃない。ただ、先ほどのまでの貴様は侵略者を一匹残らず殺すスタンスだったはずだ。にしてはずいぶんと甘いと思ってな』
シャイの言う通り、確かに俺がグランドベース号を襲撃した時は一匹残らず容赦なくブチのめしていた。にも関わらず、今回は戦わずに投降させるという選択をしたことに違和感を覚えているようだ。
『なるほどな』
念話に切り替える。
(シャイ、それは誤解だ。侵略者を投降させるのは、あくまで魔力を節約する為であって、無血開城が目的ってわけじゃない)
いや、まあ全員葬ってもいいんだが、この船の奥にいると思われるラスボスがどのくらいの強さか分からない以上は、なるべく魔力を残しておきたい。いくら強くなっても、どうしても頭で勝手に自制しまう癖があるのだ。
『ああ、そういうことか』
シャイは俺の説明に納得したようだ。
『変なことを聞いて悪かったな』
紫色の霧が充満してきた。宇宙人の奴等が何かしてきたようだ。まあいいか。
『いや、いい。シャイからすれば完全に矛盾した行動だった。疑うのも無理はない』
この霧は毒素が含まれているようだが、既に“あらゆる毒を無効化する結界”を張ってあるから心配いらない。
『いや疑っていたわけじゃない。私は――要するに貴様が心配なのだ』
『心配?』
また何か宇宙人共が騒いでいるが、ガン無視を決め込む。シャイの話の方が重要だ。
『ああ、私の記憶違いなら申し訳ないが、貴様は一万年前と違いすぎる』
『違うって、性格がってことか?』
『そうだ。まあ私も口調がコロコロ変わるから人の事は言えないが、貴様は何というか……まるで人が変わったように見える』
『俺自身は何も変わってないが』
『そうではない。うーん、あまりうまくは言えないが……最近何か嫌なことでもあったのか?』
鋭い奴め。そうだ。確かに俺は“あの真実”を知ってから、辛くも面白かった世界が虚しくなっている。故に俺の心の情熱が消えている。性格が変わったように見えるのはその影響が及んでいるのだろうな。
『まあ、そうだな。でもシャイが気にすることじゃない。というか聞いても理解できないだろうし』
『理解できない……?』
『ああいや、決してシャイの頭脳指数が低いってわけじゃない。あまりにも大きすぎる話だからだ』
第535話を見て下さり、ありがとうございます。
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