第514話『VS盗賊団⑧』
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《狂い果てた女の視点》
彼が私を探すために探知魔法を使うことは予想してました。なので、私もそのタイミングで探知魔法に乗じる形で幻覚魔法を使用しました。そうすれば相手の探知魔法は幻覚を見るという作用に変わる。原理は全く不明ですが、これは所謂バグ技というやつですね。あの方もそのバグ技をよく研究されていました。
本来ならば直接幻覚魔法をかけるものですが、こちらのバグ技を使えば、経験豊富な彼といえど簡単に解除できない。まあ一番の理由は探知魔法を逆探知して相手を嵌めるという事実に快楽を覚えるからです。実に愉快でした。
幻覚をかければ、あとは簡単です。相手の精神をすり減らすような光景を作り出せばよいのです。が、それには相手の人間関係を知る必要があります。情報がなければ、何をすれば相手を絶望させるのか分かりませんからね。まあ、幸い彼とは過去に面識がありますし、今回一緒に行動した者達への接し方を見れば、大体察しはつきます。
このアジトには至るところに監視カメラが置いてあります。私は彼らの様子を伺ってました。
そこで妙な二人組が現れました。
一方の名は橋本ルカ、もう一方の名はルカ・ヴァルキリー。
直接的な面識はほとんどないが、彼女達の存在は知っています。はるか前に一度聞かされましたからね。
橋本ルカは精霊が存在する世界からやってきた人間。
ルカ・ヴァルキリーはその橋本ルカが異世界に来た影響で分かれた人格の一つらしいです。
彼女達がやってきたのは想定外でした。そのせいで彼を徹底的に病ませる計画に狂いが生じてしまった。
幻覚で精神的に狂わした後、現実で仲間たちが改造人間の群れに無惨に殺されていた、というシナリオだったのですが、橋本ルカとルカ・ヴァルキリーが仲間に加わった事で戦力が大幅に補強され、私の全戦力を投じても、全滅させる事は叶わなくなりました。
私はどうしても彼を絶望させたい。永遠に闇の中に閉じこもって頂きたいのです。
そこで、私はある発案が頭に浮かんだのです。
まず、ダストを幻覚で精神的に追い詰めて、無理やり壊れた歯車を発動させます。
暴走した彼を仲間たちが止めます。
しかし、彼の壊れた歯車の強さは異常だ。あの方によると、彼の持つ“ソレ”は特に異質なものであると仰っていた。
もし、彼があの場で暴れたのなら、仲間達は一人残らず無惨に殺害され、彼が起き上がった頃には自分以外の仲間達が手足分かれた死骸になっていた、という光景を見て、最高の阿鼻叫喚を披露くれることでしょう。私はそれを見て、ワインでも嗜んで、あの方と――
『あぁ……■■■■■様……貴方にもここに居てほしかった……貴方と共にいつまでも生きていたかった……』
私はひとすじの涙を流し、嘆くように独り言を呟いた。
私は今、ダストの幻覚世界の中にいる。そこで彼の仲間の姿に変えて自傷したり、身体を弄ばれたりして、彼の精神を削ります。偽者とはいえ堪えるものはあるでしょう。
今の時点で彼の精神にかなりのダメージを与えました。僅かな歪みも感知したので、彼が暴走するのも時間の問題でしょう。
あぁ、それにしても――
人が苦しむ顔は実に美しい。
――――――――――
《アジト――奥の間――》
“ソレ”は身体に雷を纏いながら起動した。
『ウ……アアアアア…………!!!』
苦しそうに呻く“ソレ”は纏った雷を操りながら、無差別に攻撃する。
『アアアアアアアアアアアアアア!!!!!』
落雷の雨が改造人間の軍隊を破壊し続ける。
残骸がゴミ山のように積み上がっても尚、攻撃のペースは一定を保っている。
そして、数ある内の一つの雷の槍がとうとうブロンズとシルバーに襲いかかる。
『きゃあああああああああああ!!!』
彼女達を貫かんとする雷にいち早く反応したのはルシウスだ。彼は電光石火の如く走り出し、雷を弾いた。
『大丈夫か?』
『ありがと、大丈夫よ……』
だが、これで終わりではない。雷の槍は次々とこの場にいる生物全てに鉄槌を下す。
それを次々と弾いていくルシウス。防壁魔法で防ぐ魔王。そして――
『はあああ!!』
馴染みのない剣で雷を真っ二つに斬るルカ。聖剣である黄昏のケルベロスがいれば、もっと楽に戦闘を行えただろう。
『はぁ……はぁ……キリがない……ディーンさん……』
彼だったものを見つめるも、“ソレ”は破壊兵器のように感情はなく、ただ文字通り破壊するだけの存在だ。現時点では意思疎通は不可能だろう。
しかし、彼自身は思ったよりも戦闘能力が上昇していない。本来の壊れた歯車は三分の二ほど封印されているからだ。故に戦闘能力が中途半端に設定されている。
ただし、魔力量だけは飛躍的に上がっている為、今の彼のように実質魔法放出し放題状態である。
そのせいで、ほぼ無限に雷が落とされ、誰も近づけない状態である。
『どうにかして突破しなければ、このままではジリ貧だ!』
ルシウスは仲間達を守りながら、突破口を探しているが、一向にその兆しすら見えない。
『儂の魔力も今は大丈夫だが、いずれは――』
このままでは全滅は避けられない。時間が経てば、この場にいる者全てが“ソレ”によって殺されるだろう。
『お兄ちゃん……』
ブロンズは、一か八か“ソレ”の心の中を覗いてみた。すると、そこには――
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