第521話『虚無、あまりにも虚無』
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役目を果たした俺は、ブロンズ様達と共に水の国の研究所まで足を運んだ。本来ならば、みんなはここに用事はないはずだが、俺達異世界組のお見送りをしたいそうだ。
『ありがとう』
『おかげで解決した』
任務達成の報酬の一つとして、お礼の言葉と可愛らしい笑顔を貰った。美少女好きの俺としては、これだけでも破格の報酬なのだが、無論これだけではない。
『じゃあ約束の世界線の転移の準備をするね』
『待っててね』
そう言って二人は、二段式の冷蔵庫みたいな形をした機械をいじりはじめた。ピカピカ光ってるボタンをタイピングするようにカチャカチャ押している。何だかよく分からないが、世界線の転移をするにはそれなりの準備がいるようだ。
『どれくらいかかるんだ?』
『えっと……一週間くらい?』
『意外と長いな、てっきりすぐに終わるもんかと』
『世界を渡るには』
『莫大な魔力が必要』
そんなに大量の魔力が必要なのか、と思ったが、他の世界線を渡るほどの業だ。多少の代償はあって当然だろう。しかも、それを俺を含めて3人分だ。ルカちゃんとカヴァちゃんは俺とは違う方法での転移だが、それでもかなりの時間を要する。
『なら、俺の魔力を注いだら早く転移できるか?』
俺の魔力は色んな人の支援により、ほぼ無尽蔵だ。どんなに大きな器だろうと溢れさせる自信がある。
『全然足りない』
『なにィ!?』
『もっと必要』
足りなかった! 心の中とはいえイキってた自分が恥ずかしい!
ハッ!?
振り返ると、ニヤニヤと笑っているブロンズ様の姿がそこにあった。人の弱みを握った後の反応だ。
俺の心が読まれた〜〜〜!!!!!
『ブロンズちゃん、何笑ってるの?』
シルバーちゃんが話しかけた。
『実はお兄ちゃんがね――』
やめろ、それ以上は、言うな……!
心の暴露を止めるため、俺は彼女に手を伸ばした。
まずい、このままだと今後この世界での俺のあだ名が“パンツ大好きイキり野郎”になってしまう!
『おわっ!』
不覚にも足が滑ってしまい、伸ばしきった手がブロンズ様の肩を掴んでしまう。そして、そのまま力を込めると、ブロンズ様も足を滑らせ、男の力に成す術なく、押し倒されようとしている。
まるで恋愛漫画のようなお決まりの展開だが、現実的に考えて、ブロンズ様の後頭部が強打してしまう危険性があるので、俺は咄嗟に彼女を包み込むように抱きしめ、俺が代わりに床に叩きつけられるように仕組んだ。
『お兄ちゃん!?』
ブロンズ様は無事だったが、俺は打ちどころが悪く、頭が………………うまく………………動かない。
『――』
誰か………………喋ってる………………?
意識が……………………………………………………。
――――――――――
《ダストの精神世界》
俺は全てを知った。知ってしまった。
………………知りたくなかった。
それは俺にとって、あまりにも虚しくて、滑稽で。
………………最悪だ。考えうる限り最悪の事実だった。
やはり、俺は特別な人間でも主人公でもない。ろくな能力もないただのクズでしかなかったんだ。
本来、俺には自分な快楽を叶えるほどの力はない。ただ偶然主人公に選ばれて、人形劇のように操られただけだ。
確かこの世界はゲームだと神様は言ってたな。でも、俺からすればこんなものゲームですらない。もはやただの茶番だ。
ある意味ではチートを使って人々を弄び、自分の思った通りにシナリオを作っていく。それが奴の狙いだ。
そんなものに俺は今まで付き合ってきたのか。バカバカしい。付き合ってられない。
――だからこそ俺は、ラスボスを倒し、みんなを解放する。それが終わるまではいつも通りの自分を演じよう。誰にも悟られないように心すら自分を偽ろう。
快楽を求めていたあの頃の俺に――
――――――――――
《ラピスとラズリの研究所》
『ここは……?』
目を覚ますと、見知らぬ天井を視界に収めた。
『あ、俺そういえば……咄嗟にブロンズ様を助けて』
意識を失う直前の記憶を掘り起こして、状況を把握する。
『ああ、それで俺が代わりに頭打ったんだっけな』
でも、まあ特に支障は無さそう。身体は動くし、魔法も多分使える。本当に意識を失っただけのようだ。
『良かった』
重症じゃないと分かると、俺は安堵した。
『それにしても……』
もうこの展開も何度目だろうか。幾度も倒れてはベッドの上に運ばれて、この有り様だ。
あのさぁ、雑な展開すぎるだろ。どんなシナリオ作ってんだよ、いい加減同じような展開から卒業しろよ、だからクソシナリオとかクソ雑魚作家とか言われるんだろうが!
おっと失礼、メタ的な話をしてしまった。今はまだ気にしないでくれ。って、俺は一体誰に向けて言ってるんだか……。
やはり、あの真実を聞いてから、意識をしてしまう。俺達の世界を娯楽のように観察してる人々がいるんじゃないかってね。俺の心もきっと、世界中に垂れ流してるんだろうな……それで嗤われたり、同意されたり、考えすぎか?
まあ、そんなことはどうでもいい。どうせ俺が何をしたって、シナリオは動いていくのだから。
そんなことを思っていると、扉が開いて、ラズリが入ってきた。
『目が覚めたんだね』
『ああ』
『調子はどう?』
『特に、大丈夫だ。不愉快なだけで』
ラズリに対してじゃない。この世界の在り方に対してだ。
『そっか』
ラズリは既に何かを察しているのか、俺にこれ以上は聞いてこなかった。が、俺はあえて質問する。
『もしかして、ラズリは何か知ってるんじゃないか、この世界について』
『………………まあ多少は』
部分的にそう、みたいな答え方でハッキリとした解答ではなかった。
『どこまで知ってる?』
『多分、今の君より少しくらい』
つまり、ラズリもこの世界の真実を知っているってことか。
『ラピスもか?』
『うん、ラピスも知ってる』
『そうか』
ならば、やることは変わらない。
『ラズリ』
『なに?』
『俺は、このシナリオを壊そうと思ってる』
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