第497話『闇色の絶望』
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《盗賊団のアジト》
特に決まった名はないが、世界最大の盗賊団が存在する。
ここのアジトには、ボスと幹部5人と構成員数百名が住在しており、仕事の為の訓練や実習を行う育成施設でもある。
『ボス! 報告です! 幹部であるリュウキ・クズキ様が謎の黒髪の女に殺されました!』
現場を見ていた下っ端が、クズキ殺害の細事を報告する。
幹部クラスの死は組織のダメージが大きい。が、ボスは特に何も反応しないまま、虚ろな目で天井を見上げていた。まるでクズキの死を何とも思っていないような表情だ。
『あの、ボス……?』
返事を促す下っ端だが、ボスの耳には届いていない。
その場にいた幹部の一人が代わりに口を開いた。
『気にするな。ボスは今、黄昏時なのだ。報告なら我々が聞いた。お前は下がれ』
『はっ!』
下っ端は幹部の言われた通りにその場をあとにした。
静寂が残る中、一人の女幹部が口を開いた。
『それにしても、リュウキ君を一撃で殺せるなんて、その女、相当の実力者だね〜。アタシちゃんとどっちが強いかな〜?』
仲間の死に一切の嘆きはなく、むしろ楽しそうに話している。
さらにもう一人の男の幹部が女幹部に口を挟む。
『フン、リュウキを一撃でやれる奴とお前では比べるまでもない。お前が死んで終わりだ』
『お前じゃなくて“エリザベート・ベイカー”ちゃんだよ!』
エリザベートは頬を膨らませて、不満を男の幹部にぶつけた。
『お前の名前などどうでもいい。僕の名前だけ覚えていればいい』
『君の名前覚えづらーい』
『“オルガー・ライトニングスター”のどこが覚えづらいというのだ!』
これから更なる口論が起きようとしている二人の間に、最初に喋った方の幹部が苛立ちながら割り込んだ。
『お前達静かにしろ! ボスの機嫌を損ねたいか!』
ボスへの配慮が足りない二人に苛立つ男幹部。しかし、そのボスは微動だにせず、ただ同じ所を見つめ続けている。
『ボスどうしちゃったのー?』
『だから黄昏時だと言ったはずだ』
『なにそれ?』
『とにかく静かにしろということだ』
『えー意味わかんなーい』
『お前の理解など求めていない。これ以上騒音を掻き立てる気なら、早急に退室しろ』
『それはいいけど、結局リュウキ君を殺した女はどうするの? 敵討ちする?』
『その必要はないが、その女について調べる必要はありそうだ。見張りの者に見張らせよう』
『アタシちゃん達はー?』
『お前らは指示が出るまで待機だ。有象無象共にもそう伝えろ』
『りょーかい!』
エリザベートは笑顔で、オルガーは無言で頷いて退室した。
男幹部とボスと二人きりになった。ボスは一向に喋る気配がないが、男幹部はボスに今後の我々の動きについて、一方的に話している。
ようやくボスが反応をすると、今後の作戦について話し合った。
『なるほど、そういうことでしたか。承知致しました。必ずあの男を捕まえてみせましょう。では』
男幹部はそう言い残し、この場をあとにした。
『…………』
ボス専用の椅子に座る彼女は、声も出さず表情も浮かばずに天井を見つめる。
すると、しばらくして彼女はようやく口を開いた。
『あぁ、この気配はやっぱりあなたなのですか……ダスト』
《絶望した女の狂気》
私は、“あの日”からずっと時が止まったままだ。
私の敬愛していた“あの人”が“■■■”に倒された。
それは悍ましいもの。触れてはならないもの。“あの人”もそれは理解していた。むしろ利用しようとしていた。それを使って描いた理想を現実にしようと日々奮闘していた。しかし――
暴走した■■■によって、“あの人”は殺されてしまった。
願いも叶わぬまま、私の心はいつまでも囚われたまま、私の希望は絶望と化した。
それからの私は虚無感に支配されたまま、寿命を使い果たすまで、ただ惰性で生きている。
欲を満たすために盗賊団を立ち上げた。人の不幸な顔をこの目で見たくて、泣き叫ぶ様をこの耳に収めたくて。
――だけど、もう飽きてしまった。
私はまたしても虚無感に囚われ、時々こうして何の意味もなく天井を見上げてしまう。
つまらない。刺激がほしい。楽しみがほしい。たすけて。
そんな時だ。
リュウキ・クズキを殺した女の詳細を聞いた時に、ダストらしき男が地上にやってきたと聞いた。
ずっと探していた。刺激を。
彼に話を聞きたくて。見せしめにまず仲間を殺す。
彼に会いたい。絶望に染まった顔を見ながら、あなたを殺す。
あぁ、見たい。“あの人”を殺したダストが絶望する姿を。見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい――
『ふふ、ふははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!』
私は高らかに嗤った。歪む顔に爪を立てながら、流した一筋の血を垂れ流しながら、最高の美酒を想像する。
久方ぶりに止まらない、私の欲望。まるで今までせき止めていたものが一気に溢れて出ているようだ。
おお神よ。お許しください。私はさらに壊れてしまいました。
だから、壊します。彼の尊厳から仲間すら何もかもを。
『楽しく……なってきましたねぇ……!』
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