第510話『かわいい助っ人參上』
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――時は二日前、ダストがこの世界線にやってきた少し後の事。
とある少女二人が、とある廃村に突然現れた――
《???視点》
あれ、ここはどこだろう?
私達は一日を終えて、ベッドの上で眠っていたはずだ。
ということは、ここは夢の中かな?
そう結論づけた私はもう一人の困惑する彼女の共にこの村を歩いてみることにした。まあ、既に何もない廃墟の村だけど、こんな突拍子もない状況では、少しの手がかりも欲しくなる。
それで一通り歩いてみたが、やはり何もなかった。
人が生活した跡は僅かに残っていたが、ほとんどが瓦礫の山で廃村というよりか、スクラップ工事のようだった。どうやら最近ではなく、数年以上前から放置されているようだ。
何でこんな夢見てるんだろう? 最近、それっぽい映画とか見たからかなぁ?
でも、夢という割には感覚がちゃんと生きていて、風の感触や匂いが私の感覚を刺激する。
『……これって本当に夢なの?』
ずいぶんとリアルな夢だ。この時はその程度にしか思わなかった。
しかし――
『お前達、そんなところで何をしているんだ?』
私達の前に、長髪で目つきの悪いお姉さんが現れた。服装のセンスはとても褒められたものではなく、“いわし”と書かれたTシャツとジャージのズボンを着ている。センスの有無を抜きにしても、とても外出で着る服装ではない。まるで部屋着のようだ。
さすが夢の中だ。この時点で既に混沌としている。
『えっと……私達もよく分からなくて』
もう一人の彼女も怯えながら頷いた。ただでさえ訳の分からない展開についていけないのに、そこにこんな服装の人が来たら、ますます怯えてしまうのも無理はないだろう。現実の彼女の性格を考えても解釈が一致している。
『ま、そうだろうな』
まるで私達の事情を知ってるかのような返答だ。まあ夢だからね。
『あの……お姉さんは?』
『私か? 私の名は村正。流星群というギルドに所属していた者だ』
ご丁寧に名前と経歴を話してくれた。
『流星群……?』
ギルドというと、アニメとか漫画とかでよく聞く組合の事だろうか。愛しの彼の影響でよく見るようになったから、その単語自体は馴染みがある。
どうやら、この夢はアニメや漫画の要素も入っているようだ。
『まあ、お前達は知らなくて当然だ』
やはりだ。またしても私達をよく知らなければ出てこない返答だ。この人は一体何者なんだろう? 夢とはいえ少し怖いけど、思い切って聞いてみよう。
『あの、私達は知らなくて当然って、何で分かるんですか?』
『聞いたからだ。私の元同僚にな』
その元同僚の方が私達をよく知る人ということらしい。
『その人の名前は?』
『ラピスとラズリだ』
『“ラピストラズリ”さん……?』
『違う。ラピスは姉、ラズリは妹。つまり双子だ』
『ああ、そういうことね……』
でも、名前を聞いたところで、私の知り合いリストには記載されていない。隣りにいる彼女も同じ反応だ。あぁ、やはり夢なんだなと再認識する。
『お前達には一緒に来てもらう。そのラピスとラズリの元にな』
村正さんは、ラピスさんとラズリさんに私達を連れて来るように言われてやってきたということか。でも何で私達がここにいるって分かったんだろう? まあ夢だからねパート2。
もう一人の私も警戒している。本当に村正さんの言う通りについていってもいいのか。私も同じ気持ちだ。
『あの、申し訳ないのですが、私達、まだ貴女を信頼しきっていません』
はっきりと断言した。村正さんは特に表情一つ変えず、ただこちらの話を聞く姿勢を見せている。
『貴女は何者なんですか? 私達の味方なんですか?』
一度に二つの質問をぶつけた。すると、
『分かった。一つ一つ答えてやる。私は村正。流星群というギルドの一員であり、世界を渡り歩く者だ』
『世界を……渡り歩く?』
漠然としたフレーズのせいでイマイチ想像しずらい。私の脳内で処理した結果、旅人という単語が出てきたが、その解釈で合っているのだろうか。
懐疑的な表情を浮かべた私を放置し、村正さんはもう一つの質問を回答する。
『次にもう一つの質問だが、お前達の味方と捉えてくれ。でないと話が進まない』
向こうは私達と味方でいたいようだ。もちろん嘘をついている可能性もある。
どうせ夢の中の世界だ。ちょっと好戦的になってみよう。
私は剣を抜いて敵意を示す。
『何のつもりだ?』
『何のつもりも何も怪しい人についていっちゃダメって教わらなかったんですか?』
私は実の親ではなく、先生に教わりました。
もう一人の私はかなり動揺している。『何でこんなことしてるの!?』と。
『ほう、確かにお前は強いが、好戦的ではないと聞いたのだがな……』
誰に聞いたのか知らないが、勝手に私の情報を知られて気味が悪い。さては私のストーカーじゃないの?
村正さんは不敵な笑みを浮かべながら、剣を取り出した。何となく分かっていたが、やはり戦闘ができる人だったか。服装のせいでとても強そうには見えないが、私が剣を向けても、一切の怯えが伺えない事から、おそらく戦闘面でも精神面でも強い人なんだろうとは思っていたが。
私は覚悟を決めて、剣の柄を握り直す。と、ここである違和感を覚える。
『あれ?』
これは私の剣じゃない。柄の感触が全然違う――って、まあ夢だから、別に不自然ではないか。スルーしよ。
『どうかしたか?』
『いえ、何でもありません』
『そうか。私としては話し合いで済ませたかったが、残念だ』
その言葉に説得力が無いくらいの笑みを浮かべる。むしろ好戦的なのはそちらの方だろう。
『戦いの前に、改めて名乗っておこう。私は村正、今はただの戦士だ!』
その礼儀に則って、私も自ら名前を名乗る。
『私の名前は橋本ルカ! 聖剣使いの……えっと、女戦士だよ!』
それから、私は意識を失うまで戦い、村正さんはもう一人の私と眠る私を連れて、ラピスさんとラズリさんの所へ帰っていった。
そして私は、別室でラピスさんから色々な話を聞いて、時が止まった空間で修行するなど、奇想天外な体験をこの身で味わった。それは夢でも何でもない、紛れもない現実なのだと。
『ここ? ディーンさん達がいるのは?』
私達は村正さんの案内の元、例のマンションまでやってきた。それもずいぶん早い車で。あ、この世界線ではク・ルーマって言うんだっけ?
『そうだ』
『村正さんは行かないの?』
『ああ、私はやることがある』
村正さんには悪いことをしてしまった。今が最後の謝罪の機会になるかもしれない。
『あの、村正さん』
『なんだ?』
『最初会った時、刃を向けてしまってすみませんでした』
頭を下げて謝罪した。
『気にしないでくれ。私の説明不足だ。あと、私の悪癖だ』
村正さんはバツが悪そうに視線を逸らした。彼女自身も本当に反省しているらしい。一番反省しなきゃいけないのは私なのに……。
『それじゃあな。お前達、また会おう』
村正さんはそう言い残すと、あっという間にその姿を消した。去る後ろ姿を見ることすらできずに。
残された私達は、盗賊団のアジトがあると言われているマンションへ足を運ぶ。
『穴が開いてる』
エレベーターの穴から戦闘の音が聞こえる。勇ましい声を上げながら鈍器か何かで吹き飛ばすような音が。でも、この声どっかで聞いたことがあるような……?
この下にディーンさんがいる。私達と同じように修行をして、世界の為に戦おうとしている。これはその為の第一歩だ。
『行こう。もう一人の私』
分裂体である彼女を見る。普段なら不安そうな表情を浮かべるところが、今では勇敢な戦士のような、険しい表情を浮べている。同じ私だが、まさに別人のように成長しているようで私は嬉しい。
『うん、行こう。橋本ルカちゃん』
『ええ、ルカ・ヴァルキリーちゃん』
私達はお互いに微笑みながら、穴の中に飛び込んだ。私達の先生を助けに――
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