第508話『VS盗賊団④』
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ゴールドちゃんは、エレベーターだった跡地に向けてハンマーを振りかざし、
『おらああああああああああ!!!!!』
力いっぱい叩きつけた。
本来であれば、ここで轟音が響くはずだが、予め俺が発動した遮断結界によって、一切の音が届かない。
静かに破られた床は、地下への道を開放した。
まあ、道と言っても、ただの穴なんだが。
『ほ、本当に飛び降りるの……?』
シルバーちゃんが震えながら言った。
『大丈夫よ、お兄ちゃん達が安全に降りられるように魔法かけてくれるみたいだから』
ブロンズ様は、シルバーちゃんに優しくそう声をかけた。
『そ、そっか。ごめんね、私お姉ちゃんなのに……』
『何を怖がるかなんて人それぞれよ』
『で、でも……私何もできないし……』
『私なんて一番戦闘能力がないから、シルバー姉に守られっぱなしだし』
シルバーちゃんを慰めているようで、ブロンズ様自身への叱責にも見える。
ブロンズちゃん、そこは適材適所だと思うよ。
ブロンズ様は一瞬だけ俺の方を見て、苦い顔をした。“そういうことじゃないわ”と言っているのだろうか?
うーん、余計なことを言ってしまったらしい。口を……じゃなくて心を閉ざそう。ややこしいが、この場合の心を閉ざすは引きこもるって意味ではない。
『で、でも…………私よりゴールドの方が強いし、お姉ちゃんに守ってもらったほうが……』
涙目のシルバーちゃん。足が竦む恐怖が精神さえも蝕んでしまったようだ。なかなか立ち直るのは難しいだろう。
さっきの自爆もあったし、思ったよりも精神が参ってるのかな。考えてみれば、他の姉妹がちょっとアレなだけで、まだ年端のいかない少女だ。むしろよくここまでついてきたと思うよ。
そんなことを思っていると、ブロンズ様が“アレって何よ?”と言いたげに一瞬睨みつけてきた。
ごめんなさい。今度こそ心閉ざしてます。ひぃ……。
『シルバー、確かにアタシが守れば確実だろうよ。でもよ、アタシだっていつもシルバーやブロンズの隣にいるわけじゃねえ。いつまでも側に居てやりてえが、そうもいかねえのが人生だ』
ゴールドちゃんがなんか深い事言ってる……。
『お姉ちゃん……』
『もし、アタシがいなくて、ブロンズが危ない目に遭ったら、シルバー。お前が守ってやってくれ』
『そっか、そうだよね……』
『それに、アタシはあまり考えるのは得意じゃねえからさ、例えば遠くから攻撃してくる奴とかいても、考え無しに真正面から突っ込んじまうのがアタシだ』
何故か自慢げに自分の失敗を語るゴールドちゃん。
『あぁ……確かにあったわね、そんなこと』
ブロンズ様は、苦笑しながら思い当たる記憶を掘り起こしてそう言った。
『シルバーは弓使いだろ? 魔法も使えるし、アタシとは違う戦い方ができる。つまり、アレだ。えーと、てき、てき……なんだっけ?』
『適材適所よ』
『それだ! さすがブロンズちゃん! アタシの自慢の妹だ! もちろんシルバーもだ!』
ゴールドちゃんは笑顔で指を上に立てた。
『お姉ちゃん……ありがとう!』
シルバーちゃんは笑顔を取り戻した。
『ブロンズちゃんもありがとね』
『いいのよ』
姉妹の絆が見せた美しい光景に、俺と魔王の保護者組は涙を流し、ルシウスは優しい顔で見守っていた。
本当に良かった。あぁ、良かった――
『お兄ちゃん?』
――――――――――
作戦は無事決行した。シルバーちゃんのせいってわけじゃないが多少遅れはしたものの、地下の連中もエレベーターの機能停止により、混乱しているはずだ。
『みんなに防壁魔法をかけた。これで攻撃を受けない』
『ダスト、ありがとう』
『ダストっち、ありがとな!』
俺の思った通りに、球状の防壁を作った。これで落下によって防壁が崩れる事もなく、不意打ちや着地による衝撃をも防ぐことができるのだ。
『…………』
『…………大丈夫……よね……』
とはいえ、飛び降りるにはなかなかの勇気がいる。特にシルバーちゃんは未だブルブルと震えている。ブロンズちゃんも直前になって恐怖を自覚したのか、少し顔色が悪くなっている。
なので、俺はブロンズちゃんと、シルバーちゃんはゴールドちゃんと手を繋いで飛び降りることとなった。
『私を守ってね、お兄ちゃん……』
いつもの誘発的な表情はどこへやら、ブロンズ様は真っ青な顔で俺の身体に抱きついた。誘惑ではなく、ガチの恐怖である。
『ああ、何があっても守るよ』
『うぅ……』
思った以上に参ってるみたいだな。さっきの、シルバーちゃんを安心させようとしていた頼もしい姿が嘘のようだ。
『シルバーの事はアタシが守るからな! ダストっちもブロンズの事頼むぞ!』
『もちろんだ!』
ここでルシウスが、
『いざとなったら、俺とマーブルも動けるから安心しろ』
魔王も同意するように頷いた。
『ルシウス……魔王……』
確かにこの二人が見守ってくれるなら安心だ。
『分かった、その時は頼りにするよ』
――これで準備は整った。語弊がある言い方だが、あとは一人一人地下へ飛び降りるだけだ。
『みんな、準備はいいか?』
ルシウスがそう言うと、覚悟の決まった者から頷く。
『よし、じゃあ行くぞ――』
まずルシウスから続いて俺とブロンズちゃん、ゴールドちゃんとシルバーちゃん、そして最後に魔王の順で飛び降りた。
『きゃあああああああああああああああ!!!!!』
手を繋ぐどころか、何の躊躇いもなく抱きしめてきたブロンズ様。彼女とは何回か接触したことがあるが、今回のように保護欲が出てくるのは非常に新鮮だ。
初めてだな、ブロンズ様を妹のように思ったのは。
『きゃああああああああああああああああ!!!!!』
一方でシルバーちゃんも今のブロンズ様のように泣き叫びながらゴールドちゃんに抱きついている。
そのゴールドちゃんは、下着が見えないように必死にスカートを押さえている。防壁の中にいれば落下してようと、スカートが翻ることはないから別に押さえなくても大丈夫なんだがな。
まあ、でも彼女の真下から見上げれば普通に見えるかもしれないが、やめておこう。この後の戦いに向けて少しでも集中させてやらないと……まあ手遅れかもしれないが。
――さて、そろそろ地下に着くが、果たして敵はどれくらいの数を待ち伏せさせているのだろうか。
『ん?』
――その時、俺はまたしても未来を見た。
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