第503話『とある勇者のお話』
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むかしむかし、あるところに異世界から転移した少年がいました。
初めての異世界転移に戸惑った彼は言いました。
『え、ここマジで異世界?』
彼はちょうど転生もののライトノベルが流行っている時代から来たようで、まるでアニメの世界に入ったような気分に浸っていました。あの憧れの異世界チート生活を送れるんだと。
案の定、彼の思惑通り、ステータス最強の勇者となり、この世界を恐怖に陥れようとする魔王軍を滅ぼす旅に出たのです。
その道中で運命の人に出会いました。
『私はフー。魔法使い』
独特な喋り方をする彼女と邂逅したのです。変わった人ではありましたが、それはそれはとても美しい少女だったのです。
そんな彼女に、彼はクソ雑魚コミュ障ゴミカスメンタルなのもあり、ぎこちない自己紹介をかましてしまいました。
『お、俺は■■■■■。異世界の日本って国から来たんだ。よ、よろしく』
彼女は表情一つ変えずに頷きました。
『私も連れてって』
彼女はストレートに要望を述べました。勇者である彼と共に魔王を倒しに行こうと。
彼には断る理由はありません。彼女が好みである事は言うまでもないですが、確かな実力もありました。
『そ、そそうしてくれると、た、助かりましゅ!』
噛み噛みな口の勇者。彼女は全く格好もつかない彼をどう思ったのか、表情が皆無なので検討もつきません。
この先大丈夫なのだろうか? あらゆる意味で不安を募らせたのでした。
でも共に旅をしてからは、俺の知らない知識を彼女が共有してくれたことで、敵を効率良く倒せたり、魔王への手がかりを掴むスピードも桁違いに早かったのです。自分一人だったら、おそらく数年ほどの時間を費やしたことだろう、と勇者は思いました。
そんなこんなで道中、様々な困難、人との出会いと別れを経て、ついに魔王城へと足を踏み入れたのでした。
歴戦の戦士でも苦戦するような屈強な幹部たちも、勇者とフーの二人が力を合わせれば、倒すのも苦ではありませんでした。そして、ついに魔王に王手をかける時が来たのです。
『よく来たな。勇者よ』
玉座で不敵な笑みを浮かべる魔王。極悪な魔族の王のようなイメージとは異なり、ただのイケメンの青年でした。勇者は嫉妬しました。
『イケメンを粉砕するため……じゃない。お前を倒すためにやってきた!』
勇者には邪な欲望はあれど、世界を救いたい想いは本物です。今、全身全霊をかけて魔王に挑みました。
激闘の末、勇者とフーの勝利。これで世界に平和がもたらされることでしょう。本来ならそのはずでした。
しかし、魔王は所持していた“破滅の願望機”を使い――
世界は滅びました。
けれど、それで終わりではありません。
その魔王は創造神のように世界を創り変え、滅びたはずの全人類の魂と肉体を復活させたのです。ただし、滅びた世界の事を覚えている人間は数える程しかおらず、ほとんどの人間はただ日常を過ごしているだけでした。しかも、それぞれ役割が変わっている者もいて、たとえば冒険者だった者が、ギルドのスタッフをやっている者もいれば、商売人だった者が冒険者になっている場合もありました。
それで勇者はというと、前の世界の記憶を全て覚えていました。この世界での彼は仲間と共に依頼をこなして生計を立てる冒険者だったのです。戦う事には変わりないが、魔王を倒す使命は消え去っていたのだ。
さらにもう一つ最も重要な問題がありました。それは仲間であり、初恋の人であったフーがいないのです。
彼は仲間に聞きました。
『フーっていう女の子を知らないか!?』
すると、
『いや、知らないな。お前知ってる?』
『俺も知らない。誰だそいつ?』
仲間たちもフーの事は知らないようでした。
彼はショックのあまり、膝をつきましたが、落ち込んでばかりもいられず、すぐにフーを捜索することにしました。
冒険者家業をこなしつつ、仲間たちの協力を借りてフーの手がかりを探しました。
それはもう、何ヶ月何年何十年月日が経とうとも。
結果は残念ながら見つけられず、それどころか名前すら一切耳に入らない始末。
やがて彼は願いも叶えられないまま、老衰し、この世を去りました。
すると、またしても世界は変わり、
今度はサーカス団の団長として、世界を笑顔にするという使命を背負っていたのでした。
そこでもやはり、フーを探すために生涯をかけて動きましたが、見つけられず、そのまま寿命を切らしてしまいました。
次の世界では商人になり、同様にフーを探しましたが、見つけられず。
その次はまた冒険者です。それも嫌われ者の冒険者。それでも相変わらずフーを探していましたが、その道中、一人で手に負えない化物に出くわし、若くして命を落としてしまいました。
その次はなんと魔王でした。今度は自分が勇者と対峙することとなったのです。
そんな彼ですが、フーを探し続けました。しかし、魔王に転生した影響なのか、勇者だった頃の記憶はこの時点でかなり薄れていました。フーとの思い出も徐々に消え去ろうとしているのです。そんな中で彼は本能に従い、フーの捜索をやめることはありませんでした。勇者に討たれるまでは――
そして、次はなんとただの会社員。今度は世界観が変わっており、魔王も勇者も冒険者もない、2020年代の日本とほぼ変わらない世界でした。彼はまたしてもフーを探すのかと思いきや、既に最初の記憶はだいぶ曖昧になってきており、彼女を探す意欲が薄れてきたのです。
さらに、その世界で彼はとある女性と出会いました。彼女の名は“アミ”。彼の一つ上の幼馴染であり、最も親しい友人でした。
その時の彼にとってアミがヒロインであり、フーは記憶のどこかにいる謎の美少女。夢でしか見たことがないような幻のヒロイン。
そんなものはただの妄想でしかない。彼はアミを恋人に選び、幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
否――まだ終わらない。
この世界はまたしても変わる。それは何回、十、百、千、万すら超える数を積み上げ、まるでゲーム感覚で破壊と創造を繰り返していきました。その度に全人類の使命は変わります。ええ、それはもう。
破滅の願望機、それは、世界を壊す者。そして、願いを叶える物。今も尚、それは繰り返されている。その役目は神々に代わっているが、彼らは独自の方法で世界を創り直している。その使命を植え付けられたとも知らずに。
元凶を作った魔王は今もどこかに潜み、世界を観測し続けているのだ。目的を果たせぬまま、延々と――
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