第502話『並行世界の魔法マニアに会う』
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宙を泳いでから数分。どうやら自分の意志でスピード調節したり方向転換ができるらしく、見失わない程度にそれぞれ好きな速度で進むのであった。
空を飛ぶのは気分を高揚させるとはいえ、ずっと白い空間に敷き詰められた機械の大群という、何の面白みもない光景ばかりが目の中に映し出されてばかりで、すごく退屈だ。
『早く着かないかな……』
同じような景色ばかりで飽きたのもあるが、常に空中にいて移動し続けてる状態は三半規管を狂わせる。胃の中の物が出口を探し始めたところだ。
『まだまだ先ですよ!』
スタッフの娘は満面の笑みでこちらの体調事情など一切知らずに、無慈悲に現実を叩きつける。その可愛らしい笑顔が鬼畜に見えてしまうトリック。
『そうですか……』
まあ、でも足を使わない分、体力をあまり使わないから、まだまだ飛んでいられる。しかし、三半規管は気が気でないが。
『ゴールド姉またパンツ丸見え〜』
『やめろ! 見るな!』
ゴールドちゃんのスカートの中を下から覗く遊びをしてるブロンズ様。めちゃくちゃ楽しそうだ。もし俺がやったら絶対怒られるじゃ済まないだろうな。
というか、ブロンズ様もスカートだから注意しなきゃじゃないのか?
同様にスカートを履いているシルバーちゃんは比較的低い位置で飛んでいるから大丈夫だが、ブロンズ様はゴールドちゃんのスカートに夢中で縦横無尽に飛び回ってる。あれじゃブロンズ様もスカートの中が顕になってもおかしくはない。
彼女たちのヒラヒラするスカートを目で追ってしまいそうだが、やめておこう。絶対ろくな事が起きない。
ところで、さっきから大人しかったシルバーちゃんだが、実は前々から浮遊そのものにあこがれており、結構テンションが上がっている。隣にいる魔王もニコニコしながらシルバーちゃんと話している。まるで孫とおじいちゃんだな。
ルシウスは笑顔で一人でくるくると回ったり、超スピードでそこら辺を駆け回っている。こいつはこいつで無邪気な子供みたいだな。
それから数分後、
『あ、そろそろ着きますよ!』
スタッフの娘が指し示した扉に入った。そこにラピスとラズリがいるらしい。
『やっと着いた……』
すると、途端に重力が仕事を始め、ようやく床に足を着けた。
『ここは……!』
ここも特に変わらず、沢山の機械があるだけだった。唯一異なる点があるとすれば、白衣姿の美少女が二人いることくらいだ。瓜二つであるが、髪色がピンクと水色でそれぞれ異なっている。
でも、このスタッフの娘とも雰囲気が似てる気がする……? もしや三つ子だったり?
『ラピス様、ラズリ様、お客様をお連れ致しました』
先程の活発な雰囲気はどこに消えたのか、スタッフの娘は急に真面目な顔で途端に礼儀正しい言葉を使う。ここに来て突然のキャラ変。この変わりようは正義教団のレッドを思い出させる。
『お疲れ、デルタ。下っていいよ』
『仰せのままに』
スタッフの娘……デルタは機械的な態度でこの場をあとにした。
『すまないな、ラピス、ラズリ。ちょっと用があってまた来訪した』
ルシウスがちょっと申し訳なさそうな顔で言った。
『うん、知ってる』
アポ無しなのに知ってるだと?
『知ってるとは?』
『事情は全部把握してるよ』
『全部だと? 一体どういう――』
――刹那、ルシウス及び魔王城の者全て銅像のように固まってしまった。この場で今瞬きができるのはラピスとラズリ、そして俺だ。
『は……?』
と、驚愕の表情を浮かべるが、世界の時が止められた世界に置いてかれたのはこれまで何度も経験してるはずだ。そして、今それをやったのは、現状身体を動かしているラピスとラズリで間違いないだろう。
『時が止められるのはまだ慣れない?』
ラピスがそう言った。まるで俺の旅路を全て把握しているかのような口ぶりだ。
この瞬間、ラピスとラズリがただの魔法マニアではないことを察した。
『時を止めたのはお前達か?』
もはや分かりきっていることだが、一応確認する。
『そうだよ』
『なぜ、時を止めた?』
『私とラズリとあなたと3人で話したいから』
俺等以外の人間に聞かれると不都合な話なんだろうか。
『分かった。何を話したいんだ?』
『あなたのこと、ダストのこと、オーガスト・ディーンのこと』
要するに俺の全てを知りたいってことか。
『というか、何で俺の名前知ってるんだ?』
この世界ではオーガスト・ディーンなんて名前はブロンズ様たちにも名乗っていない。
『私達は世界を渡る者だからね。ある程度のことは知ってるんだ』
『世界を渡る?』
『私達はとある魔法で他の並行世界を自由に行き来できるのさ』
『そんなことができるのか?』
『うん、私達は――』
ラピスは一旦口を閉ざす。
『見てきた』
ラズリが初めて口を開いた。
『世界が』
ここからは、二人が交互に口を開く。
『滅びる』
『瞬間を』
『私達は』
『見てきた』
『犯人は』
『ゼウス』
『全能の神の名を』
『名乗る神は』
『世界を滅ぼす兵器』
『それを』
『食い止めるために』
『私達は』
『やってきた』
『この』
『世界に』
『世界を』
『救うため』
『でも』
『私達だけでは』
『勝てない』
『だから』
『求めている』
『破壊を阻止する』
『勇者を』
『その候補の』
『一人が』
『■■■■■』
俺の本名を挙げた。
『おれ?』
俺は自分に指を指した。
『そう』
『あなた』
『助けて』
『助けて』
『ゼ』
『ウ』
『ス』
『を』
『た』
『お』
『し』
『て』
『何で急に一文字ずつで言ったんだ? 効率悪いだろ』
『たし』
『かに』
『そう』
『だね』
『倍に増やしたからって、結局効率悪いのはあまり変わらんだろうが』
『ごめんね、ちょっと遊んじゃった』
『ごめんね、ツッコんでくれるかなって思ってボケちゃった』
二人は片目を瞑って舌を出して、てへっと可愛らしく謝罪した。絶対反省してないだろ。まあ、別に怒ってないし、可愛いから全然許すけど。ただし、もしこれをやったのが魔王だったら絶対許さん。断固として許すわけにはいかない。理由? うざいから。
『まあいい。俺は元々ゼウスを倒すつもりだ。だが、まだダメなんだ』
『何がダメなの?』
『シンプルに力が足りないんだ』
『みんなの力を合わせても?』
みんな、というのは、打倒ゼウスに協力してくれる仲間たちのことか。
『ああ、そうだな。まだ足りない』
ノルン様曰く、現状の総戦力をぶつけてもゼウスを倒すのは難しく、しかもプロメテウス等、他の神までもが来襲するとなると、まだまだ戦力が足りてないとのことだ。
『そっか。大変だね』
『ああ』
『ちなみに、“ダストの記憶”は全部解放されたの?』
“ダストの記憶”のことも知ってるのか。ということは、おそらく神様の存在も知っているんだろうな。
『うーん、どうだろうな。だいぶ解放されたような気もするが』
今の時点で俺は100種類以上の魔法を使える。覚えているだけで使ってないのも多いから結局有効活用はできていないが。だって、慧眼魔法と探知魔法が便利すぎるんだよぉ!
『なるほど。じゃあ全部解放する?』
『そうしたいのは山々だが、なかなか思い出せないからな……』
『できるよ』
『え? どうやって?』
『私達の魔法なら』
『可能だよ』
『『解放魔法』』
ラピスとラズリの指の先にそれぞれ小さな光が出現した。その後、その二つの光は、すり抜けるように俺の頭の中に入り込んだ。
『あ、ああああああ――』
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