第42話『不安を分かち合うっていいなって思って』
お待たせしました。
第42話執筆完了しましたので、宜しくお願い致します。
※2022年5月22日改稿しました。
※文字数多めです。
あの後、ゴールドちゃんとブロンズちゃんのパンツの色を予想していたら夕飯の時間になった。
今食堂にいるのは、俺、ゴールドちゃん、ブロンズちゃんだけ。
その中でも、今はゴールドちゃんは夕食を作っている。さっきまでブロンズちゃんが夕食を作っていたらしいが、ゴールドちゃんと代わったようだ。
ゴールドちゃん、さっき相当酔っていたけれど、今は酔いも覚めて通常運転となった。でもやけに顔が赤い……心配だ……やっぱりどこか無理してるのではないか?
そう思いゴールドちゃんに手伝おうか? と聞いてみるも、いやいいよ、ダストっちは座っててくれと言われた。しかも目も合わせてくれず、どこか機嫌が悪いような様子だ。酔いが覚めてから何かおかしい。ブロンズちゃんに対してはいつも通りに接していたのに俺に対しては避けてるような感じだ。知らない内に俺はゴールドちゃんの地雷でも踏んでしまったのだろうか?
『この鈍感、地雷じゃないわよ』
『え? 地雷じゃないの? ってなんかブロンズちゃんに心を読まれるのが当たり前になってきたなぁ……』
ブロンズちゃんはわりと日常的に心を読む魔法を使っているので、彼女に対して嘘をつくのはほぼ不可能だ。だから普段俺がブロンズちゃんの前で女の子達の卑猥な妄想を繰り広げると途端に睨まれるのだ。仕方ないだろ! 君らが魅力的すぎるのが悪いんだから!
プライベートの壁が薄くてやりにくいのだが、実はこれある大きなメリットが1つある。それは他の誰にも聞かれたくない話があれば口に出さずとも脳内で思うだけでブロンズちゃんだけに要件を伝える事ができるのだ。これに関してはなかなか便利だと思う。
『でも誰にも聞かれたくないような恥ずかしい事やいかがわしい事も全部丸聞こえなのよ? いいの?』
ブロンズちゃんは小悪魔の笑みを浮かべながらそう言った。
『まあ、そうなんだよねえ……』
ブロンズちゃんの言うとおり彼女には、俺の思っていること全てが丸聞こえだ。つまり俺の性癖や、実は赤髪ちゃんの揺れる胸元を見てることも、ゴールドちゃんのパンチラを何度も目撃してることも、全部ブロンズちゃんに読まれているのだ。これがなかなか厄介だ。
ただ心を読むというのは、当然魔法を使っている。当たり前のことだが魔法を使っているということは魔力も消費するということだ。消費する……つまりそれ相応に疲れるということだ。
ブロンズちゃん曰く心を読むのがどれくらい疲れるかと言うと、1回心を読む=1回腕立て伏せをするくらいの疲労が生じるらしい。
つまり1度に5回くらいまでならいいが、一気に何十回も何百回も読んでられねえよ! 疲れるわ! ということらしい。
『お兄ちゃん、後半説明雑くない?』
『すまない、俺、語彙力無いんだ……許してくれ……』
『しかも、語彙力だけじゃなくて、知力も腕力も財力も無いしね』
追い打ちをかけるようにボロクソディスられてしまった。俺そろそろ泣くぞ?
そして、まだブロンズちゃんにお金借りたままだったの思い出した……早くどこかで金稼いで返さないとな。
『大丈夫よ、ずっと借りたままでもいいわよ』
てっきり早く返さないと許さないなんて言うかと思ったけど、意外にも優しい対応をされた。でもこれ絶対裏があるだろ。
『いや、そういうわけにはいかないよ、やっぱりちゃんと返すものは返さないと』
『遠慮しなくていいのよ?』
『いやでも……』
『私はね、例えどんなダメダメなお兄ちゃんでも、笑顔で居てほしいから……』
『ブロンズちゃん……』
ブロンズちゃんは天使のような微笑みで、小さな手で俺の手を握った。本当に天使みたいだ……だけど……。
『本音は?』
『お金を借りたという事実を利用して、弱みを握って、お兄ちゃんを私の元に縛りつけて、いじめたいから♪』
ブロンズちゃんはさっきとは打って変わって悪魔のような笑顔で最悪の本音をぶちまけた。
あ、ダメだ。これはもう悪魔だわ。天使の白い羽が全て剥がれ落ちて、堕天使の黒い羽が顕になるイメージが沸いてきた。
ブロンズちゃんとそんな会話をしてると、扉が開いた音がした。
『失礼しまーす』
元気になったアースちゃんがやってきた。シルバーちゃんも一緒にいる。
『お、アースちゃん!』
『おっすおっす、ダスト君!』
てっきりここには来ないのかと思ったけど、どうやらシルバーちゃんの誘いで一緒にご飯を食べることにしたようだ。
『おー! アースちゃん! もう大丈夫なのか?』
ゴールドちゃんがちょうどご飯を運ぶタイミングで、アースちゃんにまるで友達のように話しかけた。いつの間に仲良くなったの?
『おー! 大丈夫だぜ! ゴルたん!』
『ゴルたん』
もうあだ名までついてる……。
『超絶美少女ゴルたんの手料理……じゅるり、美味しそうだね……』
ここにいる俺以外の全員が超絶美少女だという、この状況自体が美味しいです! アースちゃんも同じようなことを思ってそう……。
『おー! 美味しそうだろ! 食え食え!』
食われるのは多分料理だけじゃないかもよ……気をつけてゴールドちゃん。
『めっちゃ美味しそう……アタイ……何か食べるの久しぶりなんだ……』
『え? アースちゃん、久しぶりに食ったのか? 腹減らねえの?』
『え? 腹減らないよ? アタイ達女神は、魔力さえあれば生きていけるからね』
『食べること自体はできるんですか?』
『できるよ、一応味覚も機能してるし、火の女神のファイちゃんだって結構大食いだし、水の女神のアクアちゃんは甘いもの好きだし』
へえ、他の女神にも食事という概念があるんだな。
『それなら、アタシの料理もぜひ食べてほしいところだな!』
『そうね、例えば……ゴールド姉の……食パンとかね』
食パンツ事件 (自分で勝手に名称した)まだ引っ張るの!? もう勘弁してやれよ……。ほら、ゴールドちゃんの顔がゆでだこみたいに真っ赤になってるよ。
『ブ、ブロンズゥ……もう勘弁してつかあさい……』
もうこれ以上黒歴史を思い出させるのは酷だからやめたれ。
『食パンって、あの食パン?』
事情を知らないアースちゃんは、ゴールドちゃんの頬を赤らめた表情に首を傾げている。
『ええ、あの食パンよ……実はね……』
ブロンズちゃんはアースちゃんの耳を近づけて、食パンツ事件の詳細をヒソヒソと話そうとした。
『あわわわわ、もう言うなあああああああああ!』
ゴールドちゃんがブロンズちゃんを止めようとしたが、その行動を読んだブロンズちゃんは華麗に避けた。すると、ゴールドちゃんの身体は勢い余って転びそうになったが、とっさに俺の身体に抱きついたことで転ばずに済んだ。
その際にゴールドちゃんの乱れた金髪の匂いが、俺の鼻孔をくすぐった……また胸も当たってる。今日だけで、3回も胸に当たっている。ありがとうございます! なんて思っていると、ブロンズちゃんがこちらを睨んでいる。
『あ、あわわわわわわ!』
『ゴールドちゃん大丈夫?』
『ぷ、ぷしゅー』
『ゴールドちゃん!?』
恥ずかしさの限界を超えたゴールドちゃんの顔は更に赤みが増して、その後電池が切れたように気絶してしまった。
俺は椅子を2つ並べて、それをベッド代わりにゴールドちゃんを寝かせた。やっぱり無理してたんだな……気づかなくてごめん……なんて思っていたら、何故かブロンズちゃんが俺の足を踏んできた。痛い。やめて。
『お兄ちゃんの鈍感!』
『え? 何が?』
『あとで、おしおきよ!』
『ひ、ひえぇ……』
『ふん!』
なぜか突然不機嫌になったブロンズちゃんは腕を組んでそっぽを向いてしまった。今度は一体どんな地雷を踏んでしまったんだ……?
『あはは、賑やかだね』
『はい!』
アースちゃんと、シルバーちゃんは隣で楽しそうに笑っていた。その2人を見て俺は安心感を覚えた。
アースちゃんは今日突然ナイフで刺されたのだが、赤髪ちゃんの治療が適切だったのか、それとも女神だからなのか、回復が早くてこうして食堂で笑い合っている。
シルバーちゃんはほんの数時間前まで大泣していたけど、今はアースちゃんと一緒にいて、とても笑顔だ。
とはいえ魔王がどこかに消えて不安もあるだろう。俺も不安じゃないと言ったら嘘になる。不可解な事が連続で起こってる以上、これからどうなるか分からないからな。
『お兄ちゃん? 何で独りで不安になってるの?』
『え?』
『独りで不安になるんじゃなくて、ここにいる皆で不安を分かち合うんだからね。大丈夫よ、お兄ちゃん、私達がここにいるわ』
『ブロンズちゃん……』
すると、また扉が開く音がした。
『申し訳ございません。遅くなりました』
最後に赤髪ちゃんとあおいちゃんがやってきた。これで魔王以外は全員揃った。
『不安を分け合う……か』
『ダスト様? 何かあったんですか?』
『なんでもない、ただ……』
そうだ、ここにはブロンズちゃん、シルバーちゃん、ゴールドちゃん、赤髪ちゃん、あおいちゃん、アースちゃんがいる。日本の学校でいじめられてた頃とは違う。俺は独りじゃないんだ。
『?』
『不安を分かち合うっていいなって思って』
第42話を見て下さり、ありがとうございます。
次回は、28日か29日に投稿予定となります。
宜しくお願い致します。




