第513話『VS盗賊団⑦』
お待たせしました。
第513話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※胸糞シーン注意。
探知魔法を発動した瞬間、俺の視界は絵の具を混ぜたように空間が捻じれ、全てが黒に染まる。
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《魔王城?》
あれ……ここは魔王城か。何でここに?
俺は先程まで盗賊団のアジトで改造人間を倒しつつ、探知魔法でボスを探そうとしていたところで……。
直近の記憶を探っていると、後ろから赤髪ちゃんが現れた。
『おや?』
彼女は俺を見ると、足を止めた。
『赤髪ちゃん!』
赤髪ちゃんはあおいちゃんと魔王城の留守をしていた。ということはやはり、俺は転移魔法か何かで飛ばされた可能性が高いな。
そういうことなら赤髪ちゃんに事情を話して、すぐにアジトに戻らないと!
『俺、どうやら敵に飛ばされたみたいで――』
『喋るな』
凍えさせるような冷たい声を発した。
『赤髪ちゃん……?』
次に鞘から剣を抜いて、鋼の刃をこちらに向けた。
明確な殺意が俺に突き刺さる。
『お前は殺す』
彼女が近い距離で殺害予告すると、すぐに戦闘は開始された。
『え、ちょ』
考える間もなく、俺は防壁魔法で攻撃を防いだ。
何故だ?
赤髪ちゃんが俺に剣を向けるのは何故だ?
俺が何かしてしまったのか?
けど、心当たりがない。
あ、でも、ずいぶん前だけどブロンズ様を一回泣かしてしまった事はあった。あの時の事は非常に後悔している。自分の罪が消えたわけじゃないが、本人とはとっくに和解も済んでいる。
ちなみに、この件は赤髪ちゃんは知らないはずだが、その後ブロンズ様と話す機会はあっただろうし、知っていてもおかしくはない。
ん? あ、そうか。そもそも世界線違うから、その事件は通過してない可能性もあるか。
この推測はちょっと弱いか。何なら無いか。
じゃあ他には……ないけど……何回か赤髪ちゃんのパンツを見ようとしたことはある……というか、トウカがいた町で時間停止した時に赤髪ちゃんのスカートの下からがっつり覗きました……ごめんなさい。
でも、これもあくまでこちらの世界線の話じゃないか。今ここにいる赤髪ちゃんの話ではないはずだ。多分。
やはり、本人に聞くのが一番早そうだ。
『赤髪ちゃん、俺が何かしたんですか!?』
『ええ、しました』
やっぱりかーーー!!!
『スカート覗いてしまってごめんなさい!』
俺は勢い余って何の関係もない世界線の罪を自供した。何やってんの俺。
『は? 違いますよ』
『え、じゃあ……ゴールドちゃんとブロンズ様のパンツを見たとか?』
『先程から何を言っている? 貴様の罪は存在そのものだ!』
赤髪ちゃんらしからぬ口調で、俺の存在を否定した。表情も、まるで親の仇のような憎悪によって歪んでいる。
こんな赤髪ちゃんは初めて見た。――いや、違うな。いつもの彼女は変態だけど、真面目で弱き者を守る優しさを持ち合わせた――
あぁ、どうやら、彼女は俺の知る赤髪ちゃんではないらしい。というか偽者だろ、こいつ。
根拠はある。あの美少女大好きな赤髪ちゃんが、ゴールドちゃんとブロンズ様のパンツを見たなんて聞いて、憤らないはずがない!
『存在が罪……か……』
今更こんな雑な罵倒で俺の心は折れない。誰が何と言おうと、俺は俺の快楽を叶えるだけだ。
『悪いが、そんな言葉に耳を傾けている暇はない。お前は何者だ?』
攻防戦を続けつつ、相手にそう聞いた。
『私は、貴様を恨む者。貴様の存在を心から否定する者』
何者でもなく、あくまでただそれだけの存在ってことか。
『赤髪ちゃんの姿を借りてまですることか?』
『……うむ、どうやらこの女の姿ではあまり効果はないらしい。他の者にするか』
赤い髪の女は剣を振り上げ、一旦戦闘を中断する。
すると、赤い髪の女の身体全体が光り、ゴールドちゃんに変貌を遂げた。
『よお、ダストっち』
いつもの表情で声色。まさしくゴールドちゃんそのものだった。
『ゴールドちゃん……』
一瞬本物と錯覚するところだったが、偽者であることは分かっている。
『おいおい、そんな悲しい顔すんなよ!』
気さくにそう言って近づくと、
『悲しみよりも深い絶望を見せてやるよ』
声色を変え、本物と同じ武器を振り回す。
不意をついたつもりだろうが、既に防壁は張ってある。当然ダメージは皆無だ。
『ちっ、思ったよりやりますねぇ』
ゴールドちゃんの口から、ねっとりとした話し方。通常の彼女ならありえない口調だ。
『いい加減にしろ!』
俺は容赦なく、光魔法をぶつける。
すると、ゴールドちゃん……ではなく偽者は3メートルほど飛ばされ、床に叩きつけられる。
しかし、彼女は無表情ですぐに立ち上がると、ハンマーを床に落とす。
『何をしている?』
すると、偽者は不敵な笑みを浮べながら、懐からダイナマイトを取り出し、火を付けた。
『爆発か』
既に防壁を張っている状態なので、俺にダメージが通ることはない。まあ、足場が崩れる可能性はあるか。念の為、空中浮遊の準備をしよう。
――しかし、偽者はダイナマイトを投げるわけでもなく、その場に立ち尽くすだけだ。
『どうした? 何故投げてこない?』
偽者は終始不敵な笑みを崩すことなく、爆炎に巻き込まれた。
『何がしたいんだ? ――!?』
爆炎の煙が晴れると、そこにはゴールドちゃんと同じ姿をした少女が目も当てられないほど悲惨な状態で倒れていた。
『あ……あ……』
分かっている。彼女はゴールドちゃん本人ではない。所詮は紛い物のはずだ。しかし、親しい少女があの戦場の死体と変わらない状態で――
『ほう、どうやらこれは効くようですねぇ』
どこかから声が。今度はシルバーちゃんの姿で現れた。
偽者は斃されたままだが、新たに一人登場した。分身魔法でも使ったのだろうか。
いつもの俺の頭脳なら、ここで更に考察を立てるのだが、ゴールドちゃんの死体を見たショックで頭がうまく回らず、身体も震えて、うまく動かない。
『次はこうしましょう』
『まさか……やめろ……やめろ……』
手を伸ばしても魔法を発動しようとしてももう遅い。
またしても不敵な笑みを浮かべると、今度はナイフを取り出し、自害した。
『あーははははははははははははははははははは!!!』
何度も、何度も、何度も、
刃が柔肌を通す度に赤い液体が涙を流すように垂れる。
『痛いです! 痛いですうううううう!!』
シルバーちゃんの姿で、血流しなくなるまで刺し続ける。
『あはは…………ダストさん……助けて……』
シルバーちゃんは最期に涙を流しながら、助けを求めた。まるで今までの自分は自分ではなかったように、操られている感を演出したのだ。
『ああ……あぁ……ぅ……』
本物じゃないのは分かってるはずなのに、俺の頭には新たなトラウマが刻まれている。
やめろ。もう、やめろ。
『いいですねぇ! その顔! ぞくぞくしますねぇ、あはははははははははははははは!!!!!』
次はブロンズ様の姿で俺を嗤う。
『じゃあ、今度は……こうしましょうか』
ブロンズ様の周りに突然現れた屈強な男達が彼女の服を掴み――
『やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
俺の中の“アレ”が僅かに放出した。幸いノルン様によって3分割にされてるので、完全体にはならなかったが、それでも――
第513話を見て下さり、ありがとうございます。
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