第529話『全然煽りとかじゃないんだけど、艦に自分の名前つけるってどうなの?』
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『こちらから行くぞ……!』
ボスのグランは、そのままの位置から腕を振りかぶると、某ゴムの人のように腕が伸び、黒を纏うハンドが目前まで迫る。
『うわっ!』
だが、伸びた腕は俺の顔面に触れる寸前で防壁に弾かれた。
伸びる手には驚いたが、常に防壁魔法を張ってるので、そもそも俺に触れることすらできないのだ。
『何か透明な壁を張っているな?』
グランは謎の壁に怯えるわけでもなく冷静に分析した。この瞬間からこいつは防壁魔法の対策を考えているんだろうが、そんなにすぐに思いつくものでもない。
なるほど、なかなか頭のキレる宇宙人のようだ。
『面白い』
『!?』
グランは気が狂ったのか、伸びる腕をひたすら連続で壁に撃ち付けている。しかも連続で殴ってるせいか、狙いがうまく定まらないようで、壁の端から端までをランダムに叩いている。
『こいつ、何がしたいんだ?』
ガンガンガンと防壁が殴られる音が響く。だが、どれだけ殴っても防壁にダメージはない。グランは完全に無駄撃ちをしてるが、どうもただ殴ってるだけには思えない。
嫌な予感がするって程じゃないが、あまり良い感じではないな。
俺は一応念の為に未来推測魔法を使ってみた。あくまで推測でしかないが、正解率は高いから結構信頼できる。
『なるほど……そういうことか』
結論から言うと、最終的には防壁は剥がされる。どうやらグランはただ適当に殴ってるわけではなく、まずどこからどこまで壁があるのかを確かめているようだ。それから壁の端と端を掴んで、投げ飛ばすという魂胆だ。
なるほど、だからあちらこちらに拳を突き出しているんだな。
確かに防壁魔法にはサイズの限界がある。これは要するに透明な壁を真ん前に置いてあるに過ぎない。その壁の果てを超えた所に手が入り、力さえあれば邪魔なものを退かすように壁を除けられる。
『アンタの狙いは分かった。それならこれはどうだ!』
俺は怪力魔法で自身を怪力にし、逆に俺が防壁を強い力で押し退かした。
勢いよく走り出す透明な壁は、音だけを響かせてグランに迫る。
透明である為、何が起きているのかグランには知る由もない。
『なに……!?』
グランは突き出した拳を弾かれると、直感が働いたのか、瞬時に伸ばした腕で向こうの壁を掴み、ブランコように宙を駆ける事で回避した。
結果、防壁は残された玉座を押し潰し、その向こうの壁をえぐった。
『なるほど、あれは危険だな。だが、これで壁は剥がれた』
蜘蛛のように壁に張り付くグランは、その位置のまま、大きく息を吸い込み、口から炎を放射した。その範囲は今の俺の位置まで余裕で及ぶ。
『水魔法』
俺も張り合うように、大量の水を放射して完全消火を狙う。
『甘い! 我の炎はただの水では打ち消せない!』
『なに……?』
水のビームと炎のビームが衝突した。確かに炎は水に触れているにも関わらず、一切消火していないし、消火できる気配もない。それどころか水が押されている。
『なるほど』
慧眼魔法で覗いてみたところ、グランから放たれた炎は水の効果を打ち消す能力があるようだ。これは魔法や精霊等の力ではなく、その種族の特性としての能力らしい。
なかなか面白い能力だ。ぜひ参考にしたいところではあるが、さすがに他の種族の特性を使える魔法はない。況してや宇宙人、未知の存在であれば尚更だ。
『残念だ』
『何がだ? 貴様の勝ち目が無くなったことか?』
戦闘中に会話する我々。
グランはこの勝負は自分に利があると考えているらしい。まだまだ俺の記憶はこんなものではないとも知らずに。
『たかが自分が放った炎が押しているからって、ずいぶん余裕なんだな』
『どういうことだ?』
『俺の力がこんなものだと思っているのかと聞いているんだ』
『なんだと……?』
『見せてやろう』
俺は放った水に魔力を込めて勢いを加速させる。だが、これだけではグランの炎を消すことはできない。
『こんな芸当が……? だ、だが我の炎は水そのものを通さない。どれだけ勢いを上げたところで無駄なものは無駄だ!』
『誰がこれで終わりだと言った?』
『なに……?』
はいはい、テンプレテンプレ。以前の俺なら歓喜のあまり踊りだしただろうが、今は我ながら気持ちが悪いという感情しか湧いてこない。
『この勢いが強いだけの水流に、光を加えたらどうなるかな?』
俺は水流の中に光魔法を発動した。すると水を光が包み込み、水が炎に一切触れなくなった。まあ要するに光を盾にして押し切きれるってことだ。
正直原理や理屈は分からないが、これなら光がグランの炎を裂けるように進み、そのままグランに直接攻撃をすることができる。……はずだ。
『行け!』
すると、光は水流を抱えたまま予想以上の速さと威力で炎ごとグランを貫いた。
『うがああああああああああああ!!!』
グランは悲鳴を上げながら、床に叩きつけられるように落ちた。
『へえ、こいつは予想以上だな……!』
名付けて“水流光弾”。ネーミングセンスに自信はないが、我ながら良い感じの必殺技ではないだろうか。
やべえ、何か楽しくなってきた。もっと色々な魔法を組み合わせて試したい……けど、遊んでるわけにもいかないし、早く終わらせるか。
俺はシャイの方を向いてみる。敵であるボロルはシャイに沢山の傷跡をつけられ、満身創痍となっている。もはや立つことさえ苦しい状態だろう。
『うん、シャイの圧勝だな』
それにしてもこの宇宙人達、思ったよりそんなに強くなかったな。このレベルならオベイロンやルカちゃんでも十分倒せただろうに。
じゃああの予知夢は何だったんだ? なぜオベイロンもルカちゃんが倒れていたんだ?
『――嫌な予感がする』
俺は這いつくばるグランの元へ駆け込む。
『おい、この星を襲ったのはお前たちだけか?』
『ククク……今頃気づいたか……』
『しまった!!!』
つまり、こいつらは襲来してきた奴等の一部に過ぎなかった。
俺は窓を覗き見た。
『嘘だろ……!?』
――もう既に精霊の星には、別の宇宙戦艦がすぐ近くまで迫っていた。
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