第500話『並行世界の盗賊と戦う②』
お待たせしました。
第500話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
※文章が抜けていたので、付け加えました。
《神聖な森の中》
ここは荒野の中にある小さな森。獰猛なモンスターすら静寂に暮らす平和な森。人間さえ立ち入らなければ。
『オラオラオラー!!!』
ガンッ!
金属と何かが衝突する音が響く。森の中では起こりようのない人工的な音だ。
ガンッ! ガンッ!
重い音が伝わる度に木々が揺れる。か弱き小さなモンスター達が尻尾を巻いて去っていく。獰猛なモンスターは侵入者を追い出そうと威嚇するも、二人の戦士の威圧感に圧されて、逃げ出してしまう。
ガンッ! ガンッ!
不快な音が、どこまでも鳴り響く。ここはまるで地獄の演奏会。
演奏者の紹介をしよう。
金色の髪をなびかせて、楽器を演奏す者は魔王城の幹部であるゴールド。
もう一人の図体の大きい男は楽器に力を込めて、演奏る。彼の名はイバラキ・ギガント。わけあってガーシー・クラウンという偽名を使う盗賊団の幹部である。
それぞれの幹部が奏でる衝突。
『はぁ……はぁ……』
互いに肉体的ダメージはほぼない。ほぼ互角の力で、肉体を傷つける武器を互いに弾き返していてばかりだからだ。唯一二人を襲うものがあるとすれば、武器を振るうための労力だろう。
何かしらの加勢がない限りは、数時間、いや下手をすれば数日も決着がつかないかもしれない。
『小童のくせに、なかなかやるじゃねえか……』
『てめえこそ……』
『俺の名はイバラキ・ギガント、お前は何と言う?』
『ゴールドだ』
『覚えておこう。強き戦士ゴールド』
『そいつは光栄だなぁ……イバラキ・ギガント』
互いの名前を覚えたところで再び武器を構える。
『――――』
合図を待たずして、二人は駆け出す。
『うおおおおおおおおおおお!!!』
『はあああああああああああ!!!』
上から拳が降ってくる。ゴールドはハンマーを下から振り上げ、拳を弾き返す。
『なに!?』
一瞬無防備になったイバラキに、ゴールドは次々と追撃を繰り出す。
『オラオラオラァ!!!』
重い鉄の塊がイバラキを押し殴る。
『ぐあっ!』
殴る。
『ぐおっ!』
殴る。
『うわあああっ!』
イバラキは膝をつき、殴られた箇所を押さえる。
『はぁ……はぁ……』
イバラキは最後の力を振り絞り、自らに炎魔法を付与し、全身を炎で包む。
『なんだ?』
イバラキはまるで炎の形をした人間のようになり、触れたもの全てを燃やし尽くす。
ここは、よりにもよって火が移りやすい森の中だ。あっという間に森は火の海となった。
火に囲まれ、もはや脱出は不可能。熱気が二人を襲う。
『めちゃくちゃしやがる……』
ゴールドは汗を流しながら、ハンマーを構える。それから水魔法を発動し、ハンマーに付与する。
『今更水魔法など無駄だ! 既に火はこれだけ回っているからな!』
イバラキの言う通り、このまま水をばら撒いても火の勢いの方が圧倒的に早い。
『分かってらぁ、んなことは。アタシだってバカじゃねえ』
『なに?』
すると、ゴールドは森の上まで飛び上がり、空を常に飛び続けているかのように光の塊を足場にする。
次にハンマーを振りかざす。すると、その真上から大きな水の塊を作り出す。
『なっ……!?』
そして、水の塊からホースのような細い水の線があちこちから飛び出し、凄まじいスピードで森を侵食する炎を一斉放水する。もはや隕石のように降り注ぐ水は森にダメージを与えないように優しく包み込むように解き放つ。ただ一人の放火魔にだけは容赦のないビームを喰らわせた。
すると、あっという間に炎は消え去り、森から空に煙が舞う。まるで終戦を表しているかのように。
『くっ……ゴールド……貴様……』
イバラキも、水のレーザービームを受けて、身体の炎が完全に鎮火した上に、槍で突かれたようなダメージに襲われた。あまりの痛みに立つことさえできずに、地面に横たわっている。
『まさか……希少な光魔法まで使えるとはな……』
『あぁ、これは生まれつきでね。何の訓練もしてねえのに、なんとなくでこれ使えるんだよな』
『生まれつき……聞いたこともない……ふっ、面白いな貴様』
『ちっとも面白くねえが、てめえとの戦いは悪くなったぜ』
『そうか……それは光栄だ……。ゴールド。もし、俺と貴様の出会い方が違っていれば………………あぁ――実に惜しい』
イバラキは悲しげに、それでいて穏やかに眠った。まだ息はあるが、ここでイバラキの人生に終止符を打つこともできる。
『……そうだな』
ゴールドはハンマーを振り上げ、
『本当に惜しいよな』
そのまま静かにハンマーを振り下ろした。凹んだ地面を眺めながら、彼女はどこか悲しげな顔をしながら、焼き焦げた森を後にした。
――――――――――
『あ、ゴールドちゃん!』
焼けた森から、ほぼ無傷のゴールドちゃんが現れた。だが、衣服が少し焦げている。本人は気づいていないようだが、ところどころ肌と下着が見えていて、目のやり場に困る。
でも、なんだろう。彼女の表情はどこか悲しげだ。
『さっき上から大きな水が火を消してたんだけど、あれゴールドちゃんが?』
『ああ』
『そうなんだ、すごいね。ゴールドちゃん光魔法も使えるんだ。』
『まあな』
あれ? なんかいつもよりテンション低いような……?
『あ、さっきの大男は?』
ここにゴールドちゃんしか戻って来ていない時点で聞くまでもないことだが、一応確認をとった。
『あぁ、あいつならアタシが倒した』
『おお!』
『さすがだね!』
『私の自慢のゴールド姉だもの、強いに決まってる』
それぞれの反応を見せたところで、捕縛されている幹部の二人に視線を向けた。
『どうやらそっちも無事に終わったみてえだな』
『う、うん、思いの外あっさりね』
言えない……。実はめちゃくちゃぐだぐだしてたなんて……。
『そいつらどうすんだ?』
『ロンドディウム王国に突き出そうと思っててね。一応お尋ね者だし』
『そうか』
『ゴールドちゃんと戦った男は森の中?』
『ああ』
『そっか。じゃあ回収しに行かないとね』
魔王は幹部の男を回収するため、森の中へ入っていった。
『……』
『ゴールドちゃん?』
『……疲れたから休むわ』
ゴールドちゃんはそう言って、ク・ルーマの中へ戻った。
『一体どうしたんだろう?』
あんなにテンションが下がっているゴールドちゃんも珍しい。本当に疲れてるだけかもしれないが、なんか違和感があるな。
それに――
『……気のせいか? あいつと似た気配を感じるな』
第500話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
さて、とうとう500話まで来ました。
ここまで見て下さった皆様、本当にありがとうございます。
このぐだぐだな狂気ファンタジーは、まだちょっとだけ続きますが、最後までお付き合い頂けると幸いです。
これからもどうぞよろしくお願いします。




