第516話『光の彼方』
遅れてすみません。
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第516話の執筆が完了しました。
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ブロンズサーチが起動した。
心を読む魔法を常に多方に使い続ける事で、ボスの心を察知し、その場所を暴くという作戦だ。ただこの作戦には欠点が二つある。その一つはかなりの集中力がいるので、周りに気が配れないという点。どんなに鋭利な槍が降ろうと、某赤い髪の怪しい女が堂々とスカートの中を盗撮していようと、気付くことはないだろう。
だが、幸いそこはルシウス達がカバーしているので問題はない。どんなに獰猛なモンスターが襲ってこようと、スカートをめくってくる変態がいようと、難なく対処してくれるだろう。
本当に問題があるのはもう一つの欠点だ。それは、魔法を使い続けるということは、魔力切れの恐れがあるということだ。至極当然のことだが、何としても突破口をく見つけなければ、この戦いは敗北に終わる。
『………………』
辺りに視線を送るブロンズ。しかし、どこを見回しても、それらしい心は見当たらない。
『見つからない……ちょっとあっちまで移動するわ』
心を読む魔法には当然対象範囲というものがある。人によって様々だが、この世界線のブロンズの場合は大体5メートルほど。対してこのフロアは半径50メートルほどだ。故に移動せずして、このフロアの全ての心を読むのは不可能だ。
『うーん、ここもいないわね――――』
『■■■ーーーーーー!!!!!』
改造人間の魔の手がブロンズを襲う。
『ブロンズちゃん!』
その刹那、シルバーは咄嗟に弓を射る。すると、見事に改造人間の手に矢が刺さり、ひるみを見せた――が、それは一瞬だけで、すぐにもう片方の手が再びブロンズを襲う。
『ああ――――』
シルバーは咄嗟にブロンズの前に出て、愛する妹の盾となる。
このままではシルバーが改造人間の手によって、血を流すことになるだろう。悔やんでも悔やみきれない悲惨な未来を迎えることになる。
『シルバー――』
危機的状況に陥った妹達の元へ向かうゴールド。しかし、世界一の陸上選手が全力疾走をしても届かない距離だ。
だが、それでも彼女の足が止まることはない。愛する妹の悲惨な姿など見たくない。しかし、残酷なほど離れている彼女達を救う手段はない。
このまま妹を失う未来を迎えるしかないのだ。
絶望の未来を迎えようとするその時、ゴールドの中の“誰か”が呼応する。
――――――――――
《■■■視点》
奴がいる。近くに私のよく知る奴が。
私は転生してから、この世界線にやってきた。どうやら、私のいた世界線と同じような世界だが、根本的に異なる箇所がある。
それは――神がいるか否かだ。
私がいた世界線では幾万年経とうと、神が居座ったままだが、この世界線では神が存在しない。故に私達■■も無かった事になっている。
まあ、■■としての権力がないだけで力そのものは健在だ。戦うことはできる。が、私の肉体ではなく、私の魂の居候先である娘の身体を借りる必要がある。幸いにもこの娘の身体能力は高く、私の魔法や戦闘技術を吸収しやすい。おかげでほとんど苦することなく、存分に戦える。
そんな優秀な娘の名前はゴールド。奇縁なことに前世の私は彼女の妹であるシルバーの身体に居候先していたのだ。
シルバー……何だか懐かしいな。お前は少し内気で恥ずかしがり屋で、泣き虫な一面もあった。でも、お前は妹を守るために弓を射る勇気もある。が、ダストの時は残念ながら死なせてしまったがな。まあ、あれは相手が悪すぎた。何せ相手は■■■の妹だからな。
■■■の妹……秋■夏■は残虐非道な姉に負けず劣らずの異常者だ。私も幼馴染のよしみで会ったことはあるが、おそらく彼女の思考を理解できる者はいないだろうな。
……あぁ、名前は分かるのに文字が出てこない。まるで、世界が概念の採掘を拒否しているようだ。というか、文字通りそうだと思われるが。
試しに――
私の名前はシャイ。最終的に光の女神と呼ばれ、神の居城に仕えていた女神の一柱だ。
お? 私の名前ははっきりと文字が浮かんだ。自分自身の事はいいのか?
■■■、■■、■■、■■■。
他の■■の名前を出してみたが、ダメか。もうこの世界線には存在してないからだろうか?
でも、近くにいるはずの■■■も何故か名前が出てこない。どうやら、存在の有無は関係ないようだ。
ゴールドを通して私なりに研究してみたが、この世界線はなぜ■■の名前が消えているのか、神として居座っていた■■■は倒されたのか、どの書斎を覗いてみても、何も記されてはいなかった。前の世界もそうだった。過去の記録はろくに残っておらず、歴史の勉強をするのは不可能だった。
このように歴史そのものが封印されているという点ではこの世界も同じだ。知られたくない過去だからこそ、封じたものだろう。
でも、神もいないこの世界で、一体誰が何のために?
探究欲がないわけではないが、今は目の前の事に集中だ。とにかく■■■を止めなければ……!
私は身体の居候先であるゴールドに呼びかけた。
え? んなことは分かっている? さっさとお前も協力しろって?
むぅ、偉そうな奴だな。前の世界線のお前はそこまで高圧的じゃないはずだがな。私がいる影響なのか?
まあいい。そこまで言うなら遠慮なく私の魔法を使うがいい。
『ああ、そうさせてもらうぜ』
――――――――――
シルバーが改造人間に■されるまで、あと1秒。
『光魔法“光の騎士”』
刹那――ゴールドは光い鎧を纏い、光でハンマーをコーティングした。この間0.03秒。次に足を踏み出すまで0.01秒。それから床を蹴り、改造人間を剣で貫くまで0.15秒。
光という名にふさわしい速さで、悲惨な未来は回避された。
『お姉ちゃん……?』
『ゴールド姉……?』
ゴールドの神々しい姿に唖然とする妹達。血縁者ですら見たこともない姿。
顔、匂い、体格に至るまで全てがゴールドそのものだが、まるで絵本の世界の騎士のような、幻想的な姿であるが故に、妹たちはゴールド本人と認識するまで少しだが時間を要した。
『持たせたな』
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