第499話『並行世界の盗賊と戦う①〜※ただし途中から茶番が始まる〜』
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※2024/07/30誤植があったので修正しました。
目の前の大男に気を取られていたせいで、後ろから来る刺客に気づかなかった。俺はその男に毒薬を飲まされ――てはないが、男の剣の刃が俺の首元に向かっていて、魔法使いのような風貌の女が放った雷魔法がゴールドちゃんを包み込もうとする。
それに加えて、前の男も俺達に向けて、ごっつい拳を押し出している。
前から一つ、後ろから二つの脅威に挟まれた。
ク・ルーマの中にいるみんなは今頃どんな反応をしているだろうか。視線をそちらに移す時間もない。数秒後には俺達への不意打ちが完了しているのだから。
ゴールドちゃんはまだ気づいていない。大男に向けてハンマーを振りかぶっている最中だ。
まずは防御だ。
『防壁魔法』
俺は自分とゴールドちゃんを守れるくらいの防壁を出して、不意打ちを防ぐ。
『なにっ!?』
次の瞬間、無事ゴールドちゃんのハンマーは大男の拳と衝突する。ゴールドちゃんはそのまま押し切り、追撃をするも、大男は笑いながら拳を炸裂し、今度はゴールドちゃんが押し切られる。二人はしばらくその繰り返しで戦闘を繰り広げるだろう。俺が参戦すればすぐに勝利をもぎ取れるが、その前に後ろの二人をなんとかしなければならない。
異変に気づいた魔王とシルバーちゃんはク・ルーマから降りて迎撃体勢に入った。ブロンズ様とルシウスは中に残っているようだが。
『げっ、完全に作戦失敗じゃん!』
ミニスカの魔法使いの女が、眉間にシワを寄せてそう言った。
『おいエリザベート! お前がもっと早く魔法を放っていれば成功していたのだ! 人のせいにするな!』
もう一人の男が、ミニスカ美少女……エリザベートに責任を押し付けた。
その二人を囲むように、俺と魔王とシルバーちゃんが立った。それぞれ攻撃準備はできている。いつでも一斉砲火して二人を蜂の巣にすることができる。まあエグいからそれはやらないけど。
大男の方はゴールドちゃんが押さえている。何なら倒してしまうかもしれないが、念の為、早めに加勢に行こう。
立場が逆転してしまった二人だが、俺達の実力を舐めているのか、分が悪くともまだ武器を取って戦う意志を見せている。
だが残念ながら、俺や魔王の実力ならばお前達二人など相手にならない。今すぐ力でねじ伏せて、無償で焼きそばパンを買ってこさせる以上の事を命令できるくらいの実力があるのだ。まあ俺のトラウマを呼び起こすから、さすがにやらないけど。
『やだー、アタシちゃん達囲まれてるー』
女の方……エリザベートと言ったか。セリフのわりに緊張感がない。完全に舐めた態度を取っている。今すぐ分からせてやりたい。
『お前のせいだ!』
男の方は相変わらずエリザベートへの責任転換を続行している。外見はイケメンな青年って雰囲気だが、今のところ彼の放つセリフの全てが、自分の非を認めたくない子供のような印象しかない。残念系イケメンってとこだな。
『うるせえよー、過ぎたことは仕方ないだろー。それよりアタシちゃん達めっちゃ大ピンチなんですけどー、どうしよ……とりあえずパンツ見せてあげるから見逃してくれない?』
エリザベートは、男の俺に向けて、そのやたら短いスカートを摘んで下着を見せようとしている。
何なの? 俺と関わる女性達の中で俺に下着を見せるの流行ってるの? って思うくらいパンツを見せられてる。みんな俺を何だと思ってるんだ? パンツ見せてくれれば許してくれると思ってるのか?
『ふざけるな……』
俺は握りこぶしを強く握る。
『え?』
『ふざけるなよ!!! この小娘が!!!』
冷静さを失った俺は、普段使わない言葉を使って怒鳴り散らした。
『は、え? なに? 急にめっちゃ怒じゃん』
ガチの戸惑いを見せるエリザベート。
『そうやってパンツを見せれば、俺が興奮して許してもらえると思うなよ!!!』
『ダストくん?』
おっと、魔王とシルバーちゃんを引かせてしまったようだ。シリアスな戦闘中にごめんね。
『えぇ……そんな血眼になって言うことなの?』
エリザベートまで引いたような目で俺を見ている。あれ、今の俺もしかしてヤバい奴?
『ふん、誰がお前のひらひらしたパンツになど興が乗るか』
隣の男が割り込んで、エリザベートのパンツをディスり始めた。
『ちょっと待て、何でアタシちゃんのパンツがひらひらしてんの知ってんだよ』
声色を低くしたエリザベートは表情を険しいものにしながら、視線を隣の男に変えた。これは地雷を踏んだか。
『お前が普段から短いスカートを履くからだろう? おかげで見たくもないお前の下着がよく見えるのだよ』
どこかの誰かさんもそうだったな。誰とは言わないけど。
『うわお前キモッ、人のパンツ見んなよ、カスバー・キモキモバカー』
カスバー・キモキモバカー?
『オルガー・ライトニングスターだ!』
それが本名か。盗賊団のくせに随分と輝いてる苗字だな。お前もうカスバー・キモキモバカーでいいよ。
『いい加減名前くらい覚えろ馬鹿女!』
『うるせえ、変態男ー! アタシちゃんのパンツ見た罪で裁判起こしてやるー!』
『そんな罪があるか!』
『あるもーん!』
『架空の法律を掲げるな!』
――さて、いがみ合ってる二人をどうしようか。魔王もシルバーちゃんも目を点にして、この場を傍観している。
『てか君の名前なんてどうでもいいんですけどー』
『よくない!』
『そんなことよりさー』
『そんなこととは何事だ!』
エリザベートは視線をオルガーから俺に戻して、取引の続きを再開した。
『ねえ、きみ本当に私のパンツ見たくないのー?』
スカートを摘みながら煽るエリザベート。
『当然だ!』
もうパンツはこりごりだし、さっきからク・ルーマの中から発する殺気がぶっ刺さってるから正直勘弁してほしい。
『えー、じゃあパンツ見せるだけじゃなくてあげるよー。それならいい?』
『良いわけあるか!』
それは本当にマズイ。教師として、人として越えてはいけない線だ。
『じゃあアタシちゃんの裸を――』
『もう何を言おうと無駄だ。お前の取引に応じる気はない』
『えー、じゃあどうすればいいのー!』
エリザベートは地べたに寝転んで、駄々をこねる子どものように手足をジタバタした。その際にひらひらした下着が顔を出していた。
『はぁ……』
本当にどうしようか、この二人。
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