第506話『VS盗賊団②』
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《男幹部視点》
俺の名前はブライド・ルーマ。この盗賊団の幹部であり、ボスの側近でもある。
今回はそのボスとは離れ、侵入者を迎え撃つ為にエレベーターで上に上がっているところだ。
しかし、俺一人だけが行ったところで奴らには勝ち目はない。故に今回はこの改造人間を連れてきた。こいつはボスの技術によって作り出された殺戮兵器だ。元は普通の人間だったらしいが、中に人の意志はない。そんなものは既に切り抜いてしまったからな。
『…………』
それにしても不気味だな。身体のパーツは揃っているのに、機械的に佇んでいる。
本来ならば、人間の改造は死刑になってもおかしくないくらいの大罪だが、我々は既に追われた立場。今更罪を重ねようと関係ない。
とはいえ、褒められた趣味とは言えないがな。
だが、ボスはこんな俺のようなゴミクズを拾って下さった。どこにも居場所がなかったこの俺に安心できる寝床を提供してくださったのだ。
ボスがたとえどんな御方であろうとも、恩に報いなければ。俺だけは絶対。
『そろそろ着くな』
『…………』
改造人間は会話などできる知能は持ち合わせておらず、ただ戦いの時を待っている。
まあいい。こいつの戦闘能力は俺もこの目で確認した。
尊厳など微塵も感じさせない残酷なまでの殺戮。戦士から戦えぬ女子供に至るまで全てを破壊する。その身体が赤く染まろうと、攻撃する手を止めない。目に映る者全てを破壊するまでは。
敵じゃなくて良かった。心の底からそう思う。しかし、こいつと出撃する度に無惨に殺される人を見るこちらにも精神的ダメージはある。
俺は悪人ではあるが、殺人は好まない。ただ金品を渡してくれれば、あるいは俺をコケにした奴らに復讐できればそれでいい。
根本的に改造人間と分かり合える気がしないが、そもそも意志が無いのなら、相互理解など不可能だ。
『気が重いが、仕方がない。お前たちが悪いのだ。アジトにさえ侵入しなければ、いや、ボスに目をつけられさえしなければ――』
そして、ついに扉が開いた。その際に改造人間は触手のような手をうねうねとくねらせ、戦闘準備を始めた。
どうやらこの先にいる人間を感知したようだな。
さあ、殺戮ショーの始まりだ。
――しかし、
『な……!?』
何もなかった。気配がしたはずの扉の先には誰もいなかった。
『そんなバカな……!?』
俺はよく目を凝らして辺りを見回した。
しかし、そこには人が居た形跡どころか血痕すらない。
先程の打撃音がした位置と思われる箇所にも凹んだ跡はなかった。
『どこだ!?』
ここに人がいたのは間違いないのだ。改造人間も人の存在を感知している。
『…………?』
改造人間も気配は感じているものの、肝心の人の姿が無く、くるくる回って困惑を表現している。
その時、
バァン!
発砲音と共に改造人間が弾丸に貫かれると、怯んだその隙に次々と連射する弾丸を受け、あっという間に再起不能となった。
『なに!?』
俺が振り返る動作をすると、その隙に雷魔法や光魔法といった攻撃魔法が俺を襲ってきた。
『ぐわあああああああっ!!!』
防御の姿勢すら整えられないまま、重傷を負ってしまった。これではもう反抗すらできない。
『ど……どこ……だ……?』
朦朧とする意識をなんとか保ちつつ、この目で状況を把握する。だが案の定、視界が悪く、人間一人分ほどしか視界内に収まらない。
そうか、奴ら魔法で透明になっていたのか。侵入者は俺達を倒したと確信したのか、その姿を現した。
しかし、何故透明になる魔法を使っていたんだ? バレずに侵入するのが目的なら分かる。だが、奴らは地下まで聞こえるくらいの轟音を立てていた。とても隠れて侵入する者の行動ではない。
『な……ぜ……?』
答え合わせを求めようとした俺だが、残念ながら言葉を発することすら難しいようだ。
『教えてあげるわ』
侵入者の小娘が俺の前に立ち上がった。まるで俺の心を読んでいたかのように、答え合わせをしてくれるようだ。
『実はね、この冴えない貧弱お兄ちゃんがね、未来を見る魔法を持っていてね』
『おい、俺をディスるな』
『……その魔法でね、そこの大きな人形がお兄ちゃん以外の全員を無惨に殺した未来を見たらしいの』
未来を見た……だと……?
『それで、お兄ちゃんは私達にその旨を伝えて――って、お兄ちゃん私の胸見たわね?』
小娘は恥ずかしそうにその小さな胸を隠したが、その羞恥の表情にはどこか喜々としている部分があるようだ。
『見てねえよ!』
『……で、話の続きだけど、お兄ちゃんは自分が見た未来を私達に共有して、作戦を立てたの』
あぁ、それで透明になる魔法を使い、俺達を欺いたというのか。
やれやれ、始めから勝ち目など無いに等しいではないか。こんなことなら俺もボスの部屋で待つべきだった。
戦力差があろうと不意打ちさえ決まれば勝てると驕った俺が敗因だ。
ボス……申し訳ございません。
『真相にはたどり着いたようね。でも、これで終わりじゃないわ。貴方から盗賊団についての情報を提供してもらうわ』
ほう、拷問でもして聞き出すつもりか。
『安心して、拷問はしないわ。貴方の心に聞くから』
俺の心……?
そういえば、この小娘、さっきから俺の心を読んでいるような応答をしてくるが……まさか、本当に心が読めるのか?
『正解よ。私は心を読む魔法を使えるの』
まさか、そんな希少な魔法をこんな小娘が使えるとは……。それなら確かに拷問の必要性はない。ただ質問をすればいいのだから。
『ええ、だから諦めて情報漏洩してちょうだい』
このままでは、俺の意志と関係なく情報が盗まれてしまう。どうにか心を読まれないように魔法無効の結界でも張りたいところだが、残念ながらそんな高等な魔法は覚えていない。
『く…………そ………………』
心を読む魔法の攻略法を事前に調べておくべきだったと強く後悔した。
もう、終わりだ。
『じゃあ早速質問するわね。まずは――』
『ブロンズちゃん、離れろ!』
お兄ちゃんとやらが、小娘を俺から遠ざけようとする。
すると、小娘の方も俺の心を読んだのか、ハッと驚愕の表情を浮かべた。
どうやら気づいたようだな。
俺が自爆の魔法を発動していることに!
『みんな逃げろ! こいつ自爆するつもりだ!』
侵入者共は血相を変えて出口へ向かって逃走した。爆発の規模を考えれば、今更逃げられるはずもないのだが、小賢しい奴らであれば、どうにかしてしまうだろう。
欲を言えば、ここで奴らを足止めして確実に巻き添えにしたかったが、今の俺にはそんな力はない。
しかし、これでボスの側近としての面子を最低限保つことができる。
どの道、このような失態を冒した俺がボスに会わす顔などないのだ。
あぁ――ボス、こんな不甲斐ない俺をお許し下さい。
――そして、俺の身体から光が溢れ、四散すると共にこのビルを吹き飛ばす勢いの大爆発を起こした。
地下の事なら大丈夫だ。あそこには爆発すら防ぐ結界が張ってあるのだから。
ボス、貴女がどのような御方であれ、俺のような居場所の無いクズを拾って下さった。この御恩は来世でも忘れはしません。その時はきっとまた貴女に逢いに行きます。
――貴女の最後の計画、ご健闘を深くお祈り申し上げます。
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