第518話『VS盗賊団⑪』
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――なぜなら、ルシウス達も同じように幻覚魔法をかけられたのだから。
幻覚世界の中、俺は確かに暴走していたが、無意識に“勇者ダストの記憶”の中にあった幻覚魔法の対処法である“幻覚解除魔法”を使って、なんとか意識を取り戻した。それにより、不快な幻覚は綺麗さっぱり消え去った。
さすが勇者だった頃の俺は何でもできるな。もはや完全解放した俺に敵はない。多分大抵の事はどうにかなってしまうチート主人公になったのだ。ははは。
まあ、それでもまだゼウスには勝てないらしいが……。
己の慢心を懐にしまった俺は、幻覚世界を抜けて現実世界に帰ってきたのだが、
『ああ、やっぱり――』
奇妙な光景だった。
まず敵である改造人間部隊は全滅していた。にも関わらず、それぞれバラバラの立ち位置で、未だに武器を振るっていたり、独り言を口ずさみながら立ち止まっていた。
どうやら、俺以外の全員は未だに幻覚世界に捕らわれているようだ。
こうなったのは、俺が探知魔法を使って幻覚世界に引き込まれた後のタイミングだろうな。
こんなことなら、ルカちゃんとカヴァちゃんだけでも、幻覚魔法の対処法でも教えとくべきだったな……まあ、でもその当時の俺じゃあ、せいぜい幻覚の違和感を突くくらいしか方法はなかったが、それでも全く知識がないよりはマシだった。
『へぇ、一番早く幻覚を解除したのは貴方でしたか』
術者兼ボスが隠れもせず目の前に現れた。ずいぶんと華奢な美女だったが、その表情と声だけで、その人物が俺の敵対人物リストに載っている事がわかった。
『なるほど。この盗賊団のボスは、■■■。アンタだったか』
特別な力を持つ少女の内の一人だったが、ノルン様に謀反を起こし、その後ノルン様ですら捜索できない隠された存在となった女だ。
この世界線の未来では盗賊団のボスになり、人々に危害を加えていた重犯罪者。人を苦しめる性格のこの女なら、十分に通りそうな未来だ。
『あら、リアクションが薄いですね。驚かないのですか?』
『いや、驚いてはいるぞ。ただ正体が分かった瞬間、確かにアンタならやりそうだ、と納得してしまっただけだ』
嘘偽りなく素直な思いを述べた。本来ならば、めちゃくちゃ失礼な感想ではあるが、相手は敵だ。罵詈雑言も容赦はしない。
『そうですか、まあどうでもいいですけどね』
■■■はどこか憂いを含めた虚無の表情でそう言った。俺の渾身の売り言葉は売れ残ってしまった。
『それで、これからどうしますか? 私を殺しますか?』
『殺しはしない。お前を捕らえて罪を償わせる』
この世界線の事は部外者である俺が決めることではない。あとはルシウスに任せるとしよう。
『警察官みたいな事を言うのですね。貴方のような人には似合わないセリフですね』
否定はしない。
『確かに、俺に正義を語る資格なんてないし、というか正義なんてクソ喰らえだ!』
正義を盾に虐げられたり、正義教団というイカれた連中に散々振り回されてきたんだ。それくらいの暴言も出てしまうものだ。
『ええ、分かりますよその気持ち』
『お前と一緒にするな。お前はただ人を苦しめたいだけだろ』
『フフフ、そうですね。貴方はその正義に苦しめられてきた。だから嫌いなのですよね?』
『よく知ってるな』
『ええ、貴方の事は昔から把握してましたから』
昔とはおそらく一万年前だろうけど、一体いつ俺の情報を掴んだのか。こいつと手を組んだとされる制作者の権限とやらか?
『……それでどうする気だ?』
『どうする……とは?』
『気を取り直して俺と再戦するか? 言っておくが今の俺はおおよそどんな相手でも勝てるだけの自信と経験がある』
“ダストの記憶”に“勇者ダストの記憶”。内一つは他人の経験だが、それでもれっきとした今の俺の実力だ。そんな俺に勝てるのは神くらいのものだ。多分。
未来推測魔法を使って、■■■との戦闘のシミュレーションを頭に想像させてみても、やはり俺の圧勝。どんな手段を使おうと、俺の前では一瞬で塵芥となる。
『ええ、分かってます。貴方を絶望させるという計画も破綻してしまいましたし、実力でどうにかできる相手でもありません』
彼女は武器を取ることなく両手を上げた。
『降参です。煮るなり焼くなり好きにして下さい。あ、パンツ見ますか?』
無感情になった■■■はスカートをへその位置まで捲り上げた。言うまでもなく下着が目に映ってしまう状態だ。
『見ねえよ』
俺は真意魔法という“心の色”を見る魔法を使った。これは色によって感情や意志が大まかだが、分かるという魔法だ。ぶっちゃけ心を読む魔法の下位互換である。
『なるほど……白か』
『よく見て下さい、黒ですよ』
■■■は履いてる下着の色の訂正を求めた。
『ちげえよ、アンタの心の色だよ』
『心の色……?』
『ああ、これは真意魔法と言って、色によって相手の真意がある程度分かる魔法だ。例えば白なら嘘偽りない心だが、逆に黒なら悪意のある心だ』
『つまり、私の言葉に偽りがなかったから白ということですね』
■■■は正しい解釈を口にした。
『そうだ』
ただし、嘘をついていなくても、元々悪の心を持っていた場合は根っこの部分が真っ黒なんだけどな。
『はぁ……やっぱり“あの方”が居ないと、どうも力が湧きませんね……』
■■■は、寂しそうな顔で天井を仰いだ。
『あの方?』
『どうせ廃棄になったシナリオです。ここで貴方に話してしまってもいいでしょう。ただし、これはあくまでこの世界線のお話ということをお忘れなく』
『ああ』
■■■は、失敗した計画の全貌を話したところで問題はないと判断し、俺に全てを話した。
『――そうか』
あくまで別世界の話と■■■は言っていたが、これで全てが繋がった。これまでの数々の疑問が、パズルがハマったように解消されていく。
だが、気に食わない。こんな人を馬鹿にしたような計画……早急に潰さないと。
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