第527話『気持ち悪い』
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俺はその後も醜いゴミのような奴らをお掃除にした。俺だって殺しは趣味じゃないが、こんな悪意に満ちた奴等を放置するわけにはいかない。
鳴り止まない悲鳴。大規模にこびりつく血と血。たまに血も見かけるが、そんなことはどうでもいいし、気分も悪いからさっさと終わらせたいのが本音だ。
気がついたら、もう増援は来なくなった。あれだけ響いていた悲鳴も、今は閑古鳥が鳴くような静寂がこの場を支配している。
ということは、
『もうほとんど狩り尽くしたってとこか』
だが、探知魔法で調べた結果、この先の部屋に3匹と、さらにその先の向こうの部屋に1人いる。
その1人って――そうか、最初の宇宙人共が話してたさらわれた奴隷か。
『……』
先にその奴隷を解放するか。1秒でも早く助かりたいだろうし。
俺はその奴隷がいる部屋に足を運んだ。
ドアを開けると――
『あぁ……遅かったか』
そこは暗がりの倉庫だった。唯一の明かりはろうそく。空調もろくに効いておらず、真冬の国を思わせる極寒である。
そこに古びた黄土色の布を纏う少女がいた。見たところ普通の人間のようだが、異常に痩せ細っている。きっと、ろくに食事も与えられなかったんだろうな。それに傷跡があまりにも多い。
なぜそんな状態になってるのか、その経緯は想像したくない。
逃げたくても手足についた鎖が邪魔をする。だが、その鎖も今はもう役目はあってないようなものだ。
その少女は、もう息をしていないのだから。
『……』
今まで苦しかったろうな。あのクズ共に散々弄ばれて、痛めつけられて。
『仇は取ってやる』
俺はそう言い残し、踵を返した。その刹那――
『ん?』
何かの気配を感じ取った。それは人なのか怪物なのか分からないが、とにかくこの部屋に何かが現れたのは確かだ。
しかし、どこを見回してもそれらしい姿は見当たらない。こういう時に超絶便利な探知魔法を発動しても、特に何も異変はない。
『誰かいるのか?』
そう話しかけても、返事はない。音もない。
『?』
――いや。
『今、お前光ったよな?』
お前とは、そこにある死体を指している。
そう、先ほどその死体の左胸あたりが一瞬だけ光った気がした。よく目を凝らしてないと気が付かないレベルなので、気のせいで流されそうになるが、間違いなく光った。
『やっぱ光ってるよな』
探知魔法によると、この光は人工的なものではなく、光魔法のようだ。光の力でこの死体に何かをしようとしている。
『ほう、これは光魔法か』
魔法なら何があっても不思議ではない。が、この世界の場合は話が違う。
『あれ、でもおかしいな? この世界に魔法はないはずだが?』
ここは精霊の世界。魔法に似てるものはあれど、魔法そのものは無いはずだ。
つまり、この光魔法を使った者はこの世界の人物ではない。
まあ、それか宇宙人は魔法が普通に使える可能性もあるが、この光魔法には見覚えがある。
――ドクン。
心臓が動く音が聞こえた。それに合わせて光がつくようになった。
『なんだ……? 何が起きている?』
どんどん鼓動が早くなっていく。それはまるで音楽を奏でているように、韻律を刻んでいる。
そして――
少女はカッと目を見開いた。なんとなく、こうなる予感はしていたのに、俺はその力強い眼光に気圧されてしまった。
死体だった者は次第に身体の部位を動かしていく。それはまるで身体を慣らす為の行為のようで、彼女は実は人間ではなく機械か何かではないかと推測した。
一通りの動作を終えた後、彼女は無表情で立ち上がった。この辺もまるで人間味を感じなかった。
『…………スト』
ようやく口を開いたと思ったが、何を言いたいのか分からない。ストって何だ? トーストかな?
彼女の方もうまく喋れない事に違和感を覚え、手のひらを俺の方に向けてタンマのポーズを決める。
改めて咳払いをすると、
『わた……わたし……わたしは』
『ん?』
『わたがし』
『私は綿菓子?』
彼女は首を横に振った。
違うのか。
『私、私は……シャイ』
『シャイだと……シャイっていうと、偏見でカヴァちゃん相手に舐めプした奴?』
『黙れ!!!!!!!!』
シャイはブチギレた。
『ごめんごめん。俺とも戦ったよな』
『ああ、そうだ。そうだったな。懐かしいな。お、うまく喋れるようになった』
さっき叫ぶようにキレたからか、まともに喋れるようになったようだ。
『そりゃ良かった。で、シャイが何故ここに?』
『話せば長くなる。今は侵略してきた宇宙人共を倒すのが先じゃないか?』
どうやらシャイも状況を把握しているらしい。
『確かにそうだな』
『この宇宙船の船長は隣の部屋だ。そこにはそれなりに強い幹部とかなり強い船長がいる』
なんと戦力も把握してるのか。助かるわ。まあこの船に居たから知ってるのは当然か。
『なるほど。情報提供ありがとう』
『私も行こう』
『シャイも行くのか? その身体で戦えるのか?』
あまり言いたくはないが、とてもまともに動けるような身体ではない。散々弄ばれたであろう傷跡も目立つし、何より異常に痩せ細っている。いくら戦闘能力の高いシャイでも、これでは戦うどころかまともに身体を動かすことも難しいだろう。
『大丈夫だ。こんなもの光魔法“回復”でどうにでも』
『ん? 光魔法ヒーリング?』
『ああ、光魔法を用いた回復だ。治癒魔法とあまり変わらんがな』
『いや、そうじゃなくて……ああ、もしかしてシャイって……未来から来たのか?』
『未来ってどういうことだ?』
『ああ、俺と初めて出会った頃よりは未来かってことだ』
『ああ、そういうことか。というかそうだったな。まずそこから説明しなくてはいけなかったな』
とりあえず今目の前にいるシャイは一万年後から来たという事だけは分かった。〇〇魔法“何とか”というのは、俺が魔王城に召喚された300年後に使われた進化魔法である。一万年前では存在しないものだ。
『でも話せば長くなるんだろ?』
『そうだな』
話を戻して、
『この船に乗ってるクソみたいな宇宙人をブチのめしにいこうか』
互いに不敵な笑みを浮かべると、その場をあとにした。ありったけの殺意を纏って。
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