第525話『つまらないな』
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精霊世界の街並みは現代の日本と特段変わらない。異なる点があるとすれば、当然のように人間が精霊と共存していること、精霊の力という魔法のような力が存在していること。それだけだ。
今回は付き人であるクラウディアさんと出かけることになった。実質デートのようなものだが、俺自身は正直あまりそんな気はしなかった。美女と2人きりだと言うのに、一切の気持ちの昂りがない。ただ共に歩いただけ。街を見て回っただけ。施設の中に入ってサービスを受けただけ。
具体的に言うのなら、ゲーセン行ったりカラオケ(知らん曲ばかり)行ったり、某アニメ専門ショップ(知らんアニメしかなかった)に行ったり、あとクラウディアさんの要望で服屋にも行った。だけど、それはあくまで俺を引き立たせる為なので、俺が着せ替え人形になっただけだった。私服のクラウディアさんも見てみたかったのだが、本人はあくまで仕事中だからと、メイド服から着替えることはなかった。
え、楽しそうだって?
いや、何も面白くない。本来ならば美女であるクラウディアさんとこんな時間を過ごせるなんて、とてつもない豪運だ。だが、今の俺の心はどんなに快楽を注いでも、空いた穴が快楽を逃がしてしまう。結局、この時間を無駄に過ごしていると感じてしまっている。
『クラウディアさん』
『はい』
『楽しかった。でも疲れたので、そろそろ帰ります』
笑顔でそう言い切ってみせたが、完全に嘘だ。
『かしこまりました』
クラウディアさんにはこの気持ちは伝えてない。無論、仏頂面な顔も一切出してない。
“いつものダスト”らしく適当に雑談しながら、オベイロンの豪邸へ戻った。
その後はルカちゃんとカヴァちゃんと再会し、適当に話を済ませた。どうやら2人も付き人からノルン様の意図を聞いたらしい。故郷にいるにも関わらず、2人とも帰る時が待ち遠しいと言っていた。まあ、この世界に良い思い出が無ければ、そうなるよなぁ……。
空が夜色になると、俺達は豪華な夕飯を頂き、バカでけえ風呂に入り、超絶ふわふわな布団の中で明日を待った。
『……あまり変わらねえな』
世界が違うだけで、ほぼいつも通りに過ごした俺がそう呟き、
やがて意識は夢の中へ――
――――――――――
《夢の世界》
結論から言うと精霊世界は滅んだ。
それは午前7時くらいのこと。突如現れた何者かによって、建物は焼き尽くされ、人と精霊の9割は無惨に殺された。
これは何だ?
何があった?
宇宙から飛来した侵略者達が現れたのだ。オベイロン達が立ち向かったが、激闘の末、全員倒された。それもゴミクズのようにぐちゃぐちゃに、虫を解体する無垢な子供のように。
もちろん、ルカちゃんやカヴァちゃんも加勢したが、あえなく敗北した。原因は実力不足ではなく、敵の数が多すぎたため。
平和そのものだった世界は、全て赤く彩られた。まるで世界そのものが傷を負って血を流しているかのように。深く、深く。
何故こうなった?
そういえば、俺がいないな。どこだ?
あぁ、部屋で寝てたのか。本来なら気づくはずだが、“真実”を聞かされて以降、どうも緊張感が完全に消失してしまった。だから何が起こっても、『ふーん』で済ませてしまう。
はぁ、つまらない。
――――――――――
俺は夢の世界からログアウトした。まあ、これは夢じゃなくて未来予知なんだが。
現在の時刻は午前3時。完全に二度寝を決行する時間帯だが、未来予知を見た限り、そうも言ってられないようだ。
先程の夢は、今日の午前7時……つまり、4時間後に起こる出来事だ。ニワトリが朝を告げる頃には、この世界は血に染まっているだろう。
まさか相手が宇宙人とはな。しかも、相手の方が数が多いからとはいえ、オベイロンやルカちゃんとカヴァちゃん程の実力者を倒すとはな。
面倒なら、このまま放っておくという手もある。そうすれば、あのふざけた結末に行かない可能性もある。
……しかし、俺は先程の未来予知を頭の中に映し出す。次にオベイロンやクラウディアさんを思い浮かべる。
彼らは幸せになるが、行きたくない未来に行き着くか、彼らが殺される悲惨な未来を通るけど、ふざけた結末を避けられるルートの二択。
どちらがいいのか?
……。
……。
うん、俺の中の快楽が前者を選べと言っている。俺が今どういう立場にせよ、快楽を叶えたいという欲望は少なからず存在するようだ。
全くの虚無じゃない。それが分かっただけでも少し安心感を覚えた。
とはいえ、あいつの思い通りにはさせたくない。今回は大人しく引かれたレールの上を走るとしよう。主人公らしくな。
『……行くか』
俺はこっそりオベイロンの豪邸を飛び出し、敵がいる宇宙船まで空を駆けた。
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