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第44話『一旦忘れろ』

遅くなってしまい、申し訳ございませんでした。

第44話できましたので、宜しくお願い致します。


※2022年6月12日改稿しました。

※文字数少し多めです。

 今日はいよいよ火の国へ遠征に行く日だ。遠征って言うくらいだから、着くまで相当時間がかかるようだ。


『あの、赤髪ちゃん。ここから歩いていくって事は、キャンプとかするんですか?』


『確かにキャンプはしますが、歩いては行かないですよ?』


『歩かないんですか? じゃあ、何か乗り物に乗っていくんですか?』


『それはですね――』


 それは一体何なのか、その答えを赤髪ちゃんが発する前に、リンゴーン! リンゴーン! という鐘の音のような響き音が魔王城全体に広がった。


 この音は魔王城の玄関のチャイムの音だ。この広い建物全部に聞こえるように大きめの音を鳴らすように設定しているようだ。じゃないと聞こえない可能性あるしな。


 さて、誰もが恐れるはずの魔王城に訪ねてくるなんて、一体どんなお客さんなのか。そもそも結界があるのにどうやって通って来たのか?


『あ、噂をすれば来たようですね』


 噂とは先程会話した火の国への移動手段の部分だろうか。だとすると、車のように高速移動できる乗り物を持っている人物が来たということなんだろうか。


 頭の中でそう推測している内に、その人物は平然と大きなリュックを背負ってやってきた。


『ようこそ、()()()()!』


 巨乳を揺らしながら現れたのは、ベンリ街の武器屋の店主のアミさんだった。


 あおいちゃんの口ぶりから、魔王側と知り合いだと思ってたけど、まさか魔王城に来るとは。


『お、赤髪ちゃん! 久しぶり~! それにダスト君もなんか久しぶりって感じだね』


 なんか久しぶりって何だ。会ってからそんなに日数経ってないと思うんだが……。


『まあはい、本当にお久しぶりですね……』


 思ってもないけど、せっかくお姉さん系の美人アミさんが来てくれたんだから、不快にさせないように話を合わせなきゃ。


『ベンリ街の武器屋の店主でしたよね?』


『そうだよ~』


 俺が前にアミさんと会ったのは、あおいちゃんとベンリ街へ行った時に……行った……時に……あレ――。


 トキ。ト、ト、キニト? トキトキトキトキトキトキトキトキトキトキトキトキキニトキニトトトtttttt――壊れた。壊レタ。■レタ、レタレタレタレタ、螢翫l縺滉ク也阜――。


 エラーが、エ。ラーが、え、らー、が、エラーが発sss――ラーが、エエエエエエエラーがかがががかけからかか、からががごぎがががががが――。




 ――壊れる。



 俺の中の何かが――。



 壊れ――。


 ――一旦忘れろ――


 は!?


 え――――。


『――どうしたの? ダスト君?』


『――――――はっ! え?』


『顔色悪くない? 初めての遠征で緊張してる?』


『そ、そうかもしれないです、あはは……』


 ――何だ? 一瞬、意識が飛んだような……?


『ダスト様、大丈夫です! 今回は私とアミさんがいます。どんな強敵に襲われたとしても、簡単には敗れません!』


 赤髪ちゃんは自信満々にそう言ってきた。まあ赤髪ちゃんの強さは実際見たことがあるから信頼はできるな。


『それは頼もしい限りです……ってアミさんもついていくんですか?』


『うん、私もついていくよ、ちょうど火の国に行きたいなーって思ってたところだから』


 おお、それは嬉しい! ずっとそのたわわな巨乳を見てられ……いやアミさんが一緒だなんて、頼もしい限りだ! だが、アミさんがどのくらいの強さかは知らない。そもそも戦えた事自体に軽く驚いている。


 まあでも赤髪ちゃんが、何かあっても自分とアミさんがいますと、一緒に名前を並べるくらいだから、多分強いんだろう。


『アミさんは、とても頼りになりますよ』


『うーん、それはどうだろうね……武器屋始めてから、武器作ってばっかで、鍛練とかしてないし……ってそうだ! 思い出した! ダスト君に、良さそうな武器作ってきたんだった!』


 アミさんは背負っていた大きなリュックから、ゴソゴソと何かを取り出そうとした。


『あった! これだ!』


 手渡された武器は黒い杖だった。杖なのだが、剣のような形状をしていて、長さは20センチくらいある。かっこいい。


『これは魔法の杖だよ、これがあれば普通に魔法を撃つよりも撃ちやすくなるし、威力も上がるんだ』


『へぇ……』


『ダスト君の特性やステータスに合わせて作ってみたんだ、あとで試しに修練場で撃ってみてよ』


 修練場の存在を知っているということは、何度か来たことあるんだな。


『なるほど、分かりました』


 てか、いつの間に俺のクソ雑魚ステータス情報がアミさんにまで漏れてる……。


 まあ、こうして良い武器を作ってもらったからいいけどさ……いいんだけどさ……何かやるせない気持ちになってしまう。


『あ、そうだ、今、修練場……瓦礫片付けただけで、全然修復してないんだった……』


『ええ!? 瓦礫!? 一体どんな修行したの!?』


 アミさんは事情の説明を求めたが、俺も赤髪ちゃんも目を逸らして黙秘権を行使した。なぜって? だって説明めんどくさいんだもん。


『え? ちょっと、2人共、何で黙ってるのさ?』


『わ、私は、遠征の準備が忙しいので、これで』


 赤髪ちゃんは、アミさんに何も説明しないまま、一目散にその場をあとにした。本人にとってもわりと黒歴史なのだろうな。


『えー、一体何なのさ?』


『聞かないでやってください』


『よく分からないけど、分かったよ』


『ありがとうございます』


『うーん、でもそっか。じゃあ試し撃ちは遠征中に野生のモンスターに出くわした時にしようか』


『そうですね』


 俺は魔法の杖を、いざという時にすぐに取り出せるように、上着の大きめの内ポケットの中に入れた。


『あ、魔法の杖のお代は?』


『ああ大丈夫大丈夫、お代はいらないよ』

 

『え、でも』


『うーん、じゃあ、その代わりといったらなんだけど、ダスト君に聞いてほしい事があって』


『聞いてほしいこと?』


 アミさんは、こくんと頷き、明るい表情から真面目な表情に切り替えた。


『分かりました。俺で良ければ聞きましょう』


『ありがとう、ここだと落ち着かないからちょっと外行こ』


『はい』


 アミさんに言われるがままに裏庭に移動した。ここに来るのは……あれ? 何回目――いやそもそもここに来たことあったっけ?


『ダスト君は、ここに来たことある?』


『いえ、初めて……だと思います』


『そう』


 アミさんはどこか悲しげな顔をして下を向く。


『あの、聞いてほしいことって何ですか?』


『ねえ、ダスト君……()()()()()()()()?』


『え……?』


 覚えてるって、そりゃ、アミさんは誰もが目を引くような美人でしかも巨乳でスタイル良くて、そんな人を忘れるなんて到底無理だろう。


 でも、それだけじゃないような気がする。


『あの、覚えてるってどういう意味ですか?』


『……いや、何でもない、忘れて』


 アミさんはまた悲しい顔をしている。


 アミさんのその悲しそうな顔を見ると、俺の心が引き裂かれそうなくらい感情が荒ぶっている。


『そうですか……』


『おっと、聞いてほしいことはこれだけじゃない、赤髪ちゃんについてだけど……』


『赤髪ちゃんですか?』


 赤髪ちゃんについて俺が現状知ってる事と言えば、真面目で変態で、強くて変態で、メイドで変態で、治癒魔法使いで変態で、メガネがめっちゃ似合いそうで変態で、あとは、変態で変態で変態だな。


『一緒に住んでるから分かると思うけど、まず彼女は、真面目で変態で、強くて変態で、メイドで変態で、治癒魔法使いで変態で、メガネがめっちゃ似合いそうで変態で、あとは、変態で変態で変態よ』


 俺と思ってる事全部一致してて草。


 もしかしてアミさんも、ブロンズちゃんのように俺の心が読めてらっしゃる?


『お、俺も、全く同じ事思ってましたw』


『あはは、そうなんだ』


『……そういえば、赤髪ちゃんって、なんで聖剣使いって呼ばれてるんですか?』


 聖剣使いと口に出した瞬間、アミさんの表情はこわばった。どうやらこの聖剣使いという部分に最も大きな闇が隠されているようだ。


『赤髪ちゃんはね、かつて正義教団にその強さを認められ聖剣を渡されたんだよ』


『正義教団……!』


『ああ、でも、ただ渡されたわけじゃない……赤髪ちゃんは、()()()()()として利用されていたんだよ』


『戦争の兵器……!?』


『正義教団は悪を許さない。悪を滅ぼす為なら戦争もする。当時まだ15歳の少女でさえ戦争兵器にする』


 赤髪ちゃんは正義教団の戦争兵器だった。その頃から、赤髪ちゃんは強かったんだな。でもその強さ故に兵器にされてしまったということか。


『それだけならまだ良かったよ。ここからは本当に胸くそが悪くなる話だ。ここからの話は聞かなくてもいい……いや、聞かない方がいいかもしれない……それでも聞く?』


 アミさんの手は震えていた。しかも一筋の涙まで流している。一体どんな話を聞かされるのか。


『聞きます』


『……分かった、じゃあ話すね』


 赤髪ちゃんの過去……それは、想像を絶する過去(トラウマ)であり、そして――。

第44話を見て下さり、ありがとうございます。

次回は、明日か明後日に投稿予定です。

宜しくお願い致します。

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