第534話『美人で優しくて何がしたいのかよく分からない宇宙人』
※サブタイトル入れ忘れました。大変申し訳ございません。
お待たせしました。
第534話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
刃先は柔肌に向けて勢いよく降り下ろす。あまりにも不意の動作に最も近くにいるルカ・ヴァルキリーですら、とっさに反応できない。このままでは己の柔肌からダメージの証である赤い液体を噴射することとなる。
しかし、橋本ルカだけは既に足が動いていた。それは本能か経験か――彼女は懐から出てきた刃を見据え、無駄に血を流す未来を制止する。
『やめて!!!』
ナイフの先が僅かに肌に触れる直前、橋本ルカは、剣をそのナイフの刃に向けて突き出した。
すると、ナイフはどこを貫くことなく弾かれ、回転しながら宙を舞った後は地面に突き刺さった。
『なんで……?』
橋本ルカはパトラの先ほどの行為について問う。
『だって、しょうがないじゃない……!』
パトラは溢れ出る涙を両手で覆いながら話す。
『だからって、自分で自分を刺そうとするなんて!!!』
『あのね、私達はね軍事部隊なの。依頼を遂行できなければ罰則。ある程度相手の戦力を削ったとかならまだしも、この様じゃあ死刑は免れないの』
『死刑……!』
パトラの立場を理解する橋本ルカ。それほどまでに重い物を背負いながら戦っていたのかと戦慄する。
『だから自分を刺そうとしたの?』
ずっと抱かれていたルカ・ヴァルキリーがそう聞いた。
『うん。だけど失敗しちゃった。あなたが死なせてくれなかったからね。今からまた死のうとしても死なせてはくれないわよね?』
橋本ルカは力強く頷いた。
『そうよね……でもどの道私は殺される。まあそもそも私はあなた達には敵わないし、頃合いだったのかもね』
パトラはルカ達と会った瞬間から相手の実力を見抜いていた。さらに相手が好みの美少女二人であったが故にパトラは自分の人生のピリオドが見えていた。
『ふざけないで!』
簡単に死を選ぶ彼女に、橋本ルカは憤った。
『あなたはまだほとんど何もしてないとはいえ、私達の星を襲っておいて勝手に死ぬなんて許さない! 生きて罪を償って!』
『で、でも……』
彼女はまだ自分の最期を受け入れたままだ。どの道死を抜け出す方法はない。ならば死に方を選ばせてと美女は言う。
『要するにあなたが死なないようにすればいいんでしょ!』
『どうやって……?』
『そんなの簡単だよ! 私達が他の侵略者を倒せばいい!』
『そんなの無理よ……確かにあなたたちは強いわ。私よりもね。でもさすがに数が多すぎる。それに“あの人”もいる』
『あの人?』
『ええ、全宇宙で最強を誇る史上最悪の侵略者よ』
『全宇宙最強……?』
バトル漫画とかで聞いたことがあるであろう単語。抽象的なようで絶望を感じる称号。それはつまり、この世でその者に勝てる者はいないということだ。
『大丈夫』
橋本ルカは確信を持ってそう言った。
『何が大丈夫なの? もう終わりよ私達』
『勝手に終わりにしないで。私達が勝つって言ってるの』
『どうやって……?』
『私達の先生がいるの』
『へぇ、その先生は全宇宙最強なのかしら?』
『うん、そうだよ』
何の根拠もなく、ただ自分の曖昧な物差しだけでそう言った。
『すごい自信ね。でもあなたたちが嘘を言うような娘じゃないのは分かってる』
『お姉さん……』
美女は両手を上げて降参の意を示した。
『私の負けね。いいわ。あなたたちが勝つ方に賭けてあげる』
『お姉さん、ありがとう!』
『それで私はどうすればいいかしら? できる限り宇宙人の戦力を削ればいい?』
既に宇宙人側を裏返っている側に立つ彼女。早速ルカ達に協力してくれるようだ。
『いいの……? 仲間なんでしょ?』
『いいえ、私の可愛い部下達はともかく、他の艦の連中は違うわ。私達はそれぞれ別の軍事機関から依頼されただけで顔合わせとかは特にしてないわ。まあ、イカロスだけは知った顔だけど』
『そうだったんだ。じゃあそういうことなら力を貸して。オベイロンさんには私から言っておくから。パトラさんだけは私達に協力してくれたって』
オベイロンにそう言えば、パトラは侵略者ではなく共に世界を救ってくれた英雄になるかもしれない。ただ最初は侵略者だった事実は変わりないため、厳しい判決を下される可能性もある。
『別にそんなこと言わなくていいけど、分かったわ。ありがとね』
パトラは立ち上がり、橋本ルカと握手をした。その後、ルカ・ヴァルキリーにも同様の対応をし、今後の戦略の為の会議をするのであった。
『ところでパトラさんの部下はそのままでいいの?』
未だに石化したまま、道端のオブジェクトと化している。
『うん、彼女達はこの仕事に誇りを持ってたから。きっと裏切った私を軽蔑する。今石化を解いたら私達を襲うでしょうね』
謀反を起こした立場ではあるが、大切な部下を傷つけるわけにはいかない。
『この戦いが終わったら、石化を解除するわ。そこで私は彼女達に謝罪して、それから軍事機関を退職する』
『それからどうするの?』
『そうね……まだ決めてないわ。でもその前にこの星の人達に償いをしたい。だからそれが終わってからね。後の事を考えるのは』
『そっか。分かった。もし後の事が決まったら教えて。パトラさんのやりたい事があれば私も手伝うよ!』
『わ、私も……』
明るく元気な橋本ルカに対して、ささやかながらに手を上げるルカ・ヴァルキリー。
『二人共……もう本当に良い娘たちなんだから』
パトラは目から汗を流しながら、二人を抱きしめた。
(ねえ、この娘たちの先生さん。あなたが羨ましいわ。だってこんな可愛い娘たちに慕われているんですもの。嫉妬しちゃう。だから、どうかこの娘たちを悲しませないで。勝って“あの人”に)
パトラの届かぬ思い。知らぬ間に、まだ邂逅せぬ相手に彼は託された。
第534話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
前にも言ったかもしれませんが、話に一区切りついたら、ずっと放置してた改稿や設定資料の整理・作成をしたいと思っております。その期間はまた更新頻度が下がってしまうと思います。その時は大変申し訳ございませんが、お待ち頂けますと幸いです。
色々とぐだぐだですみませんが、何卒宜しくお願い致します。




